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閑話 ドラグノスの本音

19話:飛翔竜のフィラルシェーラ遠征参加のくだり部分のドラグノス視点のお話です。


赤龍騎士団にフィラルシェーラ同行の遠征を命じた日の夜。

ドラグノスは愛する妻である王妃の写真を傍らに置きながら酒を呑んでいた。


「ドラグノス、入りますよ。」

「姉上、お久しぶりです。」

「聞きましたよ、あの子を…フィラルシェーラを赤龍騎士団の遠征に同行させると。一体何を考えているのです?しかも行き先はオーガとオークの集落と言うではありませんか…あそこがどの様な場所か、あなたが知らないはずはないでしょう?」

「えぇ、承知の上ですよ。」


龍王国の国境付近に位置する場所にあるオーガとオークの集落。

そこにまだ幼い娘を行かせる事がどういう意味を持つか。

父親として理解していないわけではない。


「フィラルシェーラの身に何かあっては、彼女に顔向けが出来ないわ…」


姉であるヴィヴィラは王妃が眠りについてから、王妃の公務を引き受けてくれている。

それ故に忙しく姪であるフィラルシェーラと顔を合わせる事がほとんどない。

しかし、ドラグノスと同じくらいフィラルシェーラの誕生を喜んでくれていた。


「以前、狼王国より使者が来ました。狼王の書状でまた戦争が起こるかもしれないと…」


“戦争”という言葉にヴィヴィラが息を飲む音が聞こえた。


「…かつての戦争で私達は多くを失った。そんな私達にとってあの子は希望の星、そう思っています。」

「そう思っているのなら尚更、国から出すべきではありません。」

「…泣かれてしまったのですよ、あの子に。クライドから聞いたのでしょう?火竜サラマンダーの件も。」


ヴィヴィラの頷きを見て、ドラグノスは立ち上がり夜空を見上げた。


「クライドから報告を受けた時、私はバーネットとリオラを処罰するつもりでした。ですが…あの子が、フィーシャが泣きながら2人を庇ったのです。居なくなってほしくない、と…ははっ、幼い頃の私を見ている様でした。遠征に向かう父に、外出する母に縋り付いていた頃の私を…」

「当時のあなたは泣き虫で寂しがり屋で…父にもよく怒られていましたね…」

「えぇ、次期国王としての威厳を持て、と…」


幼い頃から次期国王としての教育を受けてきた。

先王である父からもいつまでも甘えるな、泣いてばかりいるなと叱られた。

叱られる事は辛かったし、もっと優しくして欲しかったとも思う。

しかし、今はあれが父なりの優しさだったのだと分かっている。

強くあるため、王であるために必要な厳しさであり優しさだった。


「フィーシャもいずれはこの国の女王となる身です。騎士とはあの子を守る盾であり、剣。そう分かっているのですが、あの子の涙を見て止めてしまいました。」


本来なら、自分も先王の父と同じ様に娘を次期女王とするために厳しくするべきなのだろう。

しかし、娘だからだろうか。泣かれるとどうしても決意が揺らいでしまう。

親バカ、というヤツなのだろう。それでもあの子には笑っていてほしい。


「国王失格ですね。娘の涙一つで騎士への処罰を軽くしてしまうなんて…」

「そうですね、きっと父上も天国でお怒りですよ?でも、そんなところに彼女は惹かれたのでしょうね。」

「ははっ、それにこの遠征であの子は何か重要なモノを得て帰ってくる、そんな気がするのです。」


フィラルシェーラは幼いながらに聡い子だと思う。

あの場で泣かれなければ、バーネットとリオラを除団させ国からも追放していただろう。

それが分かっていたのだろうか。そうでなければ「居なくなってほしくない」とは言わない気がする。

だからこそ、そんなあの子だからこそ外の世界を知ってほしいと思った。


(元々この遠征は予定していた。そこにフィーシャを同行させ護衛を完遂する事でバーネットとリオラの汚名返上をさせる。クライドめ、悪知恵が効くのは義兄上あにうえ譲りか…)


早すぎるとも思う、危険だとも思う。それでも意味がある様な気がするのだ。

自分は自分なりに父としてあの子を導いていこうと思う。


(父上、母上、どうか…見守っていてください。)


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