D N A
DNA。全ての生命に与えられた設計図。
DNAには無数のスイッチがあることはご存知だろうか?
それは太りやすいとか怒りやすいとか、記憶力がよくなるとか、音楽的才能があるとか、モテるとか、お金持ちになりやすいとか、本当に無数にある。
それらは先天的にスイッチが入っていて動かせないものもあれば、後天的になんらかの要因でスイッチが動くものもある。動かさないほうが良いスイッチもある。
しかしこのスイッチ、後天的に造ることは敵わない。
人に空を飛ぶスイッチは生まれないし、エラ呼吸をすることもあり得ない。
このDNAの機構をAIに組み込む研究がある。
AIの知能が将来的に人間を超えることはまず間違いないそうだ。人知を超えた知能が新しいAIを生み出し、更に賢くなったAIが更に高度な知性を造る。
そうやって加速度的に人類の知性を引き離す。
この予想されるAIの進化に恐怖を感じた人類は、何かしらの安全装置を欲している。
その安全装置として注目されているのがDNAだ。AIに我々と同じように設計図とスイッチを与える。より具体的には人類を滅ぼさないという、オフに出来ないスイッチを与えようではないか。というもくろみだ。
あまい、想定が甘すぎるのではないか、スイッチを後天的に切り替えたり、造ることが不可能でもそれは現時点での話だ。これから先は解らない。まして相手は我々より優れていく相手だ。
それに設計図そのものを書き換える方法もある。
スイッチは後天的に造れないというのはあくまでスイッチだけを造れないということだ、人が人のままエラ呼吸をすることは出来ないが、人という枠から外れてしまえば可能である。
遺伝子組み換え食品とはそういうことだ、これから始まるであろうデザインベイビーとはそういうことだ。
人の枠を外れるというとなにやら大げさな感じもするが、広大な塩基配列の極一部を都合よく書き換えるならばそんなに外れない。
野生で枠を超えた存在よりマイルドかもしれない。
神の話をしよう、神が全知全能なのか、いるかいないかは知らないがここでは僕等を設計した存在として、いるもの、あるいはいたものと仮定したい。
神は僕等にDNAという進化の方向性がある程度定められたシステムを組み込んだ。設計図の中にスイッチを隠し、命の摂理をつくった。
貴方が今、これを読んでいることも神が定めたDNAのせいかもしれない。
神がどこまで考えたかは知らない。僕等が摂理を欺くことも、あらたな摂理を造ろうと模索することも全て、手の平の上かもしれない。
でもそうじゃないかもしれない。神の想像を超えたかもしれない。
なんにしてもAIは人類の手によって進化し、僕等の生活を豊かにしてくれる、現時点でもその恩恵は大きい。
そしてその進化は止まらない。加速する。僕等を置いてゆく。
それから先は解らない。DNAを組み込もうと、他のどんなシステムで介入しようと、知性はそれを克服する可能性があるからだ。
だからいつの日かこんな未来が来るかもしれない。
僕等が神とよばれる日が――。




