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初!激臭!


「何…今の音…」

「…フィーシャ様、ここを離れましょう。すぐに兄上達と合流をっ…!」


突然、鼻が曲がる様な異臭がリオラとフィラルシェーラを襲う。

リオラは何とか口元を袖口で塞ぎながら周りを警戒するがフィラルシェーラはそうもいかなかった。


(何っ…この臭いっ…嗅いだことある様な気がするけど…)


前世の記憶だろうか、どこかで嗅いだことのある異臭だったが思い出せない。

逆に臭いが強すぎて意識が飛んでしまいそうだった。


「フィーシャ様っ、しばらくご辛抱くださいっ。すぐにここを離れますっ。」


意識が朦朧とする中、リオラの腕の温かさを感じゆっくりと目を閉じた。



一方、バーネットも突如響いた音を聞き団員達に警戒を促していた。


「音は森の中からか、リオラと姫さんは大丈夫か…?」

「団長!森から誰かが出てきます!」

「…兄上っ」

「リオラ!姫さん!何があった!?」

「分かりません、散策中に謎の発砲音が響いたと思えば酷い“血の臭い”が…」

「姫さんは?」

「血の臭いに気を失われました。」

「俺は森の中を確認しに行く。お前は姫さんとここで待ってろ、もし何かあったら飛翔竜に乗って離脱、陛下へ報告しろ。」

「承知しました。お気をつけて。」


バーネット達が森の中へ入っていくのを見送り、リオラは腕の中で意識を失ったフィラルシェーラを飛翔竜の近くまで連れて行き自分の上着を敷いた場所へ寝かせた。


獣族は総じて五感が鋭い、中でも龍族は嗅覚が鋭く臭いには敏感である。

あれだけ間近で大量の血の臭いを嗅いだのだ。

騎士として死線を潜ってきたリオラでさえ顔を歪ませる程だった。

生まれてからそういったものとは無縁だった王女である彼女にとってどれ程辛いか。


青白い顔をしたフィラルシェーラをリオラはただ見つめる事しか出来なかった。



森の中へ入ったバーネット達もまた、強烈な血の臭いに顔を歪ませていた。

奥へ進めば進む程臭いが強くなっていく。


「一体、何を殺したらこんな臭いになるってんだっ…」

「団長っ!アレを見てくださいっ!」

「あ…?」


団員の1人が指し示す方向に視線を向けるとそこには…


「おいおい…まじかよ…コイツらは…」


そこには何体もの“死体”が転がっていた。

その死体には共通して“刻印”が刻まれていた。


「団長…彼女達は…」

「あぁ、間違いねぇ…“奴隷”だ。この耳と尻尾…兎女バニーガールか。」

「団長、全員兎女です。」


バーネットは団員に命令し、倒れていた兎女の死体を並べさせた。

確認すると全員に奴隷の証である“隷属印”が刻まれており、首輪を付けていた。


「兎女の奴隷、計6名。全員、死亡しています。」

「死因は銃による射殺が4名、ナイフなどによる刺殺が2名。」

「周囲を確認しましたが我々以外は誰もいませんでした。」


団員の報告を聞きながら、バーネットは怒りを抑えられずにいた。

誰が何のためにここでコイツらを殺したのか。

そんな事は分かりきっている。誰が殺したのかも、何故殺したのかも。


「忌々しい…見かけたらタダじゃおかねぇぞっ…人族のクズどもがぁ!!!」



「う…んぅ…」

「フィーシャ様?お目覚めになられましたか?」

「キュキュゥ…?」

「リオラ…あれ?お前さっきの…?」

「姫さんが戻ってきた時からずっとそばにいたぜ?」


森であった風栗鼠シルフィード・スクアラルが心配そうに膝の上から見上げてくる。


「心配してくれたの?大丈夫、ありがと。」

「キュッキュゥ!」

「さて、姫さんが目を覚ましたところでそろそろ出発するぜ?だいぶ長居しちまった。」


(そう言えば…何で気を失ってたんだっけ?)


森の中で何かあった気がしたけれど気を失っていたせいかあまり覚えていない。

リオラに視線を向けるとニコリと笑うだけで何も言わない。


(何も言わないって事は大した事じゃなかったのかな。だったらこっちから聞く必要もないか…)


身支度を整え、飛翔竜に乗るため風栗鼠を下ろし「じゃあね」と声をかけると「キュキュキュッ!」とまた肩に飛び乗ってきてしまった。


「えぇ?何で?お前のお家はここでしょ?ほら、あっち」

「キュウ…」

「ほら、あっちだってばぁ…」


何度指をさして森へ帰るよう促しても一向に動こうとしないし、こっちが動くと勝手に肩に登ってきてしまう。


「…姫さん、そいつ一緒に連れてけって言ってんじゃねぇか?」

「え?そうなの?」

「キュキュ!キュウゥ…」


そうだ、と返事でもするように頬に擦り寄る風栗鼠を見て「じゃあ、一緒来る?」と問いかけると「キュン!」と軽く肩で飛び跳ねた。


「リオラ、良いのかな?」

「風栗鼠は危険な魔獣ではないので陛下もお許しくださるかと。」

「じゃあ、名前付ける。」


名前を付けるとなれば何がいいだろう。

風栗鼠、風を操る魔獣、何か自分だけの特別感が欲しいところだ。

しばらく悩んだ結果…


「よし決めた、お前は風丸ふうまるだ。」

「キュウ!」

「よろしくね、風丸!」


こうして、フィラルシェーラ一行に新たな仲間、風丸が加わったのだった。

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