征服王伝説 偉大なるコナン最後の戦い
なろうラジオ大賞2向けの作品です。小説本文は11月末には完成していたのですが、掲載用のイラストに時間が掛かってしまいました。
作品のイメージがつかんでもらえればと載せてみた次第です。
「ギルデン!退き太鼓を打て」
国許から東方より新たな敵来たるの報を受けた、甲冑姿の偉丈夫は隣で共に馬上にある老将に下知を発した。
「よろしいので?大王よ。この地を蛮族共にくれてやることになりますが」永年轡を並べてきた策謀の友がニヤついている事に舌打ちした大王は
「やむを得ぬ。それより東の方が厄介であろうよ」と言った。
「いかにも。攻め込んで来たのがラデル様なれば……なおさら」こう言うなり彼は馬上で笑みを浮かべた。
「うれしそうだな。ギルデン」
「さもありましょう。征服王偉大なるコナンの名を継ぐに値するはあなたの三男ラデル様において他にない」
「三男か……ゲルマンの族長らをたばかって愛娘を男として育てあげたが、却ってそれが仇になってしまった」北の大地を流れる寒風の中で大王コナンはすっかり白くなった顎髭をさすりながら
「倅どもは?」と問えば
「件のごとし!長兄オヌル殿は城に籠り、次兄ルス様は邪教の僧院に身を寄せ、王の來陣を待つとの事」彼はかつて奸計を用いてラデルを追い落とした兄たちの不甲斐なさに憮然とした。
「たわけぇ!」風に乗った王の大音声に軍馬は一斉にいななき、数多の兵たちは目を伏せる。
「ラデル様曰く『我が欲するは父上の名跡。お聞き入れ無くば槍働きにて所望する』と」
「小癪な奴!なれどあれが女である以上、わしが服属させてきた族長らは承服すまい」
「そこでございます。寄せ手はゴルド王国なる者ども。七年前に放逐されたラデル様がその王族と婚儀を結ばれ、見事に男児を賜れば」
「その王子に我が名跡を。あれはそれを名目に我が国を掠め取ろうてか!」
肯く腹心を前に、しばし大王は馬上にて大笑し
「やるのぉ!だが、このコナン・タルティウス座して奴の軍門に降るつもりはない!我が娘に征服王が如何なるものか思い知らせてくれん!」こう言い放つとかっと目を見開いた。
「それでこそ!その虎の如き眼。城を追われた時のラデル様も同じでござった。さぁて血は争えぬものじゃ」大王にならう臣にコナンは
「殿軍を任せる」言うが早いか馬首を東に向けただ一騎駆け出して行った。
こうして父と娘の、征服王コナン最後の戦いの幕が切って落とされた。
かのアトランティスが一夜にして大海に没してよりローマ帝国が勃興するまで、古のヨーロッパに文字は無く、口伝のみ語られた多くの英傑が割拠した。故にこの戦いを記した文献はない。全ては歴史の深い霧の向こうの物語である。