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異世界探求者の色探し  作者: 西木 草成
第2章 青の色
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第75話 守る色

さて、あとがきにSS載せますね

 木の上でイマイシキ ショウを送り出した。理由は単純だ、私が行こうとしていたのは人間の戦いではない。精霊という聖典に出てくる化け物の戦いだ。そして、それを理解している以上に、彼とその仮契約を交わしているという精霊の二人から止められた。


「....」


 ふと先ほど逃げてきた湖の方を見ると、何やら大きな水柱が上がっており、その戦闘の激しさが遠目からでもわかる。あんなところに何の変哲もない、ましてや魔術の使うことのできない人間が行こうとするなど自殺行為も甚だしい。


 だが....


 森の中で彼と会話した内容を思い出す。異世界から来たとかそこらへんの話はどうでもいい。しかし、彼が悪夢にうなされている理由。それが自分をかばって死んだ女の夢。


 どうしても他人事には思えなかった。


 軍に入ってから10年、入ったのは12か13の頃だった。初めて殺しを学び、初めて人を、国を守ることを学んだ。救えない命もあった。見捨てないとならない命もあった。


 最初に戦場で死んだのは共に騎士道を学んだ友だった。あっけなく私の隣で喉を割かれ死んだ。自分の手を血で汚して守れなかったものは多かった。しかし、守れたものも多かった。


 そうやって言い訳をしてきた。


「守りたいものを守る....か」


 いつぞや、イマイシキ ショウから聞いた言葉。そういう生き方をしていたら、私の人生も少しは変わっていたかもしれないな。


 すでに私の中で、イマイシキ ショウに対する疑いは消えている。彼がイニティウムの街に火を放ったとは考え難い。しかし、それでも彼と共に行動するのは。今、私とは違う信念で生きている彼が、一体どのような道筋をたどるのか、それを見届けたいと思っているからなのだろう。


 多数を守るために、少数を犠牲にする生き方。


 自身を犠牲にしてでも、自身の望むものを守る生き方。


 見届けなくてはなるまい、一度はあこがれた生き方だ。


 自分の行くべき世界ではないとわかっているつもりだったが、自然と手に剣が伸びて、自然と木の上から降りて、自然と足が戦闘の激しい湖に方向へと向かっていた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 目の前には先ほどの水人形たち、それらを先ほどと同じように一刀両断する。目の前で胴体と下半身が分解し、それぞれあらぬ方向へと飛んで行く。


 だが、先ほどと違うことが一つだけある。


 離れた二つの水の塊は炎を上げて二度と水人形になることなく蒸発して消えた。


『....サラマンダーの力か』


 そう、これはサリーの炎。彼曰く、怒りの炎らしい。対象が消失するまで燃え続けるいわば呪いの炎だそうだ。それは水に対しても有効であり、魔力を大量に消費するらしいが、俺の魔力値では微々たるものだそうだ。


『しかし、いくらでもこちらは増やせるぞ。見た所、まだサラマンダーとは仮契約らしいが、いつまでもつかな?』


 問題は時間だ。残るところ、あと二、三分といったところか。こんな雑魚どもを相手にしている前に、まずは本体を倒しに....


『おいおい、倒すだなんて考えはやめな。あくまで契約をするということを忘れんじゃねぇ』

「わかってる....だけど....」


 湖の中心にそびえ立つ大きな水人形、あの中心にいる人影がおそらく青の精霊だろう。しかしあそこまで行くには脚力が圧倒的に足りない上に、何より目の前の雑魚が邪魔でしょうがない。


『あのクソアマ、置いてくるんじゃなかったか?』

「いや、ダメだ。彼女を巻き込むわけにはいかない」


 これは自分の戦いだ。自分が生きる為、リーフェさんに守られた命を守る為の戦いだ。そんな私闘に彼女を巻き込んでいいはずがない。それに、この戦いで彼女が死ぬようなことがあれば、俺はもう二度と剣は握らない。


 この命に終止符を打つ覚悟だ。


『させないがな』

「うるさい、勝手に俺の口を使ってしゃべるな」


 しかし、詰んでいる状況なのも事実。このままいけば青の精霊の前で理性を失って暴走しかねない。そうなってしまったらおそらく俺は死ぬだろう。


『おいクソガキ、後ろだ』


 再び口が勝手に動き、後ろに振り返るのと同時に『炎下統一』を持った右腕が何やら柔らかい物質に飲み込まれる。


「っ....!」


 飲み込んだのは水人形。力一杯引き抜こうとするが全く抜ける気配がない。それどころか徐々に水人形の体内の中へと引き込まれてゆく感覚がある。


「クソ,,,,っ!」


 まずい、このままでは水人形の体内に体ごと引き込まれて溺死する。そしてさらに最悪なことに、身動きが取れない俺にどんどん水人形が群がってきている。


「ダメだ....」


 死ねない、死ぬわけにはいかない。だが、対抗手段がない、腕は取られ、左手に持った鞘で防衛しているが、間に合うわけもない。


 やっぱり、俺は....


「伏せろ、ショウっ!」


 森の中から突如聞こえてきた声、あの声は....


 言われた通りに、体をしゃがませると、水人形の首あたりから剣の腹が通り過ぎて行き、水人形の形が崩れ右腕から離れた。


「レギナさん....っ! どうして」


「黙れ、背中合わせだ」


 自分を助けたのはあの時、危険だという理由で置いていったレギナだった。すでに俺の背後に回って剣を構えている。聞きたいことはたくさんあるが、確かに今のこの状況、とても話せる状態ではない。


「いいか、背中合わせだぞ。意味はわかるな」


 背中合わせ....背後にいるレギナの声が自然とリーフェさんと重なる。そうだ、俺は守れなかった。彼女の背中を、今度もまた守れなかったりするのか、こんな超常現象みたいなやつを相手に、


 俺はまた自分の手で何かを失わせてしまうのか。


 いや、そうはさせない。


「はい、互いの背中を互いが守る....ですよね」


「あぁ、だが貴様は目の前の敵に集中しろ。貴様の背中を守るにこんな雑魚ども、いくら増えようと双剣を出すまでもない」


 そうか....俺は、彼女なんかを守らなくてもレギナは十分に強かったか。


 安心した。


『さぁ、その炎。受けて立つぞ』


「えぇ、俺も。あなたに勝って、契約を結んでもらいます」


 守られている。自分が生きていてもいい。そう思えた。


 だから、俺は死ぬわけにはいかないっ!


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 湖にそびえ立つ水人形。いや、もはや巨人と言ってもいい。さて、どうやって戦おうか。あの中心にいるのが先ほどの説明した通り、青の精霊なのだろう。そっしてそれが近づいて行き、だんだんと俺の近くにまで寄ってくる。


「魔力全部流しても....」


 おそらく、あの中心に『炎下統一』を届かせることは難しい。ならばどうやって届かせる。地面を蹴っても届かないというのなら、斜めに構える地面があれば角度次第でなんとかなるんじゃないのか。


『しっかり前を見ろ、このアホ』

「チィっ....!」


 すかさず左側へ飛び退く、そして俺が先ほどまでいた場所には、大きな水の塊の腕が地面にのめりこんでおり、あそこにいれば確実に死んでいた。


 それに続いて今度は水人形の口から、これまた質量の大きい水の塊が正面から飛んでくる。


 『炎下統一』を鞘に収め、深く息を吸う。


 ....スゥ


 ハァ....


『今一色流 抜刀術 星天回』


 正面から真っ二つに割れた水の塊、それは炎を上げて水蒸気となり背後で白い煙となって消える。


 しかし、攻撃を防いでいても近づけないのであれば意味がない。


『おい、そろそろ時間切れだ』

「あぁ、わかってる」


 時間だってない。やはりここは一旦引くしかないのだろうか。


「ショウっ!」


 その時、背後から声がかかる。さほど気にしていなかった後ろの方を見ると、水人形の数が先ほどの倍になっており、しかし、その中でもレギナは快活に水人形を一刀両断し続けている。


 そして、俺とレギナの目があった時。おもむろにレギナは剣を地面に突き刺し、剣の腹をこっちに見せたのである。


「来いっ!」


 ....そういうことかっ!


 彼女の言おうしていることがわかった。そうとわかった瞬間に、全力でレギナの方へと走る。彼女の背後には丸腰状態になったところを狙って、水人形が迫っている。そして進路を妨害する水人形を切り伏せ、レギナのところにたどり着く。


『今一色流 抜刀術 円月斬<地>』


 とっさに頭を伏せたレギナの後ろで水人形たちの首が抜刀術で飛ぶ。それぞれ炎を上げて煙上げていく中、俺はレギナの立てた剣の腹に右足を乗せた。


「行きますっ!」


「あぁっ!」


 右足に力を込め思いっきりレギナの剣の腹を蹴る。その後ろでレギナは俺が剣の腹を蹴るのと同時に、拳で剣を殴っている。これで威力は上がった。


 斜めに構えた剣の腹を踏み台にすることで、垂直に飛ぶなんかよりも圧倒的に飛距離は上がる。


『炎下統一 弐の型 炎牙』


 炎が刀の先端に集まりうねりながらドリルの形を形成する。


『な....っ』


「行くぞっ! 精霊っ!」


 イマイシキ ショウが9番隊隊長レギナ=スペルビアを誘拐してから約1週間が経過した。捜索活動は総動員で行われているが、特にこれといった情報は集まっていない。


 近くの温泉街で大規模な火災があったという情報はあったものの、検問を行った結果イマイシキ ショウと特徴の一致する人物は見つかったという情報は入っていなかった。


「レナはなぜあの少年から逃げてこない。彼女なら逃げられるだろう」


「俺が知るか」


 隊長執務室でガレアが上がってきた資料を眺めながら頭を掻いている。それもそのはずだ、未だに隊長がいなくなったことと、処刑になるはずだった人間の逃走に対しての王都からの抗議文が後を絶たない。


「というか、アラン。お前はいつ戻ってきたんだ?」


「ついさっきだ。あとこれ、土産の品だ」


「仕事の土産とか言ったら、お前さんのその首飛ばすぞ」


「やってみろ。仕事といってら仕事だがな」


 そう言って執務室の机の上に置かれたのは、紙に包まれた何か。そこにはどこかの工房の名前とそれを送った人間の名前が書いてあった。


「……なんだこれは」


「開ければわかる」


 ガレアは言われるがままに、テーブルの上の物を包む紙を破き、中身を確認する。


「これは……版画か」


「そうだ、隊長の顔がここに彫られてる。俺が隊長の顔を言って職人に作ってもらったものだからそこまで完成どうは高くない。だが、これで捜索の手助けになるだろう」


「あぁ……にしても見事な、これを彫ったのは……アリヒトというのか?」


「そうだ、短い期間ではあったがこれで事足りるだろう。疲れたから先に休む」


 そう言ってアランは執務室を出て行った。ガレアはなんだかんだいけ好かない奴だが、何より体調のことを心配しているのは彼だろうと思った。


 さて、これを印刷所に回さなくてはならないな。


 これが捜索の助けになればいいのだが。


挿絵(By みてみん)


上の人物、凶悪犯に誘拐され行方不明。

見つけた人物には王都騎士団から謝礼が出る予定、一報を求む

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