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異世界探求者の色探し  作者: 西木 草成
第2章 青の色
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第77話 青の精霊の色

 なんだか最近話が進まないなぁ 

 青の精霊ことウィーネ。薄い水色の羽衣のようなものを身にまとっていて、人間の姿をしているものの、その容姿は人間のそれとはかけ離れている。だが、特徴的なのは魚のヒレのようなものが耳から生えているというのが唯一人間と違うところといったところだろうか。


「何人の体ジロジロ見てんのよ、この変態」


「....そろそろ止めてもらえません?」


 そんな彼女と契約をしようというわけだが、それにはひとつ条件が一つ必要だった。


『私の精霊石を探して欲しい』


 ということである。


「なんで手元に置いておかないかねぇ? やっぱ600年前からバカなのは変わんねぇか」


「うっさいっ! あんたも探すのを手伝いなさいっ!」


「やっぱバカだろテメェ。俺が水の中に入ってなんともないと思ってのかこのビッチ」

 

 現在、俺とレギナ、そしてウィーネで先ほどまで戦場だった湖の中でその精霊石とやらを探している。方法はとにかく湖の中をさらうという原始的な方法だ。そしてサリーはというと、湖の岸辺で寝っ転がって俺たちの様子を見ている。


「ビッチっていうなっ! 湿らせるわよ、この松明男っ!」


「湿らせるとか、さすがビッチ。表現もエロいご様子で」


「....っ!」


 おもむろにウィーネが足元の湖の水を手でなぞり、それをサリーに向けてまるで子供が相手に向かって水をかけるように動いた。しかし、やっているそれは子供のやることではない。


 水はサリーにかかる刹那、その形状を変化させドリル状の水流を生み出し襲いかかったのである。


「な....あぶねぇっ! 何しやがるこのビッチっ!」


「うるさいうるさいうるさーいっ! あんたなんか大っ嫌いよっ!」


 といった感じが続いているわけだが、さすが青と赤というか、水と火というか、全くもって仲が悪い。


「イマイシキ ショウ」


「あ、はい。なんですか?」


 隣で湖の底をさらっていたレギナがふと声をかける。その表情から、不機嫌であるということは一目瞭然だった。


「いつまでこんな茶番を続けているつもりだ。私たちは湖の掃除に来たわけではないぞ」


 ごもっともである。かれこれ戦闘が終わってから2時間近く、無意味に精霊石を探している。そもそも、こんな湖の端が目測で何キロも先にありそうな湖を探したところでは手作業で半年以上かかってしまうだろう。


 何より、この青の精霊というのがとてもいい加減なのである。


『ちなみに、どこで落としたんですか?』


『ん〜、湖のどこか』


 そして追加情報としては、すでに記憶にもないくらい遠い昔なのだという。


 見つかるわけがない。


「え〜っと、ウィーネさん?」


「何よ変態」


 サリーと言い合っている彼女に声をかけるが、これもまた不機嫌そうな表情で見られる。一応、健全な男子として不機嫌な女性の顔というのは精神的にくるものがある。


「一体どういう経緯で無くしたのか教えてもらえませんか? 探すヒントになるかもしれませんし」


「ハァ〜、面倒くさいわね」


 その言葉通りいかにも面倒くさそうにこっちに振り向いて説明しだした。


 胸に下げていたらいつの間にか無くなっていた。


「はい?」


「何よ、それ以上の説明はないわよ」


  いや待て、まさかの説明がこれだけなのか? 胸から下げていたらいつの間にか無くなっていたって....


 そう思ってウィーネの胸元を眺めると、確かに胸には銀色のチェーンらしきものがぶら下がっており、その先には何かがはまっていたと思われる金具が一つ。にしても....胸の質量感どうなってるんだこの人....ではなかったこの精霊は。確実にE以上は....


「それ以上見てるとその目玉の水分を全部吸い取るわよ」


「すみませんでした」


 ウィーネの青い瞳が一瞬ギラつき生命の危機を感じた俺は、再び足元の湖に目を向ける。それにしてもあまりにも情報がない。そもそも彼女はここで本当に精霊石を無くしたのか?


 そしてだんだんと日が傾き始め、あたりが真っ赤に夕日に染まり始めた頃までとにかくウィーネに精霊石を探す石があると証明できるまで探し続けた後、森のそばで野宿の準備を始める。


「さて....せっかく湖に来てるんだから、魚料理が食べたいなぁ」


 完全に暗くなる前に軽く森で食べれそうなものをかき集める。主に草やきのこの類と、軽い果物の実程度だ。


 そして本命の魚である。湖の透明度はかなり高く少し遠目で見てもその下でソコソコの大きさな魚が泳いでいるのが見える。当然釣り道具なんてないからつかみ獲りである。だがこれがかなり難しい。


「くっ! まっ....」


 すでに何度目のチャレンジであろうか、掴める事はつかめるのだがその後に暴れられて結局逃してしまうのである。もしこれを陽が落ちる前までに捕まえることができなかったら、本日の食事は主食なしの草とキノコ炒めで終わってしまう。それはなんとしても避けたい。


「イマイシキ ショウ。そこをどけ」


「え? うわ....っ!」


 魚を追うのに夢中になっていた矢先、ふと後ろからレギナの声が聞こえたかと思うと、目の前で泳いでいた魚が何かで串刺しになっていた。


「え....っと。レギナさん?」


「あと何匹だ」


「あ、はい?」


「あと何匹かと聞いているんだ」


 振り返ると、防具をすべて取り払った状態のレギナ。その手には先を尖らせた木の棒が数本。どうやら魚取りに参加してくれるらしい。


「えっと、あと3匹ほど」


「わかった、貴様は火を起こさせていろ。あとは私がやる」


「あ、ありがとうございます」


 言われるがまま、魚取りは彼女に任せるとしよう。人には適材適所というものがある。湖から上がるとその様子を眺めていた青の精霊が仁王立ちで突っ立っていた。


「ねぇ、精霊石は?」


「今日は陽が落ちますし、また明日にしましょう。大丈夫です、約束は守りますから」


 正直言ってかなり疲れた。身体強化術の影響で全身筋肉痛だし、その後湖をさらう羽目になるし、ともかく今日は目をつむったらすぐにでも寝れそうな感じだ。そして、寝ているサリーを叩き起こし火の準備をさせると、ちょうどレギナが魚を注文通り3匹とって戻ってきた。


 本日のメニューは簡単な魚の塩焼きと、魚のアラで出汁をとった野菜きのこスープもどきである。スープで使う水は湖で調達、かなり透明度が高いからそのまま使用しても問題はないだろう。


 まず、湖できのこと山菜を洗う。そして魚2匹のはらわたを手持ちのナイフを使って抜き、下準備を整える。もう1匹は身をさばいて三枚におろし、真ん中をスープの出汁に、片方を燻製にしてもう片方は刺身にした。


「さて、簡単ですけどできましたよ」


「そうか」


 黙って剣の手入れをしていたレギナが顔を上げる。焚き火にスープをかけたフライパン、そしてその周りには塩焼きにした魚が串刺しになっている。ふと友人に誘われたキャンプはこんな感じだったと思い出した。


「それでは、いただきます」


「イタダキマス」


 俺に合わせてレギナは手を合わせて食事の挨拶をしてくれたのが少し嬉しかった。まずは魚の塩焼きだ、口に入れると塩味とともに魚本来の旨味を多く含んだ身が口の中で広がる。スープも魚の出汁がよく効いていてうまい。しばらくそうやって食べ進めているとどこからか視線を感じる。


「....」


「え〜っと、ウィーネさん?」


「....美味しそう」


 いつの間にか後ろに立っていたウィーネが物欲しそうにこちらを見ている。そういえばサリーは何も言ってこないが精霊も飯を食べるのだろうか。


「よければ食べますか? スープだけですけど」


「食べる」


 自分の器を差し出し、それをウィーネが受け取る。そして、スプーンの先に息を吹きかけながら冷ましていき、それを結構長くやっていることから彼女は猫舌なのだろうか、そしてようやく一口食べた。


「....美味しい、変態のくせに美味しい」


「そろそろ変態っていうのはやめてもらえませんか、結構傷つくんですよ」


「うるさいわね、あんた彼女持ちであんなことして、変態と呼ばずしてなんと呼ぶのよ」


「そういう関係じゃないですよ」


 そう、俺と彼女はあくまで誘拐犯と人質、しかし最近となってはその関係がだんだんと薄れていっている気がする。にしても彼女は本当に王都騎士団に帰りたいと思っていないのだろうか、正直不安である。しばらくレギナを見ていると、ふとレギナと視線があった。


「なんだ、イマイシキ ショウ」


「いえ、なんでもないです」


「そうか、ゴチソウサマ。うまかった。私は先に寝るぞ」


 そういうと食器類を下げて、レギナはそそくさと自分の寝床へと入って寝息を立てている。にしても自分ごとではあるが、なぜここまでして俺についてきてくれるのか、いろんな意味で不安だ。


「ねぇ、私の精霊石どうするの? このまま湖の底を何年も探す?」


「そうですね....ウィーネさん。何か隠してませんか?」


「....」


 ウィーネの表情が変わる。おかしいと思っていたのは湖をさらわせたあたりからだろう。絶対に見つかるわけもない、何せ精霊のいう大昔は確実に何百年という単位だ、しかも失くしたのだなんて最近の話ではない。いくら馬鹿呼ばわりされていてもそんなことぐらいはわかるだろう。

 

 そしておかしいのはもう一つ、精霊石はおそらく今彼女のしているネックレスから外れたものだろう、精霊石だけが外れて失くなったとはどう考えてもありえない。


 そこで考えられるのは、精霊石は何者かに盗まれたという可能性だ。


 まっすぐウィーネの顔を見る。しばらく無言の状態が続いたが、先に目を逸らしたのは彼女だった。


「....今は言えないわ」


「そうですか....」


 しかし、それはさほど問題ではなさそうな気がした。そう思い、おもむろに立ち上がると、腰のパレットソードをベルトから外す。


「....何をする気」


「こうするんですよ」


 そして、鞘のついたままのパレットソードを地面へと突き立てた。


 というわけで、次回の更新は11月12日になります。


 次回はSSあとがきにメルトさん登場かもしれない


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