最終決戦 2
三月二十六日、八時三十分。
始業開始と共に、捜査二課に日下が慌てて駆け込んだ。
「朝一から申し訳ありません。捜査一課のサーバーがおかしくて捜査情報が漏えいしているかもしれません。確認して貰えませんか?」
田中と吉村は、捜査一課が大嫌いである。
「そりゃあ、大変だな。ランケーブル抜けばすむことさ。そう簡単に漏れないと思うよ。二課に来る前に自分たちで解決したら?」
「まあ、見るだけ見てやろうぜ?一課さまが頼んで来たんだから」
二人は、二課経由で一課サーバーにアクセスし、漏えいが疑われるファイルを検索する。
「おい、日下。どれだ?」
日下は、必死でファイルを探すと対象ファイルを見つけ指で差した。
「あっ、これです。昨日の捜査情報。これを見てください」
「あーーこれね?どれどれ?・・・ん?別に大したトラブルないみたいだが?なぁ、吉村?」
吉村は画面が見つめると、何か見つけたようだ。
「どうした、吉村?」
「・・・いや、大丈夫じゃないかな?そういえば、一課はまだ山川刑事の容疑晴らす為捜査してるんだって?暇なことだ」
「・・・・・・」
「はい、終了。問題なし」
日下は困った顔をしながら食い下がる。
「本当に問題なしですか?おかしいな?でも、二課のお墨付きがあれば佐久間警部に叱られなくて済みます。ありがとうございます」
「・・・佐久間警部に言われて来たのか?おい、吉村?まずいかな?もう少し見るか?」
吉村は時計に目をやり、一蹴する。
「天下の佐久間警部といっても、関係ないね。問題ないものはないね。それに二課は一課ほど暇じゃない。はい、帰った、帰った」
吉村はそう話すと、日下を無碍に扱い二課から追い出す。
「おい、吉村。やり過ぎじゃないか?ただでさえ以前佐久間警部に目を付けられ、ウチの課長からも大目玉食らったんだ」
「関係ないね。いずれ俺が課長になった時は佐久間警部などリストラしてやる。お前も気をつけることだ」
「・・・・・・」
「まあ良い。田中、少し出てくる」
「どこか行くのか?付き合うか?」
「いや、大丈夫。知能犯捜査で気になる点を見つけただけだ。俺だけで事は足りる」
吉村は田中の肩に手を置くと捜査二課を後にした。
警視庁の庁舎を出るとすぐに携帯を取り出し斉藤啓二に連絡を入れる。
「プルルルルル」
(早く出ろよ、バカヤロウ)
「もしもし、・・だれ?」
「おい、起きろ斉藤。俺だ!」
「んーーどうした?まだ、こんな時間じゃないか?」
「いいから、起きろ!まずいことが起きた」
「・・・まずいこと?」
斉藤啓二も少し目が覚めたようだ。
「ああ。佐久間が新宿歌舞伎町貴金属店に気がついた。店主に俺の写真でも見せられて確認取られたら終わりだ。俺もお前もパクられるぞ!」
「何だって?まずいじゃないか!」
「たまたま、一課のバカが二課にサーバーの調子が悪いと相談に来たことが幸いしたよ。いち早く捜査状況を把握出来たからな。あれを見なければ終わっていた。今から店主を拉致するか殺すぞ。まだ、一課は警視庁内にいるから、お前もすぐに用意して新宿に向かえ。山川の残弾も忘れるな?」
「・・・お前はどうする?」
「俺は電車で向かう。バイクで何かあっても困るからな。お前はいつもの車で例の場所につけろ。・・・そこで合流し拉致決行だ!」
「わかった。今すぐ向かう」
(佐久間め。手を煩わせやがって。無能な部下のせいでお前のご自慢推理はギリギリでご破算だ。しかし、ヤバかった)
時計は、九時を回っていた。