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魔法少女mirai✡7 【⚠修正前】  作者: 千歳もも
✡第4幕 _桃色の闇
32/39

*episode.29 親友の秘密

 


 ✡



「それじゃ、気を付けて帰れよ」

「さようなら!」

 終業を告げるチャイムが鳴り、鳳先生が教室から出ていった。すると、教室内の時間は早送りしたみたいに騒がしくなるんだ。

 あの日から、――檸檬ちゃんが闇に染まってから、約2週間が経った。あの日から、檸檬ちゃんは1日置きくらいのペースで学校を休んでいる。それでも蜜柑ちゃんは毎日来てるけど、学校に居る間も檸檬ちゃんの事が気になるみたいで、授業中でもそわそわしている。

 本当に妹思いのお姉さんだよね。檸檬ちゃんは目に見えるくらい蜜柑ちゃんを大事にしてるけど、蜜柑ちゃんだって、見えない所でたくさん檸檬ちゃんを守ってるんだ。

 素敵だよね。


 だけど、昨日休んだ檸檬ちゃんは、今日も来なかった。

 2日連続で休むのは今回が初めてだから、ちょっと心配。

 明日からはゴールデンウィークだし、その後には中間テストだってある。……テスト、やりたくないな。

 大丈夫なのかな、檸檬ちゃん。



「ねえねえ、今日はどっか遊びに行く?」

「明日からゴールデンウィークじゃん」

「うちは旅行行くから無理~」

「じゃあカラオケ行かない?」

「えー、駅前のクレープ屋行こうよ〜」

 教室のあちこちで、様々な会話が飛び交っている。青春の総長って感じだよね。


「ねえねえ、今日あおばちゃん主演のドラマ始まるよね?」

「うっそ、マジで!?」

「録画しなきゃじゃん、ヤバイヤバイ」

 教室の一角で談笑していた数人のクラスメイトが、いきなり大声を出して、更には机まで叩き出したんだ。

 ど、どうしたんだろ。

「ねえねえ、どうしたの?」

 雪帆ちゃんが目を輝かせて彼女達に近寄っていった。

 私は芸能人に興味無いし、バラエティ番組なんて滅多に見ないから、全然分からないんだけど。

「今日の夜10時からあおばちゃんが主演のドラマが始まるんだよ!」

「これはもう見るしかないよね〜!」

「録画必須だよね」

「DVD出たら絶対買う!」

 す、すごい人気だね、そのあおばちゃんって子。しかも私の親友と同じ名前だよ、すごい偶然。


「あおば――?」

「ん、雪帆?」

「どしたの?」

 雪帆ちゃんは「あおば」の名前を口にして、俯いて眉を潜めた。何だかすごく真剣な表情だから、普段のふんわりした雰囲気の雪帆ちゃんとは大違いだ。

「んーん、大丈夫大丈夫」

 ぱっ、と一瞬で元に戻った。


「それにしても、そのあおばって子、すごい人気なんだね」

「そうそう、何てったって、私達と同い年ですから!」

「うん、それに容姿端麗で成績優秀。おまけにスポーツ万能なんだって!」

「演技力もハンパないし、大人に対しても年下の子供に対してもすごく丁寧で礼儀正しいし」

「何か独特のオーラがあるって言うかさ」

「もう天使? いやもう女神だよね!」

 クラスメイト達は、楽しそうにキャアキャアと盛り上がって歓声を上げてる。


 それにしても、私の親友――青葉ちゃんにそっくりだなぁ。

 青葉ちゃんは、小学校の頃の大親友なんだ。6年間ずっと同じクラスで、奇抜な髪色で浮いていた私に、1番最初に話し掛けてくれたのが青葉ちゃんだったんだ。青葉ちゃんのおかげで、私はクラスに馴染めたんだ。

 月日が経つにつれ欠席の回数が増えていった青葉ちゃんだけど、今はちゃんと学校に行けてるのかな。

 青葉ちゃんはすっごく可愛いし、足も速いし、頭も良いし。

 きっと、大丈夫だよね。


 ……まさか、本当に青葉ちゃんじゃないよね?

 んーん、それはないよ。青葉ちゃんが私に隠し事をするなんて有り得ないもん。



「ねえ、見てこれ!」

 携帯電話をいじっていた子が、いきなり大声を上げた。

「何、どうしたの?」

「見てよこの記事、あおばちゃんの噂なんだけどさ……」

 画面を覗き込んだ雪帆ちゃんが首を傾げる。

「地元の掲示板じゃない、どうしたの?」

「これこれ、画像付きだから間違いないと思うんだけど」

「……えぇっ!?」

「うっそ、まじで!?」

「まさか……そんな訳ないって」

 画面を覗き込んだ全員が目を見開いて、一気に騒ぎ出したんだ。どうしたんだろう、何かただ事ではない雰囲気だけど 。


 もし本当に青葉ちゃんだったら? その疑念が頭の中を埋め尽くした。――ううん、こんなのダメだよ。青葉ちゃんを信じなくっちゃ。

「でもこの画像見てよ、ここってさ……」

 携帯電話の持ち主が、スイスイと画面を操作し、どよめく彼女達の目の前にそれを持っていく。

 すると再び歓声が上がったんだ。

「えっ、ちょっとマジで!?」

「嘘でしょ、じゃあ会えるチャンスもあるってこと!?」

「マジか、同じ小学生の人も居るんじゃない!?」

 は、話が読めないんだけど……と言うか、読みたくない。

 会えるチャンス? 同じ小学校?

 まさか、まさか……。


「あっ、新しい書き込み発見――は?」

 嬉しそうに画面を操作していたその子は、指をぴたっと止め、画面を凝視したまま固まってしまった。

「……本名、本名が載ってる。

 あっ……、じゅ、住所と電話番号も……」

 その子の声だけが、教室に響いた。


「な、何でそんな事まで……?」

「一体誰がそんなこと書き込むんだよ、デタラメじゃない?」

「だよね、うん――えっ!」

 その子は携帯電話を投げ捨てて口を押さえた。そして、まるで熊に遭遇したんじゃないかってくらい、大きくガタガタと震え出した。

 教室中の生徒の視線が、そんな彼女に集中した。

「ど、どうしたの!?」

 雪帆ちゃんが落ちた携帯電話を拾って、画面を見た。

「え――?」

 雪帆ちゃんまで、顔を青ざめて携帯電話を落としてしまった。

「ご、ごめんなさい」

 慌てて拾うも、また手から滑り落ちる。


 まさか本当に青葉ちゃんなの?

 もし本当なら、青葉ちゃんは私に隠し事をしてたって事になる。

 本当はドラマにも出演しちゃうくらいの芸能人だなんて秘密があったなんて、そんなの――

 ううん、青葉ちゃんを責めちゃ駄目だ。助けてあげなきゃ……。

「どうしたの、大丈夫なの……?」

 周りのクラスメイト達が、携帯電話の持ち主と雪帆ちゃんを心配している。

 すると、その中の1人が、携帯電話を拾い上げて机に載せた。

 集まったクラスメイト達が、それを囲むようにして見下ろす。

「み、見てこれ……」

「……ヤバくない?」

 皆のただならぬ様子に、私も吸い込まれるようにその輪の中に入っていった。

「どうしたの?」

「桃音ちゃんは見ちゃダメッ!」

 雪帆ちゃんが慌てて叫んだけど、それはもう遅かったんだ。


「――な、何で」

 その画面には、必死の形相で机に向かう少女の姿がぼんやりと映っていたんだ。

 机には「死ね」と大量に書かれた無数の紙切れ……。

 少女は泣きながらペンを握っているけど、明らかにその顔には憎しみが宿っていたんだ。

 そして、この少女は――私がよく知る人物。


「そんな、まさか……」

 しかも、この紙には見覚えがある。

 過去の記憶が次々と甦ってくる。

 どれも忘れ去りたい、醜く悲しく――残酷な記憶ばっかりで、私は思わず床に座り込んだ。


「桃音ちゃ――」

「どうして、どうして……」

 画面に映る恐ろしい顔の少女と、いつでも笑いかけてくれた心優しい少女の姿が重なった。


「青葉、ちゃん」

 私は、その少女の名前を口にした。



 どうして――どうして青葉ちゃんが?

「も、もう帰ろう?」

 雪帆ちゃんが静まり返る教室で1番に声を出した。

 その声に、皆は黙ったまま鞄を掴んだ。

「また明日」

 何だかお通夜みたいな暗い雰囲気……。仕方ないか、憧れの芸能人があんなことしてるんだもん。そりゃあ誰でも落ち込むよね。

 でも、私はそれ以上にびっくりしたんだ。

 行きたい学校を見付けられたのも、この学校に通えるようになったのも、辛い時に助けてくれたのも、青葉ちゃんだったから。


 芸能人だってことを隠されたのは仕方ないと思うよ。だって何かしら理由があったに違いないから。でも……。

 まさかあれを書いたのが青葉ちゃんだなんて、思ってもいなかったから。

 どうしてだろう。青葉ちゃんはずっと側に居て励ましてくれてたのに。

 本当は、ずっと――


「桃音ちゃん、大丈夫……?」

 雪帆ちゃんが背中を擦ってくれる。

 それで少し落ち着いたけど、やっぱりまだ悲しいよ。何が何だか分からないし、どうしたらいいのかも分からない。

「あおばちゃんの事、すごく落ち込んじゃうよね。」

 雪帆ちゃんが優しくそう言ってくれた。

 ――ん、ちょっと待って。

 雪帆ちゃんは、私に見ちゃダメって言ってたよね? どうして私と青葉ちゃんの関係を知ってるんだろう。

 青葉ちゃんの話はしたかもしれないけど、顔までは知らないだろうし、テレビで見たとしても私の友達だとは分からないはず……。

「……雪帆ちゃん、どうして私に見ちゃダメって言ったの?」

「え? だって、青葉ちゃんは桃音ちゃんの友達でしょ?」

 雪帆ちゃんはキョトンとして訊き返してくる。

「そうだけど、どうして芸能人のあおばと私の友達の青葉ちゃんが同一人物だって分かったの?」

 私がそう訊ねると、雪帆ちゃんははっとして口を押さえた。

「カンだよ、だってあおばって名前、珍しいでしょ? それに同じ年って聞いたからもしかしたらなぁって思っただけだよ!」

 明らかに挙動不審だけど、確かに反射的にそう思うかもなぁ。私のこと気に掛けてくれてたのかな。

「そっか、ごめんね」

「ううん、私こそ変な事言っちゃってごめんね」

 やっぱり腑に落ちない部分はあるけど、ま、いっか。

「あっ、私そろそろ帰らなきゃ!

 また明日ね、桃音ちゃん!」

 雪帆ちゃんは教室の時計を見て、慌てて鞄を掴んだ。

「気を付けてねー!」

 私は雪帆ちゃんに手を振った。


「……青葉ちゃん」

 1人になった今教室で、私は立ち尽くした。


 今はもう、何も考えたくなかったんだ。

 次々と降り掛かる災難に、もう目が回りそうだったんだ。

 これも光に関係あるの? もしそうだったら、私は光になった事を許さない。もし誰かが私を選んで光を堕としたのなら、その人を絶対に許さない。

 それくらい、気が滅入ってるんだ。

 どうして? どうして、青葉ちゃんが。

 どうして青葉ちゃんが、小学6年生の時にランドセルに入れられていたあの紙を、書いてるの?

 

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