虚言癖
最初に大事なことを言っておかねばならない。僕は嘘つきだ。悪気はないのだがすぐに嘘をついてしまう。学校の図書室で調べたらこのような癖を虚言癖と言うらしい。
僕は群馬県で生まれた。父親は主夫で、母親が会社員だ。ちょっと変わってるねなんて友達からはいわれたが、僕にとっては当たり前なので関係ない。
母はいつも夜八時頃に帰ってくる。それから晩御飯なので僕はおなかをすかせて待っている。
ビールを飲む母。食器を片付ける父。一緒にテレビを見る二人を僕は毎日見ている。
夫婦仲はいい。ソファに仲良く座る二人の仲が悪いだなんて僕には思えない。
母の仕事が休みの日は、家族三人でドライブに行く。夫婦のお気に入りスポットは近郊の山で、頂上の展望台からは町が一望できる。それを見ながら二人はコーヒーを飲んだり、季節のフレーバーのソフトクリームを食べたりするのだ。
僕が小学生に上がったとき、母はランドセルを買ってきた。祖父はそれを見て悲しそうな顔をした。きっと赤色のランドセルのイメージというのが祖父と母では違うのだろう。大丈夫だよおじいちゃん。今は男の子が赤でも問題ないんだよと言ってあげた。
僕が夏休みの宿題をしないでいると父に叱られた。
僕を叱った父は、僕と一緒に宿題を解いてくれた。
小学校の個室トイレは堅くて冷たい。家のトイレも狭いけど、家のトイレの床はフローリングでその上にやわらかいマットが敷いてある。壁も壁紙というのが張ってあって、冷たくはない。僕は学校のひんやりとしたトイレの個室が苦手で、極力使わないようにしていた。
僕の家に住んでいるのは僕と、父と母だけ。近所に暮らしている祖父がペットを飼ったらどうだと言ったことがあるけど父が断った。どうしてだろう、猫も犬も可愛いと思うけどなぁ。
僕が小学三年生になったとき、僕のランドセルは捨てられた。
「どうして、そんなことするの!」
僕は父と母に問いただしたが、二人とも答えてくれなかった。父が泣きじゃくる母の背中を撫でていた。母はごめんねを繰り返していた。
謝るぐらいなら捨てなければいいのに。
同年、家に女の子がやってきた。まだ小さい子だ。父と母の子供ではない。
母は妊娠なんてしていなかったし。そもそもそういうことをこの夫婦は辞めていた。
僕は、僕でいることをやめた。




