表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法少女mirai✡7 【⚠修正前】  作者: 千歳もも
✡第2幕 _赤色の光
9/39

*episode.7 不思議なこと

 


 ✡



「も────、勝手にどっか行かないでよ、すっごい心配したんだからね!」

「分かった分かった、もう分かったから耳元で大声を出すな!!」

 私は妖精さんの小さな耳を引っ張りあげて、声の限り叫んだ。

 全く、昨日はたくさん心配掛けたくせに、夜中にふらふらって帰ってきたんだから。どこに行って何をしていたのかも教えてくれないし、本当に意味分からないよ。

「昨日闇に襲われたらどうするつもりだったの!?」

「そんなの考えられる余裕もなかったんだよ! お前の心も全然伝わって来なかったし、その……つまりそういうかとは、ワタシとお前の間に隔たりが出来たってことだから、ちょっと気まずかったんだよ……」

「それって信頼とかそういうやつでしょ。それならこれもそういうことなんだね?」

 私はポケットから、濁ったままのミラクルキーを取り出して、妖精さんの前に突き出した。

 すると、妖精さんの顔色はみるみる真っ青になっていき、ミラクルキーを無理矢理奪い取った。


「おい、これ何だよ!? ミラクルキー濁ってんじゃねぇか!!」

「だからそうなの! 何でこんなになってるのか分からなくて、ずっと不安だったんだからね」

 本当に本当に不安で、学校休んじゃったくらいなんだよ。……って、今は妖精さんには伝わらないけど。

「ちゃんと説明してなれなくて悪かった。お前は光の戦士だってことを知るだけで精一杯だと思ったんだよ。これは本心だからな。だからまだ話さなくても良いだろうって思ったんだよ。

 それがアイツにはお見通しだったんだな。私が考えてることも全部……」

 妖精さんは俯きながら悔しそうに眉を潜めた。


 アイツ――私の闇。あの女の子は、昔から妖精さんと知り合いだったのかな。妖精さんの考えてることがお見通しってことは、妖精さんの性格をよく理解してるってことで――それも妖精さんとか闇の能力なのかな?

「とにかく、私は学校行ってくるからね。妖精さんは、私に教えることをちゃんと纏めておいて、帰ってきたらちゃんと教えてよねっ!」

 私は通学鞄を持って、階段を駆け下りた。

 学校に行ったら、1番最初に赤羽さんにお礼を言うんだ。昨日はちゃんと言えなかったからね。

 よーし、張り切ってがんばるぞ。



 ✡



 校門を潜って、校舎の中に入る。警備のお兄さんに挨拶をして、下駄箱で上履きに履き替える。

 うーん、ちょっと早く来すぎたかな。今朝は妖精さんが帰ってきたから、朝の5時に起きちゃったし、あれから色々話したとは言え、やっぱり時間は余りまくってる。

 登校時刻より40分くらい早いのかな。部活の朝練っぽい生徒なら数人走ったりしてるけど、1年生は多分私だけ。暇つぶしに予習でもしておこうかな。私の学力じゃ、気を抜いてたらどんどん遅れていっちゃうからね。


 教室に入ると、意外にももう来てる人が居た。

 その人物がまたまた意外で、一昨日私に話し掛けてくれた雪帆ちゃんだったんだ。

「あれ、早いね、桃音ちゃん」

 雪帆ちゃんはにっこり笑いながら、私に手を振ってくれる。

「おはよう、雪帆ちゃんも早いね」

「ちょっとやりたいことがあったから早く来たんだ。それより桃音ちゃん、昨日無断欠席してたけど大丈夫なの? 事故とかじゃないよね?」

 雪帆ちゃんは心配そうに首を傾げた。

 心配してくれてたんだ。何だか嬉しいな。

「……桃音ちゃんに何かあったら、困るからね」

「ん?」

 今、何か言ってた?

「ん、んーん、何でもない! 桃音ちゃんが怪我しちゃったら寂しいなって言ったの!」

「そっか、ありがとう。私は結構頑丈だから平気だよ~」

 私が腰に手を当てて身体を反らせて見せると、

「あはは、桃音ちゃんってドジっぽいから心配しちゃうよ」

 雪帆ちゃんは、地味に傷付く一言をお見舞いしてくれた。



 ✡



 はぁあ、結局赤羽さんきに話し掛けるタイミング逃しちゃった~。

 赤羽さんってば、私よりちょっと遅れて来たと思ったら、すぐ授業の予習を始めちゃって、私が話し掛ける隙も与えてくれなかった。


 そんなこんなで、もどかしいまま休み時間になった。2時間めの数学の教科書を机の上に出していたら、雪帆ちゃんが近付いてきた。何故かもじもじしてて恥ずかしそう。

「ねえねえ桃音ちゃん、お節介かもしれないけど、これ」

 そう言って差し出したのは、何かが印刷された数枚の紙だった。

「……え?」

 よく見てみると、それは昨日の授業のノートのコピーだった。

少し丸っこい女の子らしい綺麗な文字が並んでいて、図形や解説が分かりやすく書いてあったんだ。

「まさかこれ、雪帆ちゃんが!?」

 私のために、わざわざコピーしてくれたんだ。

「えへへ、桃音ちゃん勉強苦手だから困ってると思って」

 雪帆ちゃんは照れ臭そうに髪の毛を触った。

「そっか、ありがと――ん?」

 雪帆ちゃんと私が出会ったのって、一昨日だよね? なのにどうして私が勉強苦手なことを知ってるの?

 受験の日にうんうん唸ってるところを見られたとかかな? でも、こんな白い子が居たら気付かないわけないもん……あれ?

「桃音ちゃん、どうしたの?」

 頭を捻って悩んでいると、雪帆ちゃんが心配そうに私の顔を覗き込んだ。

 優しい色の瞳に吸い込まれそうになる。何だか不思議だなぁ、雪帆ちゃんって。

「ううん、何でもないよ」

 こういう優しい子って、意外と勘が良かったりするんだよね。きっとそうだ。

「そっかぁ、よかったぁ」

 雪帆ちゃんはにっこりと笑った。

 あぁ、妖精さんや闇のことで荒んでいた心が癒されるよ――


「ちょっといいかしら」

 そんな空気も一瞬で壊れるほど――本当に雪が降ったみたいに、その場の空気が一瞬にして凍り付いた。

「あ、赤羽さん……」

 怖い顔をした赤羽さんが、私と雪帆ちゃんを見下ろしていた。

 びえぇ、私何かしたぁ?

 赤羽さんの肩で揃えられた濃い茶髪がサッと揺れる。

「席、外してもらえる?」

「は、はい……」

 赤羽さんが雪帆ちゃんを睨み付けた。雪帆ちゃんは何も言い返さずに、教室の隅に追い払われてしまった。あまり良くない印象だなぁ、昨日とか一昨日はいい子だなって思ったのに。

 何か、すっごいやな感じ。

「何か用?」

 思わずつっけんどんな態度を取ってしまう。

「これ、あなたのでしょ。また落としてるわよ」

 そう言って私の手を強引に引っ張る。結構痛かったから怒ろうと思ったら、何かを手渡された。

 手の中に硬い金属の感触。

 手を開いてみてみると、ミラクルキーだったんだ。


「ど、どうしてこれを!?」

 私、いつの間に落としたの!?

「今朝拾ったの。あなたの家の前に落ちてたわよ。」

 あ、朝学校に行く時に落としたんだ……。全然気付かなかった。

「あ、ありがとう……」

「そんなに大切な物を無闇に持ち歩くと、いつか落としたまま壊されたりするわよ。家に置いておきなさい」

「そ、そういうわけには……」

「いつも持ち歩いていたい気持ちは分かるけど……」

 赤羽さんは表情を曇らせた。

「ど、どうしたの?」

「何でもないわよ。あなたがそれを無くして、騒ぎ立てたら迷惑だと思っただけだから。別に、あなたのことを思って言ったとか、仲良くしたいからとかじゃないから」

 勘違いするな、と私を見据える赤羽さん。

「わ、分かってるよ……ありがとうね」

 こんないかにも優等生で可愛くて人気ありそうな子が、ダメダメな私なんかと仲良くしたいわけないもんね。身分はわきまえるものなのさ。

「でも、これはどうしても持ってないといけない物なんだ。なくしちゃっても無闇に人に話せるような物でもないの……だから大丈夫だよ」

 いつ闇に襲われてもいいように。私の生命いのちなんだから。

「よく分からない。」

 余りにも当たり前の返答に、ついあんぐりと口を開けてしまう。そりゃそうだよ、逆に分かったら怖いし。

 あぁ、今の私はさぞ見てられないくらいのあほ面なんだろうなぁ。

「じゃあ」

 赤羽さんは教室から出ていった。


 すると、ドアの近くで待機していた雪帆ちゃんが、再びサササッと私の元にやって来た。

「あの子、赤羽紅ちゃんでしょ、すごいらしいよ」

 雪帆ちゃんは口元に手を当てて、怪しい顔で囁いた。

「え?」

「何も本当は東京の有名で名門の中高一貫校に合格したとか……!」

「へぇ、何でその学校に行かなかったんだろうね」

 赤羽さんって、振るまいとか言葉遣いもパキッてしてて、頭も良さそうだし、どうしてだろう?

「急にその学校に行けなくなったらしいの。東京から引っ越しもしたみたいだけど、原因は私には分からないんだ」

「そ、そうなんだ……」

 何か悪いこと訊いちゃったな。

「でも、別に悔しいとかじゃないみたいだよ、逆にここに来られて良かったっぽいし」

「やけに詳しいね」

 赤羽さんと知り合いだった様子ではないみたいだし、どういう経緯で情報を入手したんだろう?

「お姉ちゃんが赤羽さんと同じ塾に行ってるんだ」

 なるほど。

「あ、もうすぐ授業始まるね。またお昼話そうね」

 教室の時計を見て、雪帆ちゃんはすくっと立ち上がった。

「ん、じゃあね」

 自分の席に戻っていく雪帆ちゃんに手を振った。

 こんなこと言うのも何だけど、雪帆ちゃんはどうして私に話し掛けたんだろう。

 それに、お姉さんは私達とは同学年じゃないはず、赤羽さんと親しい可能性は低いよね。どうしてあそこまで詳しいんだろう……。


 それに、赤羽さんは今まで東京に住んでいたんだとしたら、雪帆ちゃんのお姉さんも東京から引っ越してきたってことになる……よね。

 もしそうじゃないなら、どうして今までのこめも知ってるんだろう。

 不思議が多いな、雪帆ちゃんって。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ