俺、本日をもって転生しました
ザワザワ…ザワザワ…
あぁ、俺は解放された。もうこれで苛められることも無い。
そう、俺は死んだのだ!!アディオス、最低最悪だった人生!!
にしても、死ぬなんて初めてだからこれからどうなるんだか分からん…
というか、死んでいるはずなのになんで俺はこんな事を考えているんだ?
これはあれか?精神世界ってやつなのか?
って、んなわけあるかっての…俺は死んだ、そう間違いなく死んだんだ。
ザワザワ…ザワザワ…
にしても、何だか周りが騒がしいな…そうか!ここは天国、あの世ってやつだ!
俺のように死んだ人たちがいる世界に来たのか。
まさか本当にあの世があるなんてなぁ、もしかして歴史的な有名人とかにも会えたりすんのかな。
あぁ、でも天国とは限らないか…地獄もあるわけだしなぁ。
生前で悪い事をすると地獄に落とされるって言うし。
俺、地獄に落とされる様な事してないよな?うん、大丈夫なはずだ!
いや待てよ?、自殺したことが理由とか言われたら言い逃れできなくねぇ!?
云々と考えを巡らせながらも周囲の音や声が次第にはっきりと聞き取れる様になる。
「まぁ、ご覧になって。なんて愛らしいのかしら…」
「この肌、この髪、そしてこのお姿。全てにおいて愛らしくいらっしゃる。さすがは龍王陛下のご息女様だ。」
ん?何て?龍王?陛下?何だその中二病チックなワードは…
いや待て?それよりももっと気になるワードが最後に聞こえたぞ?
ご息女?俺は男だぞ、ってか俺は死んだはずだろ?ここはあの世じゃ無いのか?
どうなってるんだ一体。
恐る恐る目を開けて周りを見渡すと見知らぬ大人が数人俺の顔を覗きこんで喜んでいる。
「おぉ、目をお開きになられたぞ。瞳の色までなんという美しさ…まさに国の宝ですな。」
あんたら誰だ、ってかここどこだ?何かすげぇ宮殿の中みたいだけど…さすがに天国…じゃなさそうだな。
混乱している中、ドアを開ける音が響き、俺を覗き込んでいた大人たちが一斉にその場を離れて行った。
今度はなんだ、誰が来たんだ?
「ほう、ようやく目を覚ましたか。我が娘よ。お前の誕生を多くの者が祝福しているぞ。」
だから俺は男だって…つか娘って事は…まさかな…
にしても、こいつ何かデカくね…?
顔を覗かせるそいつは図体がデカい上に頭に角らしきものが二本ついている。
「どれ、よく顔を見せておくれ。」
図体のデカいそいつは図体に比例してデカい手で俺の顔に触れてくるが…
イッテぇ!!手がざらざらして皮膚剥がれそう!!痛いからヤメロっっっ!!!
「あぁ、陛下っ。そのように姫様のお顔を触られてはっ。」
メイドと思われる1人が龍王陛下と呼ばれたデカい奴を諌めるとすぐに手を引っ込めてくれた。
まったくよぉ、皮膚が剥がれたらどうしてくれる…って、何で死んだのに痛みを感じるんだ?
ますます嫌な予感がするんだけど…
「おぉ、すまなかった。鱗が擦れて痛かったろう。お前の愛らしい顔に傷を付けてはいかんな。」
鱗だぁ?ちょっと待てよ、さっきから龍王陛下って呼ばれたり、角が生えてたり、鱗があったり、お前まさか…
「姫様。この度はお誕生を心よりお祝い申し上げます。この方があなた様のお父上、龍王陛下 ドラグノス様。この龍王国の王にして、我ら龍族の長でございます。」
やっぱりかよ!!つか何となくわかってたけど俺、転生しちまったのか!!
しかも女に!!しかも人間じゃなくてドラゴンに!!
「セレンよ、赤子に言ってもまだわかるまい。」
「さようでございますね。失礼致しました。」
わかってんだよ!!理解できてんだよ!!全部!!
うっそだろ!?転生するなら、何か事前にあるだろうが!!
神様に会うとか、世界の声を聞くとか!漫画やアニメじゃ当然の様に前振りがあんだろうが!!
それなのに俺には無いってどういう事だよ!!
あれか?途中で人生投げ出して自殺したもんだから俺には何もしてくれないってか!?
理不尽にもほどがあるだろうがぁぁぁぁ!!!
「あぶぅ!!うぅ!!」
「ははは、娘は元気が良いな。」
ちげぇよ!!
つか、強面のくせに笑うと結構イケおじじゃねえか。
ちょっと微笑みを返せばどんな女性すらもイチコロだろうぜ…
って…あぁ、ダメだ、ツッコミが追い付かねぇ…どうなってんだよぉ。
どうやら俺は龍王の娘として、龍王国の姫として転生した…いや、してしまった様だ。
初めまして、俺のクソみたいな二度目の人生!!いや、龍だから龍生か?
「ばぶっ!!!(どっちでもイイんだよ、んなこたぁ!!!)」