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俺、本日をもって自殺します


あぁ、人生ってのは何て不平等なのだろう。

どっかの名前も知らない政治家が「人生は平等だ!」とか言ってた気がするけどそれは大きな間違いだ。

だって、今まさに俺は「不平等」を思い知られているのだから。


「おい、吉郎!お前、また学校来てんのかよ。いい加減立場ってのを弁えようぜ?」

「そうそう、ここはお前みたいなゴミが来るような場所じゃないんだよ。」

「お前が来ると俺たちまでゴミと思われちまうから迷惑なんだよ!」


言わなくてもわかると思うが、俺は今“苛め”を受けている。

高校に入学してから数ヶ月も経たない内からずっとだ。


高校生になると、女は色気づきたがり、男はイキりたがる。

高校入学からたった数ヶ月で、俺は人生に絶望してしまった。

私物を隠されるのは当たり前、殴る蹴るの暴行は日常茶飯事、頭の上からゴミや水をぶっ掛けられる、etc…


親に相談しないのか、って?

もちろん親にも教師にも相談したさ…

でも…


「苛めなんてじゃれ合いみたいなものでしょ?止めて欲しいなら自分から言えば大体止めてくれるわよ。」

「苛められる方に問題があるんだ。いちいち先生に頼るな。自分の力で何とかしろ。」


だってさ。

要するにこうだ、「めんどくさいから巻き込むな」。

大人ってのはいつもこうだ。自分の保身ばかりで実の息子の事すら興味を持たない。

あぁ、この世の中誰も助けてなんてくれないんだな。

だから、人生に絶望した俺はある決心をした。


「よし、自殺しよう。」


案外、自殺を決意するのは簡単なんだな。

普通なら、死ぬのが怖いとか、痛いのが嫌だとか、まだまだやりたいことがあったのにとか

いろいろ悩むところだろうがもう何も考えない。

もう決めたんだから、決めたことを曲げるのはいけないって俺を突き放した母親が言っていた。

そう思いながらも意外にも軽い足取りで屋上へ向かった。


ガチャリ…


やはり高校生の自殺の定番と言えば「屋上からの飛び降り」だよな。

学校も詰めが甘いよな、毎度ニュースで飛び降り自殺が横行していると知っていながら屋上の鍵を開けっぱなしにしておくんだからさ。

んー、風が冷たくて心地よい。この風に包まれながら俺は“落ちるのだ”。

名前は忘れたが俺を虐めていたヤンキー風のヤツが言ってたっけ・・・


「この学校、屋上からの眺めが綺麗だから紐無しバンジーしたら?」って。


確かに綺麗な眺めだな、紐無しバンジーするには最高の場所だ。

ありがとう、俺にこんな最高な場所での“自殺を勧めてくれて”・・・

え?遺書?確かに自殺するなら綺麗に揃えられた靴と綺麗な便箋に入れられた遺書が一緒にあるってのはお決まりだよな。でもさ、そんなの残したところでどうなる?

俺は知ってるんだぜ?誰も俺の死を嘆いちゃくれない。

今まで散々俺に向かって「死ね、生きている価値は無い」なんて言いまくっていたくせに。


もしかして、遺書を見つけた途端に「なんで死んでしまったんだ」なんて言うつもりか?

親も、先公も今さら「あの時、ちゃんと相談に乗ってあげていれば」なんてお決まりの台詞を吐くのか?


おぇ、考えただけで吐き気がする。笑えない冗談だ、だってみんな俺に死んで欲しいんだから。


そんなことを考えながら俺は屋上の柵を乗り越え、少ししかない足場に立つ。

下を見ると、下校途中の連中がフィギュア程の大きさでちらほらと見える。

今から奴らの目の前に落ちるのか。みんな、どんな顔をするだろう。

落ちて打ち所が悪ければ即死なんだろうけど、少しでも意識が残っていたら見てやろう。


おっと。待て待て。死ぬ前に忘れてはいけない。親には謝らねば。

見放されたとはいえ、望まれなかったとはいえ、俺を産んでここまで金をかけて育ててくれたことに感謝をせねば。


お母さん、どうもありがとう、そして永遠にさようなら。俺を産み、育てることは苦痛だったことだろう。

今日をもってあなたの息子は死にます。どうか俺のことは忘れて残りの人生を自由に過ごしてください。


感謝と謝罪の気持ちを胸に、俺は屋上から“跳んだ”。

重力に逆らわず、体は地面に落下していくが俺の心は空を飛んでいる様だった。

俺は目を閉じた。口には笑みを浮かべて。さようなら、俺のクソみたいな人生。

願わくば、俺を虐め、見捨てた連中に幸多からん事を・・・


某月某日、某高等学校屋上より1人の男子高校生が飛び降り地面に頭を強打。

男子高校生は即死、遺書などは確認されていないが自殺と断定。


龍塚 吉郎、享年18歳。

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