初!遠征!
飛翔竜に乗って龍王国の王都を飛び立ったフィラルシェーラと赤龍騎士団一行。
「どうだぁ!姫さん、空の旅は!!」
「すごい!ジェットコースターみたい!」
「ジェットコースターが何かは知らねぇが気に入った様で何よりだ!」
バーネットが操る飛翔竜はまさに風を切り裂く勢いだった。
フィラルシェーラの身の安全を考慮して速度は落とされているがフィラルシェーラ本人からすれば充分な速さなので興奮してしまう。
最近になって思うが、どうやら感性が3歳の女の子になっている様だ。
バーネット達がドラグノスに処罰されそうだった時も、居なくなってほしくないという気持ちと怒ったドラグノスが怖いという感情が抑えきれず涙と一緒に出てしまった感じだった。
(でも、無理に抑える必要は無いよな。TPOを弁えればきっと大丈夫!)
▽
王都を出発して2時間。フィラルシェーラ一行は休憩を兼ねて湖に立ち寄った。
「空は少し冷えたでしょう、温かい飲み物をどうぞ。」
「ありがとう、リオラ。」
「リオラ。飛翔竜を休ませてる間、姫さんと散策でもして来いよ。」
「分かりました。フィーシャ様、参りましょう。」
「うん。」
飛翔竜で長距離を移動する場合、乗る方は高所の空気で体が冷えるため一度降りて体温を上げる必要がある。
そうしないと頭痛や目眩、吐き気と言った症状に襲われるらしい。
いわゆる高山病の様なものだ。
龍族は血の巡りが良いため少し動けばすぐに体温が戻るのだとか。
あらゆる植物が自生している道を歩いているとどこからかガサガサと音がした。
リオラが瞬時に腰の剣に手をかけ、フィラルシェーラもリオラの背後に隠れる。
「何かいるのっ…?」
「フィーシャ様、決して私の側を離れないでください。」
リオラの服にしがみ付きながらあたりを見回すと茂みから何かがヒュンっと飛び出してきてフィラルシェーラの顔にビタッと引っ付いた。
「わぁ!!わわっ、何々っ!!!」
「キュウっ…キュキュッ…」
「これは…フィーシャ様、落ち着いてください。大丈夫、危険なものではありません。」
リオラに剥がされたそれは「キュ…キュウ…」と小さく鳴きながらこちらを見上げてきた。
「リオラ、これ何?」
「風栗鼠、風を操る魔獣ですよ。これはまだ子供の様ですね。風をうまく操れなかったのでしょう。」
リオラの手の中で様子を伺う様にチョロチョロと動き回る風栗鼠をジッと見るとこちらの視線に気づいた風栗鼠がフィラルシェーラの肩に飛び乗ってきた。かと思えば、すぐに地面に降り立ち森の中へと駆けて行った。
「あぁ、行っちゃった…」
「さて、我々もそろそろ戻りま…」
パンッパンッパン!!!
その時、突如森の中に謎の発砲音が響き渡った。