第69話 理想の色
今回はあとがきにショートショート載せますね
俺は、あの日。人を殺す寸前だったと聞かされた。ぼんやりと記憶はあるが、自分で人を殺さずして人を守ると明言しておきながら、自らそのようなことをするなど、にわかに信じ難かった。
だが、ぼんやりとではあるが、自分が何とも言い難い。負の感情を抱いていた記憶がかすかにある。しかし、俺は自らの手を汚すことなく、後に来た『啓示を受けし者の会』に始末されたらしい。そしてその攻撃の余波で俺も重傷を負ったが、街の治癒師によって治療を受け一命を取り留めたとか。
それを、俺は全身に負った打撲と筋肉の痙攣を感じながら、そばで座るレギナから聞かされた。
「剣術は我流、だが我流と言い捨てるにはしっかりとした基盤がある。イマイシキ ショウ。その剣、誰から手ほどきを受けた」
「....ハァ....ハァ....親父から....です」
全身に汗をかき、地面にぶっ倒れ、そばには折れた木刀が数本。だが、その隣でレギナは呼吸を乱すことなく平然と俺を見下ろしている。
「その剣術独特の型、それを見ただけで大体の攻撃は読める。貴様はそれに捉われすぎだ。実戦経験の少ない典型的なやつの剣だ」
実戦経験、そんなもの魔物に向けてやっていたって仕方がないし、俺は実戦経験と呼べるものは二ケタを行ってないかもしれない。
「そして、貴様はあの炎に頼りすぎてる。自分を壊すのをわかっていながら敵に向かうのは愚策としか言えない。世話になった人間の墓を建てるまでは死ねないと言ったな」
「えぇ....確かに」
「なら、その力は使うな。貴様の後ろにくっついている目つきの悪い男にも言っておけ」
「え....?」
目つきの悪い男って....まさか、レギナにはサリーの姿が見えてるのか? いや、でも仮契約が行われないとサリーの姿は見えないはずなのでは....
「あのアマは一回『炎下統一』に触れてる。そんでもって無色だったから俺の姿が見えちまっているってことだろうよ」
なんだその一度触れるととんでもないものが見えてしまう、呪いのノートみたいなものは....つまりは、レギナにサリーが見えていて、そしてこの口ぶりから考えると。
「あぁ、すでにおしゃべりはしてるぜ」
「....くそったれ」
知られたところでどうこう問題があるわけではないが、あまり知られたくないと言うか。『無色精霊術師の聖戦』なんて聞かれてしまっては、こいつの存在を知られたくない。
「今日はこれでおしまいだ。さっさと昼飯にしよう」
「あっ、えっと。レギナさ....」
「勘違いするな。これは私の身を守るためだ、中途半端に危険な状態で襲われたら、今度こそ私も死ぬ。そうならないために強くなっておけ。貴様の死刑は私が全力をもって貴様を叩きのめしてからだ」
中途半端な強さ。自分が強いとは一度も思ったことはない。だが、それでも自分の周りにいる人を守れるくらいの強さがほしい。
彼女の言っていることは正しい。
今の自分は周りの人を守るどころか、自分を殺し周りの人を危険にさらしている。理想とやっていることがあべこべだ。
理想に近づくにはどうすればいいのか。とにかく、今は彼女の背中を追うしかないか。
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街の中に入ると、焦げ臭い匂いが街を満たしていた。火は完全に消えているようで、街を歩くと、燃え落ちた家の前で呆然と立ち尽くしている家族。がれきの中から貴重品を探している男の姿、ギルドの前では、冒険者たちが集まり何やら話をしている。いろいろな人たちで街は溢れていた。
「目をそらすな、ちゃんと堂々と前を向いて歩け」
隣でレギナはそう言っている。街の人に聞いた話では、今回の火災で街の3分の2が焼けたらしい。死傷者は0、今回の火災の原因は不明だと言っているが放火の可能性があると街では噂されているそうだ。
当然、俺は放火の犯人を知っている。
そして、この火災の原因が遠からずも俺たちが原因だということも知っている。もし、俺たちがこの町を訪れなかったら、街はこのようなことにはならなかったのだろうか。
「下を見るな、前を見ろ」
「ですが....」
「守れなかったものを数えるな。守ったものを数えろ、だから中途半端なんだ」
中途半端。守れなかったものが3分の2で、守れたものが3分の1。どう考えても割に合わない。圧倒的に守れなかったものの数が多くて、守ったことになるんだったらどうしろというのだろう。それは結局は守れなかったことと同意義だ。
燃えた街を抜けて、火災の被害がなかった街へと出る。そこでは日常があって、たくさんの人が燃えた街を支援するために駆けている。
「これが貴様の守った3分の1だ。もしこの街が全て燃え尽きていたら、復興にかなりの時間がかかったろう。この調子なら復興は早い」
「....」
死人が出なかったのは良かった。でもこれからいく先々、俺たちの向かう場所が同じような目にあったら、そんな好都合なことが起きるのだろうか。でも、人は生きていて、手を取り合っているのだと。これが自分の守るために戦った結果なんだと思い込んだ。
「守った物の数を数えるな。守った物があるかどうかを考えろ。だから、胸を張って歩け。貴様にはその権利がある」
「....はい」
レギナの話を聞く限り『啓示を受けし者の会』は再びレギナを狙ってくるらしい。ならばこれからいく先々でも、戦いがあるということなのだろうか。
「それに、今回の一件は私に原因がある。貴様は気にするな」
「....ですが」
「気にするんだったら、私よりも強くなってみろ。純粋な貴様の力でな」
何も言い返せなかった。だが、俺は確実にレギナを超えなくてはならない。
街を進んで行き、目の前には街の出口が見える。そしてその先には森が広がっており、その先にある大きな湖に青の精霊がいる。そうだ、まずは自分が生きなくては。
昨日店で買った、顔を隠せるほどのローブを着て門を抜けようとする、理由はなぜか。
「そこの二人、止まれ」
門番がいるからだ。
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門番の男は二人。そして二人とも銀色の甲冑を着込んでおり、手には槍、腰には剣を差している。
「先日の火災の犯人は捕まっていない。犯人が捕まるまでの間、この街を出入りする人間の検問をしろとの命令だ。身分を証明できるものを見せてもらおうか」
まずい。身分を証明できるものはギルド証明書だけだが、今の自分は冒険者ではなく、ただの処刑を逃げ出した犯罪者。こんなところでそんなものを見せようものなら処刑台に逆戻りだ。
「え、と。すみません、証明書とか持ってなくて....」
「なら、ここを通すわけにはいかないな。ここの街で身分を証明するものを手に入れてから出直してこい」
さて、ここを出るためには身分を証明するものが必要。今街に戻ったところで作れるくらいまで街が機能するにはあと最低でも1ヶ月はかかるだろう。そうなったら確実に俺は王都騎士団に見つかる。
なら、ここの門番を気絶させて逃げるか。でもそうなったらレギナは決してついてこないだろう。ならどうする....
「えっと....そこの店で買った誓約書とかではダメですか?」
「誓約書? どれ見せてみろ」
差し出したのは、レギナの鎧を売った時の誓約書。駄目元でも出してみるものだ。そこには俺の偽名と、レギナの名前が入っている。さて、どうだ?
「まぁ、通さないわけでもないが。幾つか質問をするぞ。出身はどこだ」
「イニティウム....です」
出身は日本ですとか言う訳には行かない。仕方がなくイニティウムの名前を出した、その回答に門番の顔色が変わる。
「少しそこで待てっ、動くんじゃないぞ」
すると門番は見張り台から、一枚の紙を取り出してこちらに差し出す。
「この人物を知ってるか? 何か情報があったら言って欲しい」
これは....俺の手配書だ。
紙には俺の名前と似顔絵、そして身体的特徴が書かれている。そしてその横には誘拐されたレギナの情報が書かれており、内容はこの人物を見かけ次第即、王都騎士団に報告、状態はどのようになっていても構わない。見つけたものに金貨200枚を渡すと書いてある。
日本円相当で、約200万。極悪人だな。
「いえ、知りませんね。ずいぶん前にイニティウムに離れましたから」
「そうか、そのローブ取ってもらっていいか。念のためだ」
嘘をついたが、念には念か。そう思いローブを外すとまた門番の顔色が変わる。どちらかというか哀れみという感じだ。
「その顔の刺青。どうしたんだ?」
「これは、その、趣味です」
顔には半分ほど刺青が入っており、これはサリーとの仮契約の呪いだ。今回は似顔絵があったため助かった。
「その髪も地毛か?」
「えぇ、そうです」
そう言って髪を少し抜き、地毛であるということを証明する。ちなみに今の俺の髪の毛は黒髪と赤毛が混ざった状態だ。
「その刺青、親が見たら泣くぞ」
「ハァ....」
門番に注意されたんじゃ世話ない。そして隣の門番はというと....なぜかレギナに怒られていた。
「えっと、二人とも大丈夫です」
「よし、通っていいぞ。気をつけるんだな」
門番は俺たちが怪しくないと思ったのか、道を開け通してもらった。ともかく一件落着といったところか。
そしてしばらくして街を離れた時、なぜあの時門番に対して怒っていたのか理由を聞いたところ。
男と間違われた、と言っていた。
西「さて、今回のゲストは。料理下手の腹ペコエルフ。リーフェ=アルステインさんに来てもらいましたっ! 盛大な拍手をお願いしますっ!」
パチパチ〜
リ「どうもこんばんは。今日はよろしくお願いします」
西「いえいえ、こちらこそ。それでは、まずはじめに....本当にすみませんでしたぁッッ!」
リ「そんな、謝らないでください。これも主人公のショウさんが強くなるために引いた布石なんですから」
西「でもぉ....読者からの感想でぇ、『リーフェ可愛すぎかよっ!』てコメントが来たりとかしててぇ....友人にぃ、この物語の設定話してる時もそれはやめておけって言われてたのを無視してぇ....本当に読者の皆さんにもリーフェさんにも申し訳ないことをしたなぁってっ!」
リ「でも、これで読者さんからの印象強いじゃないですか。多分物語が進んでいく上でいろんな女の子が出ても、皆さん忘れないでしょう?」
西「....結構えげつないね。えっとゴホン。それでは質問に移りましょうか」
リ「はい」
西「ぶっちゃけて、90年間どうやって過ごしてきたの?」
リ「と、言いますと?」
西「いやいや、リーフェさん料理下手じゃん。どうやってその料理スキルで90年間過ごしたのかなぁって」
リ「....料理下手な設定にしたの誰ですか?」
西「いや、その」
リ「私だってっ! メインヒロインみたいに料理が得意で、家事が得意で、かわいい幼なじみがいて、道端でパンをくわえてイケメンとぶつかりたかったのにっ!」
西「いやいや、それ世界観全然違うじゃんっ!」
リ「料理は....冒険者さんのところに行ったり....ガルシアさんとかメルちゃんのところで....」
西「要はタカっていたんですね」
リ「うぅ....はい」
西「では、次の質問を」
リ「はい(ギロッ」
西「えっとですね〜、ガルシアさんのことをいつから好きになっていたんですか?」
リ「え、あ、え? そ、それはですねぇ〜」
西「うんうん(ニタニタ」
リ「ガルシアさんがまだ家に居てくれた時のこと....その、料理が美味しくて」
西「結局料理で判断してるのかっ! この腹ペコエルフっ!」
リ「そ、そんなことだけじゃないですよっ! ご飯よそうの上手いなぁとか、私好みの味付けにしてくれるなぁとか」
西「結局料理じゃねぇかっ!」
リ「そんなキャラに作ったのあなたでしょっ! ちゃんと責任とってくださいっ!」
西「だって、お腹が空いてて美味しそうに食べてる女の子って俺の好みだもんっ!」
リ「そんな理由で私をこんなキャラクターにしたんですかっ!? もう許しませんっ!」
西「や、やめてっ! 魔術だけはやめてっ!」
〜10分後〜
西「え〜っと、本題に入りますか....ガルシアさんのどんなところが好きなんですか?」
リ「はい....普段だらしなくて、全く役に立たない、どうしようもないギルドマスターになったのが不思議なくらいダメな人なんですけど」
西「結構言うね....」
リ「でも、そんなところが....なんでしょうね。助けてあげたいというか。その不器用な感じで、でも本気で私を守ってくれる強さと、優しさが....たまらなく大好きですっ!」
西「ヒュー! ヒュー! かわいいっ! 顔から耳まで真っ赤でかわいいっ!」
リ「うぅ、恥ずかしい....メルちゃん助けてぇ....」
西「残念、メルちゃんは次回かなぁ」
リ「もう....終わってくださぁい....」
西「了解了解、それではラストはこれで締めますか」
リ「わかりました....ぁ」
リ・西「「感想と評価は大大大歓迎ですっ! これからも宜しくお願いしますっ!」」




