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母との対面

教会での儀式を終え、王宮へ戻る。


「フィラルシェーラ、昼食の前にお前に会わせたい人がいる。構わないか?」


食堂へと向かおうとした足を止め、ドラグノスの言葉に首を傾げる。

ドラグノスが視線を向けた先には見知った顔と見知らぬ顔がそれぞれあった。


「龍王国の新たなる星にご挨拶申し上げます。龍王国宰相のベラルークと申します。」

「側妃のヴィヴィラですわ。」


あ、この女の人は…ドラグノスの愛人…かもしれない人!!

生まれて初めての散歩の時に会った人だ。

あの時はセレン達の不穏な空気に耐えきれなくて泣き出してしまったのだった。


フィラルシェーラに転生してからあまり人見知りはしない方だったが彼女のことは少し警戒してしまう。

ドラグノスの足にしがみついたまま後ろに隠れ様子を見る様にジッと彼女を見つめる。


(側妃って…知ってるぞ?愛妾みたいな人の事だろ?やっぱり愛人じゃないか!ドラグノスめぇ、お母さんという人がいながら他の女の人とも関係を持つとはぁ…)


「ん?どうした?お前の伯母上にご挨拶をしなさい。」


(…オバウエ?伯母上って…おばさんって事?)


「ふふ、お久しぶりね。姪姫、見ない間に大きくなって…さぁ、もっとお顔を見せてちょうだい?」

「おば…さま…?」

「えぇ、そうですよ。全く、父親だからと姪姫を独占し過ぎではなくて?」

「嫉妬は見苦しいですよ、姉上。」


(姉上!?この人、ドラグノスの姉ちゃんなの!?全然似てない、ドラグノスは龍顔だから似てる似てない以前の問題か?)


「本当は昨日、贈り物を持って会いに行こうと思ったのだけれど…あの子を差し置いて私だけ祝う事は出来ないから…」



ヴィヴィラに手を引かれて向かった先は地下の研究室の様な場所だった。

そしてある装置の前でヴィヴィラは目線を合わせる様にしゃがむ。


「姪姫、よくご覧なさい。この人があなたのお母様よ。」


氷の様な大きな結晶石の前に立ち、そのの中にいる1人の女性を前にヴィヴィラは言った。


「お母…さん…?」


ゆっくりと結晶石に近づきながらもう一度「お母さん」と呟いてみる。


「姪姫、あなたのお母様は長い眠りについているの。」

「起きないの…?」

「今はね。だけど、いつかきっと…必ず目を覚ますわ。だから今はあなたの声を彼女に聞かせてあげて?」


ヴィヴィラの言葉に頷く事はせず眠る母である人に向かって声をかける。


「お母さん、初めまして。フィーシャだよ?フィーシャね、3歳になったの。あのね?いっぱいお話したいことあるの。」


セレンのこと、リオラのこと、アルドのこと。

騎士団で起きたこと、初めての遠征のこと。

貰った贈り物のこと、明日のパレードのこと。

伝えたいことを言葉にする。

その様子をドラグノス達はただただ静かに見守っていた。


「あとね、あとはぁ…えっと。」

「フィーシャ、焦らずとも良い。また今度、共に伝えに来よう。」

「うん!」

「姪姫、遅れてしまったけれどここで言わせてちょうだい?お誕生日、おめでとう。これは私とあなたのお母様からの贈り物よ。」


そう言ってヴィヴィラは頭の上にティアラを乗せた。


「あなたのお母様がデザインして私が選んだ石を使ったティアラ。とてもよく似合っているわ。」

「ありがとう、おばさま。」

「さぁ、遅くなったけれど昼食にしましょうね?姪姫は何が好きかしら?」


母に手を振ってからヴィヴィラの手を取り地上へと戻る階段を上った。

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