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異世界で始末書を書く方法。  作者: 柚科 葉槻
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2

 通称『魔法使い事件』。

 年明けから世田谷区内で発生している連続強盗傷害事件は、世間でそう呼ばれていた。


 一月十一日成人の日の夜、世田谷区内のコンビニAで異常事態が発生した。

 店舗内が水で満たされたのだ。

 店員がゴミ出しついでに外で煙草休憩をしていた十数分、店内に戻ろうとした彼は裏口を開け、内側からあふれ出した水に飲み込まれた。周辺は水浸しとなったが幸いにもすぐにはける量であり、近くのフェンスにひっかかった店員は、擦り傷打撲の軽傷と風邪で済んだ。


 水道管でも破裂し、急激に店内に水が溜まったのかと店員や駆けつけたオーナーは思い、その時はただの事故として終了しようとした。

 だが水が引き店の片付けをしている中で、レジや保温器などレジ周辺の物がなくなっていることに気付いた。火事場泥棒が出たと後日届け出がされている。


 その犯人探しは困難を極めていた。店舗周辺の防犯カメラに不審者などは映っておらず、念のため店舗の防犯カメラもとなったが、水没による破損が著しく、まだ復元できていない。


 その約一ヶ月後、今度はコンビニBの店舗が突如崩壊した。

 店員は崩壊発生時休憩中であったが、上手く事務机の下に隠れられたため無事救出された。近隣住民が事件当時、揺れを感じており局地的な地震の可能性もあるが、気象庁等よればその時間調整、国内のどこにも地震は発生していなかった、という結果であった。


 これもまた撤去作業後に、金銭の類が一切なくなっていることになり、担当者が警察へ届け出た。

 警察は別々の事件として捜査を進めていたが、オカルト系雑誌で先のコンビニAの事件とをこじつけた解釈が載り、「コンビニを狙う魔法使い」という噂が一部界隈で広まった。

 警察はそれを一笑した。だがまた一ヶ月後には事件が起こった。

 

 今度は牛丼店だった。その建物が牛丼に使われている肉のように細々と切り刻まれた。


 爆発事故かと思われたが、破片の断面が綺麗過ぎた。科学捜査研究所の担当者からは「ありえない話だが」と頭につけつつ、これは何か鋭利なもので切られたものだと説明した。


 店舗からは食材と金銭が盗まれている。また手法が「ありえない」ため、先の2件と類似性を犯罪捜査の専門家が指摘し、正式に警視庁世田谷署に捜査本部が立てらた。

 この頃には大手マスコミもこの事件に食いつき、『魔法使い事件』として大きく取り上げた。


 店員はレジ台が上手く盾となり、かすり傷程度で何を逃れた。店員曰く事件当時男性客の対応をしていたというが、事件のショックで記憶が曖昧なため、どういう風貌かまでは聞き取れなかった。

 店舗の防犯カメラは切り刻まれてしまったため、当時の映像は残っていなかった。


 そして先日、ついに”強盗傷害事件”が発生してしまった。


 午前零時を回った頃、コンビニCに訪れた男がレジで会計の最中、店員に向け火を放ったのである。

 店員が混乱している内に男は逃走。その炎が商品などへ延焼し、最終的に店は全焼した。


 店員はなんとか逃げ出したものの顔に火傷を負い、また火災の煙を大量に吸い込んだためか、現在もまだ意識不明のままICUの中にいる。

 とうとう出てしまった「魔法使い」による重傷者に、捜査本部内の緊張度は一気に膨れ上がった。


 世間やマスコミからの突き上げも酷くなってきている。


 不眠不休の証拠探しと映像等の解析で、『藤森裕樹』という青年が最も事件当時近くにいたことがわかった。また改めて彼を焦点に今までの証拠を洗うと、ほか三件の事件時にも藤森が近隣にいたことが判明している。

 これにより捜査本部は『藤森裕樹』を最重要事件関係者とし、これから任意同行を促すことになったのだ。

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