好きだから
好きだから上手くいく。
好きだから上達する。
好きだから続けられる。
聞いたことがある。言ったこともあるかもしれない。
しかしそれは本当にそうだろうか、という疑問が僕にはある。
ふとした時にこう思ったのだ、
「皆お金好きだけど」と。
お金が好きな皆とやらは上手くいくのか?
上手くいく。とはこの場合何を指すのか。お金との上手な付き合い方か? 資本主義を理解することか?
いいや、違う。僕はお金持ちになることだと思った。
つまりは、お金が好きな皆は金持ちになるのか? そう思考した。
答えは即時に出力された。
否だ。
一部には、お金の為に頑張って、お金持ちになる人もいるだろう、しかし皆ではない。
お金が好きだから仕事を続けられる、というのはあるだろうが。
お金が好きな人は多い。皆という言葉を使って良いほどに。
お金を儲ける手段を考えて、僕らは実行する。
お金儲けは上達が遅い、大好きだけどなかなか上手くはいかない。お金を儲ける為の手段だったほうは徐々に上達する。しかし肝心の目的はというと十全とは言い難い。
そうして人生の大半を消費する。
人生の大半を好きでもない仕事の為に費やす。お金が必要だから。
悲しい話だと思う。
果たしてこれは『お金』の場合だけだろうか。最初の話に戻したいと思う。
何がいいか、スポーツ、それもとりわけ国内の競技人口の多い野球で考えてみる。
ある男の子が野球と出会い、始める。野球が好きになる。
好きだから続けられた、両親もリトルリーグの応援に来てくれる。応援の力なのか、両親の目の前で活躍する。
滅多に褒めてくれない父が沢山褒めてくれた、ますます野球が好きになる。
次第に夢を持つ、いつかプロの世界にと。
高校生、当然野球部に入る。幼い頃からの努力もあり、野球の名門校に特待生として入学する。学費の一部が免除され、少し親孝行できたことを誇りに思う。
特待生といえど、厳しいレギュラー争いは避けれない。ふるい落とされる多くの仲間、幼少からの親友もいたかもしれない。レギュラーを落ちたものはサポートに回る。男にサポートの番は来なかった。一年から三年までずっとレギュラー。その下で多くの涙を見た。
甲子園。県内の強豪を撃破し、予選を突破する。県内にいくつの学校があり、野球部があり、高校球児がいたのだろう。彼等のこの一年、いや、これまでの努力はなんだったのだろう。
甲子園優勝。優勝した我等が野球部のレギュラーは18名。総数で110名。全国のライバルの人数で割ったら何パーセントなのだろう。
彼がこのあとプロになって活躍したとか、そんな話はもういいだろう。
上手くいくものの影には上手くいかなかった者たちがいる。当然の話だ。何も難しいことじゃないし、競争は悪いことじゃない、勝利も敗北も素晴らしい人生の1ページだ。
しかしどれだけ好きでも、どれだけ夢を追い続けても、上手くいくばかりじゃない。ケガして続けることさえ出来ないかもしれない。それが世だ。
二つの事例で考えてみた限り、どうやら好きだから云々というのは正解ではなさそうだ。しかし全くの間違いとも言いがたい。
正解はこうだ。
好きだから努力を惜しまないかもしれない、その結果として好きじゃない人よりも上達は早いだろうし、長く続けられるかもしれない。長く続けることでいっそう上達し、うまくいくときもある。失敗するときもある。
文章にすると実に普通。一般論。簡単な内容だ。
しかし三行ある。これを好きだから上手くいくでまとめてしまうのはやはり乱暴だろう。
(にしてもお前、日頃からこんなこと考えて生きてるの? 理屈っぽくすぎね?)
(いや、そんなことはない、明るくバカな話をしている……ハズ)