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龍王の娘としての1日(1)


まぁ、あれだ。いろいろと腑に落ちないところはあるが、これはあれだろう。

異世界転生ってヤツだ。うん、それだけは確かだ…

でも、勇者とかみたいに勝手に連れてこられた感が無いなら俺には使命とかは無いと考えてイイのか?

よし、とりあえず今の状況を整理しよう。特にすることもねぇしな!!


まず、俺は陰キャでど底辺だったDT男子高校生の龍塚たつつか 吉郎よしろうから龍王国の姫であり、龍王の娘 フィーシャに転生した。ちなみに、フィーシャはあだ名で本名はフィラルシェーラ。


さっき、セレンって言うメイド?みたいな女の人が教えてくれた。

あ、セレンは親父、ドラグノスの命令で俺の世話係になった人です。

この人にもドラグノスと形が違うけど角がある。

ドラグノスのは太くて山羊みたいな角だったけどセレンのは細くて鹿の角みたいな感じだ。


とにかく、俺は自殺したことで転生した事は間違いない。

そして、俺はフィラルシェーラとして生きる他無いという事もまごう事無き事実だ。

転生したことに意味があるかは分からないし、今は知る由も無い。

だったら…しっかり生きてやろうじゃねぇの。

前世はクソッタレな人生で生きている意味なんて見つけられなかったけど今世ではナメられない様に、

強く逞しく勇ましく…いや、女の子に転生したんだから勇ましくはいらないか…

えっと…じゃあ、強く逞しく健やかに生きて人生もとい龍生を謳歌してやろうじゃんよ!!!


とは言ったものの…今の俺は生まれたばかりの赤ん坊なんだよな。

くそ…うまく体を動かせない。うぅ、頭では分かっているのにぃ!!

ちなみに俺って生後どんくらいなんだ。寝返りが打てないって事はそう経ってないのかもしれないな。

改めて考えてみれば、赤ん坊って言葉を話せないから泣いたり怒ったりして言いたい事を精一杯伝えようとしてるんだな…


よし、モノは試し。恥ずかしいけど今の俺は赤ん坊なんだ、ちょっとやってみよ…。


「うぅ…あぁっ…ぐすっ、あぁぁっ」ウゴウゴ

「あらあら、フィーシャ様。どうされました?」


あ、抱っこしてくれた。セレン、あったかいなぁ…柔らかいし。だがしかし、セレンさん。

メイド服に似つかわしく無い桃をぶら下げおって…けしからんですな。

DTだっただけに少し思考が…いやかなりエロ親父並だけど…今の俺は赤ん坊だ!甘えてなんぼだ!!


「あぶぅ、うぅ。」

「ふふ、抱っこしてほしかったのですね。甘えん坊さんですね。」


へへ、ドラゴンの娘に転生して、クソ人生第二弾って感じしたけど結構悪くないかも…


「本来であればお母上に甘えたいでしょうに…」


あぁ、そうか。当たり前だけど俺を産んだ母親がいるんだよな。どんな人だろ…

贅沢は言わないけど…少なくとも優しい人だとイイな…

セレンは知ってるのかな…


「今はお会いできませんが、いつかきっとお会い出来る日が参ります。どうかそれまではこのセレンでご辛抱くださいまし…」


ちょっと悲しそうに笑っているセレン、どうしてそんな顔するんだ…?

でも、そうか…お母さんには会えないのか…

ドラグノスにお願いしてもダメなのかな…まぁ、赤ん坊なんで言葉が話せないからお願いすら出来ねえけど…


コンコン…ガチャ…


「セレン様、龍王陛下がお呼びです。姫殿下とご一緒に執務室の方へお越しください。」

「分かりました。では、フィーシャ様。お父上のところへ参りましょう。」


兵士と思しき人が俺とセレンを呼びに来た様だ。

ふむ…親父の所か。会うのはこれで2回目だな。

初対面の時は混乱してたからいろいろうろ覚えだけど気持ちの整理が付いたところで、改めて我が新たな親父殿を拝見しに行くとしますか。


コンコン……


「陛下、セレン様と姫殿下をお連れ致しました。」

「おぉ、来たか。入るが良い。」


ガチャ…


「我が娘よ、少し見ぬ間に育ったか?」


あの日からまだ数日しか経ってねぇよ。

いくら赤ん坊の成長が早いったって、たった数日でそこまでデカくはならねぇのよ?親父殿。

全く、テンション上げすぎだろ。でも、自分の子供を可愛がらない親は…居ないよな。


改めて、俺の目の前にいるのがこの龍王国の現国王 ドラグノス。

ここに来る前に廊下ですれ違った兵士や使用人達の話を聞く限り、民にも慕われている立派な王様。

そんなドラグノスに呼ばれてこの執務室に来て早数分が経過したが…


シーン…


何の用で呼んだんだよっ!!さっさと要件を言え!!セレンだって忙しいんだぞ、主に俺のお世話で!!!

しっかし、セレンさん抱っこ上手いっすねぇ。すっごい安定感、もうこのまま寝そう…


チラ…チラ…


ん?さっきからドラグノスは俺の顔を見る割に触ろうとしないな。

もしかして、前に触れた時に俺が鱗で痛がったのを気にしてるのか?

でも何か触りたそう…よし、こっちからアプローチしてみよう。


「あぁ…あぁ…」

「ん?娘よ、どうした。何か気になるのか?」

「…!陛下に抱かれたいのではないでしょうか。」


ナイス、セレン!ほら、俺は怖がってねえからさ。


「いや…しかし…以前のように鱗で痛がってしまうかもしれん…。ならぬ、娘を傷モノにするわけには…っ!!」


デカい図体してるくせに小心者かっ!

漫画やアニメじゃドラゴンって言ったら人間見下すような図体と比例して態度もデカい生き物だろうがっ!

そのドラゴンの長たるお前が何で自分の子供抱くことにそんなビビってんだよ!

仕方ねぇ…さっきセレンにもやった必殺…


「うっ…ぐずっ…うあぁっ…ひあぁっ…」


泣き落とし!!どうだぁ…?


「あぁっ、娘よ。なぜ泣くのだっ、泣くなっ。あぁ、どうすれば良いのだっ。」


おぉ、効いてる効いてる。ほらぁ、早く抱っこしろよぉ、もっと泣くぞぉ?


「陛下、落ち着いてくださいませ。さぁ、私のように姫様を優しく抱き上げてください。」

「こ…こうだろうか…」


お…おぉ、さすが龍王っていうだけあってゴツい腕…

でも…このすっぽりはまる感じ悪くないカモ。イイね、最高だわ。

服がクッションになってるのかな、あんまり鱗のザラザラ感とか感じないや。

セレンとは違う安定感、これはこれで…寝そうになるね。


「おぉ、泣き止んだぞ。」

「良かったですね、姫様。」

「あぅぅっ。」ニコニコ

「愛らしいな。我が子として産まれてくれたこと誇りに思うぞ。娘よ。」


ドラグノスの鼻先が俺のおでこに触れる。

そんなドラグノスと俺をセレンは優しく見つめている。

でも、すぐに二人は悲しそうな顔になった。

なぁ、なんでそんな顔するんだよ。なぁ、教えてくれよ。


「すまない、娘よ。時が来れば必ず話すと約束する。そなたの…母のことを。」


お母さん?そういえばセレンも今は会えないって言ってたな…

言葉を話せないから何も聞けない。でも、何となく今は聞いちゃいけない気がする。


「あぁぃ…」


分かったよ、今は聞かねえ。だから、そんな顔するなよ。

ドラグノスの鼻先を小さな手で触れる。ドラグノスは少し表情を緩め俺のほっぺに鼻先でキスをした。

まるで俺の考えが読めたかのように。

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