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初!魔物!


カァンッ!カァンッ!カァンッ!


集落全体に響く様な鐘の音。それは家の中にいたフィラルシェーラ達にも聞こえる程の音だった。

音を聞くなり、バーネット、リオラ、キバジの3人は家を飛び出す。


すでに偵察に出ていた騎士達がバーネット達に駆け寄ってきた。


「数は?」

「中型の魔物が十数体、大型の魔物が3体。」

「魔物の種類はオルトロス、ミノタウロス。他にもスライムと思しき粘液状の魔物を確認しました。」

「分かった、早急に魔物討伐の準備を整えろ。」

『はっ!』

「キバジ殿は武器の扱える者を出来るだけ集めてくれ。」

「承知しました。」


騒がしくなった外の様子を窓から覗き込む様に見ていると「危ないですから、中で待ちましょうね?」とオフクに抱きかかえられ奥の部屋へと連れて行かれてしまった。


「みんな、大丈夫かな…」

「大丈夫、集落の男達も騎士団の皆さんもきっと無事に戻ってきますよ…」


オフクの言葉に小さく頷きながら戦いに向かったバーネット達の無事を祈る様にオフクに寄り添った。



一方、魔物討伐の準備が整ったバーネット率いる騎士団はキバジ率いる集落の男達と共に魔物達を待ち構えていた。


「良いか!まず、飛龍隊ドラゴニュートが先制を仕掛ける。魔物達が散り散りになったところを各個撃破。オルトロスは1体につき3人で対処、2つの首を2人でそれぞれ押さえ込み1人が確実に首を落とせ。ミノタウロスは俺、リオラを中心に集落の連中で対処する。スライムは弱いが核となる魔石がある限り再生を続ける、決して油断するな!」

『おぉ!!』


ズンっ!ズンっ!

ドドドドドっ!!


「来たか…さぁ、野郎ども…狩りの始まりだぁ!!」


今、戦いの火蓋が切って落とされた。

雄叫びを上げながら魔物の群れに向かって駆け出していく。



男達が魔物討伐に向かってどのくらい経っただろうか。

空は赤みを帯び始め、日が傾いていることを報せている。


「みんな遅いね…」

「大丈夫、もうすぐ帰ってきますよ…」


そんな会話をしていた矢先、外が再び騒がしくなった。

窓に駆け寄り外を覗き見ると、集落の女、子供達が喜びの声を上げている。

もしや、と思い外へ飛び出すと魔物討伐に向かった男達が帰ってきていた。


「バーネット!リオラ!」

「おぅ、姫さん。帰ったぜ?」

「ただいま戻りました。フィーシャ様。」

「大丈夫?怪我とかしてない?」

「なぁに、あのくらいでどうこうなる俺たちじゃねぇよ。」


よく見れば、騎士服は汚れているが大きな怪我はしていない様だ。

集落の男達も誰一人欠ける事なく戻ってきた。

家族で無事を喜び合う様子を見てこちらも少し嬉しくなりクスリと微笑む。


「団長、全て回収出来ました。」

「よし、ここからまた一仕事だ。」

「…?何持って帰ってきたの…?」

「…魔物の死体だ。」


バーネットはニヤリと笑みながら答えた。

すると後ろから集落の男達が何かを担いでくるのが見えた。

ドサリと下されたは首の無い何かの胴体だった。


「ひぁぁぁぁ!!!」

「はははっ、悪い悪い。」

「フィーシャ様、大丈夫です。死んでいるので動きませんよ。」

「うぅ…何でそんなの持ってきたの…?」

「魔石を回収するのさ。」


そう言ってバーネットはナイフで首の無い胴体を躊躇無く裂き始める。

しばらくして胴体から手を抜くと、そこには赤い石が握られていた。


「これが魔石だ。」

「ませき…?」

「魔物の体内に必ずある核の様なものですね。これを抜いてしまえば魔物は復活出来なくなります。」

「うぇっ、復活するのっ?」

「えぇ、稀に。」


魔物の死体から更に離れリオラの背後に隠れるとバーネットは「ははっ、姫さんには刺激が強すぎたか?」と揶揄う様に笑ってきたので「別に怖いわけじゃ無いもんっ」と言い返した。


「でも、魔石を抜いた後はどうするの?」

「魔石そのものは王都に持って帰る。使い道は、まぁ追々分かるだろう。」

「死体は集落の者たちの報酬です。毛皮や牙、角、骨といった素材は衣服や武器になりますし何より、魔物の肉は食えるのですよ?クセは強いですが…」


え?魔物の肉?それって食えるの?というか食っていいの?

などと、迷想している間に魔石を抜かれた死体達は皆、前世でも見たことのあるような肉塊へと変貌を遂げていた。


「いつの間に…」

「相変わらず、解体に関しては手際が違うなぁ。」

「今宵は宴じゃ!誰一人欠ける事なく討伐を終えられた事に感謝し、盛大に盛り上がろう!」

『おぉ!』


キバジの声をきっかけに集落の人たちはそれぞれ肉を焼き始めたり、酒を持ってきたりと右往左往しだした。


「せっかくだ、俺たちも参加するか?」

「そうですね、参りましょう。フィーシャ様」

「…うん!」


そこからは騎士団と集落の人たちによるドンチャン騒ぎ。

酒を飲み、肉を頬張り、歌い、踊り、騒ぐ。

肩を組み交わし、酒を酌み交わす。

騒がしくて、でもどこか懐かしい心地良さを感じた時間だった。

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