魔物対策会議
魔物討伐後の翌日。
フィラルシェーラ達は家の奥に集まり今後の対策について話し合っていた。
「さて、魔物の数が年々増え続けている現状をどうするか…」
「現状のままではいずれこの集落は崩壊してしまう。全滅は免れないでしょう。」
「うーん…何か良い手はないものか…」
うーんと首を傾げる中、フィラルシェーラはある疑問を投げつけてみた。
「あの、集落の人たちは今までどうやって魔物と戦ってたの?」
「どうって、そりゃ武器を使って戦うだろう?」
「武器ってどんなの?」
「魔物の骨で作った槍とか木を削って作った棍棒とか。」
「他には?」
「…」
バーネットの回答から一つの答えが導き出された。
(近接戦闘しかしてねぇのかよ!)
槍はリーチが長くてもある程度近付かなければならないし、棍棒だって当たればいいが当たらなければ何の意味もないではないか。
何より問題なのはそこに何の疑問も抱いていないこいつらだ。
対策を練ると言っておきながらたったそれだけの武器でどう対策しようとしていたんだ。
「姫さん?なんか顔こえぇよ?」
「…コホン、バリケードは作った?」
「バリケード…ってのはなんだ?」
ブチっ!!!
「あのね!それじゃ何も装備してない生身の状態で魔物と戦ってるのと一緒でしょ!?ちゃんとした装備と武器を揃えなくちゃこれから先もっと減っちゃうよ!」
あまりの事に自分が3歳児である事を忘れ声を荒げてしまった。
その様子に驚いた3人はパチクリと目を瞬かせてこちらを見ている。
「姫さん、武器や装備って言ったってこの集落には槍や棍棒くらいしか無いぜ?」
「無いなら作ればいいでしょ!大砲…は無理でも投石機とか、バリスタとか!」
そうだ、無いなら作ればいい。
魔物素材の加工技術を持っているのならそのくらい作れるかもしれないじゃないか。ところが…
「たいほう…?」
「とうせきき…?」
「ばりすた…?」
あれ…?もしかして…知らない?前世の歴史上では結構頻繁に登場していた武器なんだけど…知らないですか?
「フィーシャ様、それらは一体どの様なものなのですか?初めて聞いた名ですが…」
「えっ!聞いたことない!?砲弾を飛ばしたり、岩を遠くの敵に投げつけたり、太い槍とか矢を勢いよく飛ばしたりするやつだよ!」
「聞いたことねぇな、前に人族と戦争した時だってそんなモンはなかったぞ?」
あっれぇぇぇ?人族側にも無い武器なの?じゃあどうやって戦争してたんだ?
混乱のあまり心の声が漏れていたのかリオラが口を開いた。
「人族と獣族の違いは見た目もそうですが一番の違いは魔法が使えるかどうかです。人族は魔力量が高くほとんどの者が魔法や魔術を使います。対して獣族は魔力量が少なく魔法や魔術の類が一切使えません。」
「その代わり、獣族は身体能力が秀でてるから武器で戦う種族が多い。対して人族は非力だから魔力にモノを言わせて魔法や魔術をぶっ放してくる。」
「じゃあ、戦争の時は…」
「魔法と物理攻撃のぶつかり合いだな。龍族は体が武器であり鎧みたいなもんだしな。」
ただの肉弾戦だった。
もっと何か戦略とかがあるのだろうと淡い期待をした自分が恥ずかしい。
今まで、よくそれで戦い抜いてきたものだと一周回って称賛したいレベルだ。
だがよく思い出してみれば王都にある城にもそういった類の武器は無かった様に思う。
「ん?じゃあ、人族は武器を使わないの?」
「いや、一切使わないわけじゃないが俺たちよりも扱いは優れてないって感じだ。」
つまり、人族側にも似たような武器や装備は無いということになる。
結果として、武器の扱いは上手いがその武器や装備が少ない獣族と武器の扱いは乏しいが魔法や魔術でその手の技術が発展している人族の構図が出来上がる。
「でも、今のまま戦ったら負けちゃうんじゃ…」
「今は戦争の気配は無いが、確かに今のままってのは心許ねぇな。」
「仮にフィーシャ様のいう武器があったとして戦況は大きく変わるでしょうか?」
やはり見たことがないものを「あったほうがいい」と主張しても意味はないか。
ならば揃えてみせよう、前世の記憶を総動員してでも投石機を、バリスタを、可能であるなら大砲を!




