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生誕祭2日目


生誕祭2日目、今日は王宮から少し離れた教会に向かう。


「お待ちしておりました。龍王国の偉大なる星々にご挨拶申し上げます。」

「フィラルシェーラ、彼は聖龍教会のイスティリオ枢機卿だ。ご挨拶を。」

「フィラルシェーラと申します。本日はよろしくお願いいたします!」


聖龍教会、龍王国の神獣「聖龍」を祀るいわゆる宗教団体。

戦争で親を亡くした孤児を保護し教育を施したり、死者を弔う為に祈りを捧げたりと役割は多岐に渡る重要な組織。


属する者は皆、「聖龍の使徒」として聖龍に日々祈りを捧げている。

その頂点が枢機卿、つまり目の前にいるイスティリオというわけだ。


ここでは、聖龍への祈りと加護を賜る為の儀式を行う。

しかし、加護とはいってもファンタジー世界の様な力が強くなるとかそういうんじゃない。ただ聖龍に見守られている存在である証をもらうのだ。


「龍王国の新たなる星、フィラルシェーラ龍王女殿下に数多の幸福が訪れる事をお祈り致します。我らが祖、聖龍様のご加護があらん事を…」


聖龍の像の前で目を閉じ静かに祈る。


(…やっと逢えたな、我が愛し子よ。)


「え…?」


声に驚き、目を開けるとそこは教会ではない別の“空間”だった。


「あれ…?さっきまで教会にいたのに…ここどこ?お父さん?」


白い、ただ白い空間が延々と続いている。

呼んでも誰も答えない、ただ自分の声が響くだけ…


「…うぇ…ぇぇんっ…お父さんっ…みんなぁ…どこぉ?」

「おやおや、少し怖がらせてしまった様だな。よしよし、泣くでないよ?」


ふわりと体が浮いたと思えば、何かの上にぽすんと乗せられた。

顔を上げるとそこには神々しいドラゴンがいた。


「…ドラゴン?」

「否、我はドラゴンではないよ。お前たちが“神獣”と呼ぶ存在だ。」

「神獣…聖龍さま?」

「すまなかった、愛し子が逢いに来てくれた事が嬉しくてついこちらに呼んでしまった。」

「じゃあ、お父さんたちは?」

「祈りを捧げている途中だよ。何、祈りが捧げ終わる前には体に返すから安心おし。」

「どうしてフィーシャを呼んだの?」

「お前が我が愛し子だからだよ。分かりやすくいえば、我の生まれ変わりとでも言おうかな。」

「聖龍さまはここにいるのに?」

「はははっ、ここにいる我は精神体に過ぎない。なんの力もないただの魂だよ。我の力は全て、お前が持っている。」


よく見れば聖龍の体は少し透けている。

触れる事ができるのはここが精神世界だからなのだろう。


「フィラルシェーラ、よくお聞き?お前はこれから先、試練に挑むだろう。その試練はとても苦しく、難しいものだ。だが、決して諦めてはいけないよ?お前は1人ではないのだから…」


その言葉を最後に視界は再び暗くなった。


「…シャ…フィ…シャ…フィーシャよ、フィラルシェーラよ。」

「ふ…ふぁいっ!」

「熱心に祈っていたな。祈りの時間は終わったぞ?」

「フィラルシェーラ王女殿下、お疲れ様でございました。」


(戻ってきた…?さっき聖龍さまが言ってた試練って…何の事だろう…)


「最後に、こちらをお受け取りください。」


そう言ってイスティリオは透明なお守りのような物を手渡してきた。

それはガラスのように透明だが光が当たると少しだけ色が変化する不思議なものだった。


「聖龍様があなた様を見守れる様にそのしるしは常にお持ちください。」


これで、祈りと加護の儀式は終了となる。

聖龍の言っていた“試練”という言葉に引っかかりを覚えながら教会を出た。

その試練が、これから先なんて長い話ではなくもうすぐに起こる事を知らずに…。

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