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異世界探求者の色探し  作者: 西木 草成
第1章 赤の色
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第48話 奮戦の色

お久しぶりです。

「死ねぇっ!」


 俺の背後から声が聞こえる。全く人のことは言えないのだが、なぜ人は攻撃の時に叫んでわざわざ自分の居場所をさらすような真似をするのだろうか?


 我ながら不思議である。


 叫んできた男は槍を構え突っ込む。俺はそれをすれすれに躱し、目の前に来た槍の柄を右手でつかみ、そのまま左手に持った剣で上に斬りあげて折った。


「な....っ」


 そして、右手に持ってる折れた槍の柄を、自身の体を回転させながらその遠心力で、その男の後頭部に思いっきり打ち付ける。


 後頭部を打ち付けられた男は高台から飛ばされ、地面へと無残に落ちていった。


「うわ....痛そう....」


「貴様ぁっ!」


 もはや処刑になるはずだった人間を生かしておくつもりはないらしい。全員の殺気が尋常ではない。自分の行いにはそこそこ自信はあったはずだったのになぁ....


「このまま、僕を逃がすって手はありませんかね?」


「何ふざけたこと言ってる貴様っ!」


「....ダメか」


 剣を構え直し、今度はこちらから行かせてもらおうか。


 まず、目の前で剣を構えている男二人と、盾と槍を構えている男が一人。


 身体強化術を使いワンステップで一気に間合いを責める。


「は....っ」


 まず一人は反応に遅れ、剣の柄を思いっきり鳩尾に喰らい、そのまま高台から落ちて戻らぬ人に。横で急に仲間が飛んで行った事に唖然としているそいつには鞘に収めた状態の剣を思いっきり肩に打ち込んで、そのまま崩れ落ちて気絶した。


 王都騎士団とは言っていたが、あまり思ったほどではないというのが個人的な感想だ。


 そんなことを考えていると後ろの方から槍の先端が迫ってくる。


「危ね....っ」


「なめるなガキぃっ!」


 そうだ盾兵がいたのを忘れていた。いや待て、こいつどこか見覚えがあるような........あぁ、そうか。


「お前、あの時の尋問官だよな」


「あぁっ! 俺が代わりにテメェを処刑してやるよっ!」


 こいつ....っ、殺したいくらいだが、俺がここで人殺しになってしまっては元も子もない。なら、半殺しくらいにしてやろうか。


「ッラ!」


「チ....ッ」


 盾の間から見え隠れする槍の先端が頬をかすめる。盾で手元を隠されているためか、槍の軌道が全く読むことができない。


 ならばだ。


 盾が邪魔なら、盾を壊しちゃえばいいじゃないっ


「今度はこっちの番だ」


 槍の攻撃に虚が入った瞬間に、思いっきり盾に袈裟斬りを食らわせる。


「く....っ!」


 次に、さっきとは違う方向に袈裟斬りを食らわせる。しかし、さすがに盾というだけあって十字に傷ついたのみで壊れる気配がない。


 だが、予想通りだ。


『今一色流 剣術 紅葉壱点こうはいってん


 十字に斬りつけた、その交差する点に思いっきり剣で突きを叩き込む。


 盾は突かれた部分から、四つに分解し、破壊された。


「な....」


「舐めてもらっちゃ困るな」


 殺さない、死者を冒涜したお前には生きていることを後悔させてやる。


 まず手始めに、両肩に鞘に収めた剣を打ち込む。その衝撃で槍を落とさせるが次に打ち込んだのは肋骨に近い方の脇腹に打ち込む。


 これで、奴は呼吸をするのもままならない。


 次は両膝、思いっきり打ち込み破壊させる。


 今現在、呼吸をすることもできないため悲鳴をあげることすらできないだろう。


 そして、両膝を砕かれ崩れ落ちたその顔面に蹴りを叩き込んで、高台から落とした。おそらく死んではいないだろう・・・多分。


「さて、次は誰だ」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 さすがは王都騎士団といったところだろうか、すでに身体強化術における副作用の全身筋肉痛。これは、自分の生半可な筋力量では、あの筋肉ダルマのガレアに鍛えられた兵士たちに太刀打ちできないために継続的に行っていた結果である、もはや剣を振るうたびに腕がつりそうで安心して戦うことができない。


「切り込み隊っ! 高台の足元を狙い破壊しろっ!」


「っ!」


 レギナの呼びかけにより、足元でたくさんの兵士が高台の根本にある木の柱を剣で叩きつけて破壊しようとしている。


 これはまずい。


 高台の下には、剣を持った兵士以外にも、盾、弓、そして騎馬兵などがたかだか死刑囚のために総動員で殺しにかかっている。


 そんなところに降りようのなら最後、確実に集団で襲いかかられ1分も持たずに殺される。


「う....おっと」


 高台が大きく揺れ出す。すでに柱の破壊作業は始まっており、このままいけばもう少しでこの高台は崩れるだろう。


「イマイシキ ショウが落ちてきたところを矢で狙え。総員弓を構えっ!」


 ふと下の方を見るとアランが弓兵たちに指示を出し矢を放つ準備をさせている。なるほど、全力でいくというのはそういう....


「一か八か....やるかっ!」


 左に傾きだした地面、駆け出した先は


 眺望席にいる、隊長のレギナ


 筋肉痛で痛む体に鞭を打ち、全身に身体強化術の魔力を流し飛び上ろうとする刹那、崩れ落ちた地面を思いっきり蹴りつける。


 足場にした崩れている地面が思いっきり地面へと叩きつけられ、土埃が広場全体に舞う。視界不良の最中、全員がいなくなった死刑囚の姿を探し、そして土埃が晴れる頃。


 彼らが目にしたのは、隊長のレギナの喉にパレットソードを突きつけている俺の姿だった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「動くな、さもないと....え〜っと....こいつの喉を掻き切るぞっ!」


 全員の視線が俺に集まる、幸いにもレギナが武器を持っていなかったらできたものの、もし持っていたら俺とは逆の立場かもしれない。


「私を人質にとってどうするつもりだ、イマイシキ ショウ」


 現在、俺の持つ剣を喉に突きつけられているレギナが俺に問いかける。


「まず、俺の持ち物を持ってきてもらおうかっ! 一切全部だっ!」


 こっちにあるのは、パレットソードのみ。あとはパルウスさんに作ってもらった防具、そしてリーフェさんの髪だ。どちらも....形見になってしまったな。


「....言う通りにしろ。アラン、全部持ってくるんだ」


 どこか呆れたかのように、しかししっかりした口調でレギナは呆然と立ち尽くしている隊員に指示を出す。


 行動は早かった。一旦建物中に戻ったアランが俺の荷物をいっさいがっさい持ってくる。


「それで、次はどうするんだ?」


「え....俺に防具をつけろっ! 早くするんだっ!」


 生まれてこのかた19年、人質を取るといった経験がないため今、かなり吐きそうである。


「よし....そのまま俺の体に防具をつけろ。妙な真似をしたら本気で首を飛ばすっ」


 あぁ、これはもう完全に犯罪者だ。


 どこぞの立てこもり強盗犯となんら変わりない。まさか異世界に来てまで犯罪者をやるとは、情けない話である。異世界に行ったらハーレムになれるとか、なんやかんやで世界救って英雄になれるなんてのは全くもって詐欺だな。


 そんなことを考えている間にアランが体の防具をすべて付け終えたらしい。リーフェさんの髪は両手の塞がっているのを考慮し、パレットソードのベルトに結びつけておいてくれたらしい。


「さて、終わったがお前はこれからどうする。これだけの人間に囲まれて、そして周りには建物があり外には堀がある。いくら身体強化術で補おうとしても飛び越えるのは不可能だぞ」


 確かにそうだ。装備品等は返してもらったものの、ジェットパックがついているわけでもない。見たところ高さビルの10階に相当する高さのものをどうやって。いっそのこと中から抜けて外に....


「言っておくが。私の部下は私の言うことしか聞かない、たとえ私を盾に脅されていたとしてもだ。私を人質に取っておいて、死ぬだけで済むと思わないほうがいいぞ」


 自分から喉に剣を突きつけておいてなんだが、剣の刃が喉に触れそこが赤くにじんだとしても決して臆することなく堂々と俺のことを脅しにかけているその精神力には感服するばかりだ。


 さて、打つ手なし。これ以上この場にとどまっていたとしても向こうでは色々と柵が張られていることだろう。逃げるのがより困難になる。それに先ほどの話から考えれば、彼女を盾に中を通って行ったとしても彼女からの指示がなければ彼らは動くことはない。


「いいか、一つ教えよう。イマイシキ ショウ」


「....なんだ」


「どうして私がアランに貴様の防具を持ってこさせたか。わかるか?」


 どうして持ってこさせたって....それは....


「答えを教えてやろう」


 マズ....ッ!


 しかし、気づいて反応した時には遅かった。俺とレギナでの身長差はそれほどない。俺の方が少し高いというくらいだ、それがまずかったのだろう。


 当然ながら俺は人を剣で切ったりといったことはしたことがない。先ほど彼女の首元を覗き込んだ時に刃を当てていた部分が赤くにじんでいたのを気にしていたのか、無意識に、見えない内に彼女の首から刃を遠ざけていたらしい。


 そのわずかに空いた空間を利用し、彼女は頭をかがめて俺の顎に向けて頭突きを放った。


「グ....ッ!」


 予想外の衝撃に後ろへとたじろぐ、そしてパレットソードが完全にレギナから離れた時。その一瞬の隙をついてレギナは腰についているパレットソードの鞘を手の取り、腰についたまま逆転させ左肩を抑え込まれ、思わず膝をついてしまう。


「....っ」


「単純だ、私はお前がどんな状態であったとしても余裕で勝てる」


 万事休す、このままいけば鞘を利用されて左肩を脱臼しかねない....ん? 鞘?


『スクトゥムっ!』


 そうだ、この鞘。盾にもなるんだってことを忘れてた。


 突然俺の肩を押さえて手に持っていたはずの鞘が消えて困惑するレギナ。そして、盾に変形した鞘が左腕に装着させられ。


「ウオラッ!」


「....クッ!」


 自由の利くようになった左腕で盾を使って後ろに立っていたレギナを身体強化術で弾き飛ばす。


「っ! ガレアっ! 剣っ!」


「承知っ!」


 振り返ってみると、懐かしいあの筋肉ダルマが何やら片手剣と比べるには少し大きい剣をレギナに向かって思いっきり振りかぶって投げつけていた。


 そして投げられた先のレギナはプロ野球選手も真っ青の豪速剣を俺に盾で飛ばされながらも平然と受け止め、むしろその物理の介入により体制を立て直し、地面に跪く形で停止した。


 そして、左手に持った剣を思いっきり振りはらい彼女の持つ剣の鞘が遠心力によって飛ばされ、その剣身があらわとなる。


「さぁ、イニティウムの続きをしようか。イマイシキ ショウ」


今後は二日に1話かなぁ・・・

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