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番外編 政志編

入学式、俺はいつものように普通に登校していた。

「えー今日は、皆さんと素晴らしい日々を迎えることをありがたく存じる。まず、入学式おめでとう。これからは、この学校でたくさんの思い出を作ってくれ。」

校長先生のありがたーい話が終わり、俺は教室にいる。

「なぁなぁ、」

後ろのやつに肩を叩かれた。

「なんだ?」

俺は振り返り、返事をした。

「おまえ、なんていうの?」

「ん?」

「名前。」

「あー名前か。俺は、生駒(いこま)政志(まさし)。」

「まさしか、どうか書くんだ?」

「生駒は、生きるに駒。そのままだ。政志は、政治の政に、志すって書く。お前は?」

「ああ、自分のこと忘れてた。俺は、石垣(しゅんや)春夜(しゅんや)。石に、垣。春に夜って書く、よろしくな。」

「ああ、こちらこそ。」

急に話しかけてきたそいつは、俺とは違い、他の県からやってきた転校生だった。中学では、ほとんど見知った顔が多い。どうりで、見覚えがないわけだ。

「政志、お前部活なに入るか決めたか?」

「まぁ、な。俺は、小さい時からやってる、バスケ部に入ろうと思ってる。」

「そうかー。俺もそうしよっかな?」

「そうしたら?」

「うん、そうしようか。」

その後、俺たちはバスケ部に入部届けを出した。


✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎


「はぁー。明日から夏休みか。早いなー。」

入学から、3ヶ月が経とうとしていた。

「そうだな。おしっ!今ちょうど、バスケットボールがある。そこの公園でバスケしようぜー。」

春夜は、バスケットボールをサブバックから取り出して、近くの公園を指差した。

「お前、どこからそのバスケットボールを出したんだよ。いっつも持ってきたのか?」

「いや、学校のをこっそり持ち出した。」

「おいっ!あとでしっかり戻しとけよ。」

「わかってるよ。」

俺たちは、バスケットボールを使い1on1で勝負した。

「おわっ!」

春夜がミスってボールを道路に投げてしまった。

「何してんだよ、春夜。」

「わりー。」

「俺が取りに行くからそこで待っとけ。」

「おうおう、そーだな。待っときますよ。」

春夜は少し拗ね気味だった。

俺は、道路に出たボールを追った。すると、ある1人の少女がボールを拾ってくれた。

「これ、あなたのですか?」

「ああっ、ありがとう。」

「いいえ。あっ、ケガしてますよ。はい。」

その女の子は、丁度小6くらいで俺が腕から血が出ているのに気づき絆創膏をくれた。

「ああ、さっきか。ありがとう。」

「どういたしまして。」

その時、女の子はすっごく可愛い笑顔を見せた。どうしても、その可愛い笑顔が頭から離れなかった。

少しだけ探しては見たものの見つからず、諦め掛けていた。そんなこともいつしか忘れ、2年生になった。俺はいつものように登校していた。

「あぁ、今日は1年の入学式か。」

「なーに、じじくせーこと言ってんだよ。行くぞ。」

その時、俺の前をあの女の子が通っていった。俺の反応は絶句。その少女は変わらず可愛い。いや、綺麗だった。その頃からずっと、彼女のことを目で追うようになっていた。


そんなある日、後輩の拓磨がマネージャーを言い出した。

「政志先輩、マネージャーほしくないですか?俺の知り合いがバスケ部のマネージャーを希望してるんですけど。」

「別にいいぞ。顧問に許可は俺がとっておく。」

最近、部員が多くなって苦労していたから、ちょうどいい。そんな軽い気持ちだった。

だが、その時やってきたのは‥。

「えっと、この度バスケ部のマネージャーをさせていただきます、千代と申します。よろしくお願いします。」

「同じく、バスケ部のマネージャーをさせていただきます、千代の双子の姉の都子と申します。よろしくお願いします。」

俺の前に現れた少女、千代は、俺が1年の時の少女だった。どれだけ嬉しかったのかわからない。

「俺は、このバスケ部のキャプテンの生駒政志。政志って呼んでくれ。」

『はい、政志先輩。』

その双子の少女は声を合わせて言った。それから2人にはいろいろな仕事をやってもらった。2人ともよく働くいい子だった。


そんなある日、俺は決心して千代に告白した。

「千代、いきなりでごめんな。」

俺は、息を整えて言った。

「好きだ。付き合ってください。」

「‥‥‥」

千代は固まった様子で、震えた声で言った。

「ごめん、な、さい。お付き合いはできません。私には、幸せになる資格なんてないんです。だから、ごめんなさい。」

俺は振られた。そこからは何も変わらない。ずっと、今まで通りに接した。だから、あの時も。

「政志先輩、千代のこと好きですよね?」

「んっ?なんだっ⁈」

俺は目をそらす。

「先輩、嘘はダメですよ。」

「やっぱり拓磨は騙せねーな。そうだよ。ってても、もうフラれてるんだぞ。掘り返すなよ。」

改めて言うと、重いな。

「えっ?どうゆうことですか?」

「だから、掘り返すなって。‥、千代がバスケ部のマネージャーをやって2週間たったとき、思いきって告白したんだよ。そしたら、「ごめんなさい、私、私には幸せになる資格なんてないんです。」だってよ。」

そのあとの拓磨との沈黙に耐えれない俺はすぐに違う話題をふった。

「まぁ、そうゆうことだよ。じゃあ、練習戻るぞ。」

「‥分かりました。」

もしかしたら、千代は拓磨のこと好きなんじゃないかと思った。だって、幼馴染だしな。


「なぁ、春夜。幼馴染っていいもんか?」

「はっ?なんだよ、政志。」

「いや、ちょっと気になってよ‥昨日のドラマで。」

「なんだよ、ドラマって。まぁ、いいもんじゃねーの。知らないけどな。」

「そうか‥。」

やっぱり、千代は拓磨のことが好きなんだな。

そんなことを思った次の日だった。

「政志先輩!ちょっと、いいですか?」

突然、千代から話しかけられた。

「ううん?なんだ、部活のことか?」

「いいえ、伝えたいことがあって。」

これは、拓磨のことの恋愛相談とかかっと思った。

「千代‥。なんだ、遅いな。ずっと、見てきたんだ。お前が誰が好きなのかぐらい知ってる。」

やべ、改めて言うと喉に何かが刺さったような感覚だな。

「お前、拓磨が好きなんだろ?」

涙をこの時、必死にこらえていたような気がする。

「そんなわけなかった。」

今、千代が何か言ったような気がした。

「先輩、鈍いです。私の好きな人、拓磨じゃないです。」

「んっ?」

あれ?

「何が、「私のこと見てました。」ですか⁈私が好きなのは、先輩です!」

「へっ⁈」

「へっ⁈じゃないです!もう、2度はないですから。」

夢、かと思った。

「いや、なんか。好きな子に好きって言われると、なんだ、すっごくいいな。」

「ふふっ、私も同じ気持ちです。ありがとうございます、先輩。私のこと、好きになってくださって。とても、嬉しいです。」

何言ってんだよ、俺の方が感謝だよ。俺のこと、好きになってくれてありがとう。

「ううっ、なぁ、千代。だっ、抱きしめてもいいか?」

今までずっと我慢してた思い。

「えっ⁈えっーと、いい、ですよ。」

千代の照れた顔は、10倍、いや、100倍以上、可愛かった。

「なぁ、聞いてもいいか?お前の、双子の姉さんのこと。もっと、お前のことが知りたいから。」

これは、ある日何かを忘れているような気がした。千代にお姉さんがいてそのお姉さんがなくなっているという噂を聞いた。俺は当然そんなことは知らなくて。でも、何故だかな。そのお姉さんが、このバスケ部のマネージャーを一緒にやっていた気がする。これは、気のせいだろうか。だが、そのこともひっくるめて、千代に色々聞きたいんだ。もっと、千代のことが知りたい。

「‥。いいですよ。また、今度にでもお話しします。」

それから、千代に色々聞いた。

千代には双子の〝都子〟というお姉さんがいて、その子はずっとこの世界でバスケ部のマネージャーをしてたという。千代は、その都子と一緒に中学校生活をしていて、その子は俺とも話したことがあると言う。当然、俺は何も覚えてないが、何故か都子という名前が懐かしいように感じた。

「話してくれて、ありがとうな、千代。」

「いいえ、先輩。こちらこそ、受け止めてくれてありがとうございます。先輩、もう、放しません!」

「うわっ!」

千代に目一杯抱きしめられた。

ありがとう、千代。必ず、お前を幸せにしてやるから。約束だ。

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