お星さまの願い
見てくれなくていい
ぼくは太陽じゃないから
見てくれなくていい
まぶしい朝日を注ぐことも
絶え間なく全てを照らすことも
一日のはじまりを告げることも
海底で眠りにつくことも
できはしないのだから
ぼくは太陽じゃないから
見ててくれなくていい
見ていてほしいと言おうにも
立ち止まり顔を上げる人など
誰も居はしないのだから
そんな表情のまま
ぼくを見ないで
前へ進めとは言わない
ぼくを見てくれなくていい
座り込んでみよう
あの星が注いでくれた暖かさに
たとえ薄汚れたとしても
きみがきみでいられるのなら
座り込んでみよう
あの星が注いでくれた暖かさに
触れてみよう
きみを支える大地に
見てくれなくていい
ぼくは満月ではないから
見てくれなくていい
まぶしい夕日を受け取ることも
夜道を導く光になることも
一夜の夢を呼ぶことも
雲の上を流れていくことも
できはしないのだから
ぼくは御月ではないから
肥えることも痩せることもなく
空でいっとう輝くこともなく
立ち止まり見とれる人など
誰も居はしなかったのだから
そんな表情のまま
夜風に当たらないで
前へ進めとは言わない
後ろには何もないわけじゃない
探してみよう
ぼくが隠してしまったものへ
あの星は導いてくれる
たとえ忘れ去ったとしても
探してみよう
ぼくが隠してしまったものへ
あの星は導いてくれる
見てくれ
それはぼくではなく
ぼくよりも広く
そして美しい星を
見てくれ
きみの一日を巡る星たちを
そんな表情のままでいい
寝転んでみよう
亀よりも牛よりものろく
そしておおきなひと踏みで
きみを乗せた星の上に
寝転んでみよう
どんな表情でいたって
感じることができる
だれかの声が聞こえる
水のせせらぎや
樹のささやきが通りぬけていく
寝転んでみよう
座り込んでみよう
探してみよう
くたくたになったあとで
もう一度
寝転んでみよう
目を閉じてみよう
明日を待ってみよう
今日を抱えたまま
昨日の夢を見よう
座り込んだときの暖かさを
探したものの大切さを
思い出せるだろうか
何度くだらないと言われても
抱き続けたものを突き飛ばしたとき
何度笑われても
歩き続けた道が閉ざされたとき
何度失っても
覆らない心を憎んだとき
たとえ過ぎ去った日々でさえも
こころに抱かれ
明日へと誘う眠気がおとずれる
どんなときでも星は巡ることを
きみは夢のなかで感じる
さあ寝転んでみよう
目を閉じてみよう
ただ眠るだけでいい
ぼくは見ていよう
きみと目が合わずとも
きみに伝えたい数々のことを
ぼくという星は覚えていよう
だからきみには
見ていてほしい
この空を




