再来魔王③
「ねえねえシフル。なんで急に受けることにしたの?」
冒険の準備をしたリルアとシフルは、揃って街道を歩いていた。
と、シフルはにやりと笑う。
「こちらには、チートバカがいるだろう」
「チート? あっ」
と、通りの向こう側から、手をぶんぶか振る少女が見えた。
「リルアー! シフルー! ちょうどそっちに行こうと思っていたところよ!」
ローナだ。その少し後ろを、エルフのチコがついて来ている。
「あっ、そっか、ローナの剣!」
「そうだ。あいつの剣で倒せない魔物はいない。ブラックドラゴンとて、神の剣に比べれば雑魚だろう」
「なになに? あたしの剣がどうしたの?」
追いついてきたローナに、シフルが説明する。
話を聞いたローナは、
「魔物を倒して金貨50枚! 凄いじゃない! さっそく行きましょうよ!」
「……ローナさん。冒険の準備は必要ですよ。それに、ドラゴン相手なら、油断はできません」
チコが言うと、シフルも頷く。
「ドラゴンを倒すことそのものは簡単だろうが、南の平原までは、馬車でも半日かかる。テントなんかは持って行くべきだ」
「えー。もうっ、仕方ないわね」
ローナは、リルアに負けたあの時から、冒険者として真摯に取り組むようになった。
無茶な冒険はしなくなったし、剣に頼りすぎた戦いもしない。リルアは剣技を教えているし、チコからは魔法を教わっているようだ。シフルもまた、リルアついでに、冒険のノウハウを教えている。
きちんと、少しずつレベルアップは重ねている。だからこそ、こういう時も、きちんと話を聞く程度には成長していた。
「ただ、ブラックドラゴンと戦うとなると、ポーターが必要ですね」
「荷物を持ってくれる人?」
「ええ。荷物を抱えたままドラゴンと戦うのは得策ではないでしょう。ましてや、場所は平原。隠れる場所さえありません」
そう言ったチコは、
「私がポーターをしましょうか。強化を使えば、三人分の荷物くらいは背負えます」
「かばんを三つも背負うの?」
「背負い棚というのがあります。棚に背負い紐をつけたような、簡単な道具です。そこにかばんを積み、ロープでくくれば、三つくらいは背負えるでしょう。バランスが悪いので、戦いには参加できなくなりますが」
「いいんじゃないか? チコはこの中でも最も背が高い。リルアとローナのかばんを背負うくらいならできるだろうし」
「いいわね! じゃあ決まり!!」
こうして。
四人による、ブラックドラゴン討伐クエストが決定した。
☆ ★ ☆ ★ ☆ ☆ ★ ☆ ★ ☆
翌朝。
リルア、シフル、ローナ、チコの四人は、ギャロップに乗って国を出た。
もっとも、ギャロップに乗って行けるのは途中まで。ブラックドラゴンの生息域まで近づけば、ギャロップは餌にしかならないし、そもそもギャロップ自身が恐慌を来して暴れてしまう。
そのため、少し離れた川辺にギャロップを繋ぎ、見張りとしてゴーレムを置くことになった。
道中は何事もなく進み、予定の川辺まで来たところで、チコがゴーレムを起動させる。
「ふっ」
短く息を吐くのと同時、起き上がったのは、ずんぐりむっくりした人型。
ゴーレムは、術者の命令を聞くだけの人形だ。魔法使いならば使える者も多い術ではあるが、魔力を消費する割に、あまり繊細な命令に従わせることはできないので、使い手は選ぶ。
今回はチコが非戦闘メンバーなので、遠慮なく発動させることができる。
手近な岩をくり抜き、そこにロープを繋いで、ギャロップの餌を近くに置く。ここからブラックドラゴンがいる場所までは、徒歩でも、いくらもかからない。
早朝に国を出たおかげで、まだ昼頃。
四人はその場で軽い食事をすることにした。国から持ってきた携帯食料に、川で汲んだ水を沸かし、お茶にする。
「ところで。ブラックドラゴンってどんなやつ?」
食事をしながらローナが問い掛けると、物知りなチコが答えた。
「外見は大きなトカゲですね。背中に翼はありますが、これは飛ぶためのものではなく、大気中の魔力を集めるための器官です。体長は平均で約3メド。男性トールマンの倍程度です。主な武器は強靭なアゴと牙、それに高熱のブレス。加え、そもそも力が強いので、尻尾を振るだけでもトールマン程度ならば殺せてしまうと言われています」
「聞けば聞くほど化け物って感じね」
「私も、実際に見たことはありません。魔王時代にはそれなりの数がいたようですが、それも魔王城の近くだけです。魔力濃度が薄い場所では生きていられないとも言われています。それが、こんな平原に出ること自体、珍しいのですが」
「出たものは仕方あるまい」
お茶を飲んだシフルが立ち上がると、めいめい立ち上がる。
「ローナが前衛、リルアがサポート。わたしは他の魔物に警戒し、チコはポーターとして荷物を守る。いいな?」
「おっけー」
「任せて!」
「わかりました」
「よし。じゃあ出発!」




