第2話 再会の色
「あの....おっしゃっている意味がよくわかりませんが....」
あれ? おかしいな。これは夢なはずなんだが....むしろそうであってほしい。
「いや、ですから僕はこの夢から醒めたいんです。だからその方法を教えて、と言っているだけなんですが?」
「....」
いや、そんな悲しいものを見るような目で見られても困るのですが....
「....あのぉ....お酒が入ってますか?」
「いや、僕未成年です」
「ミセイネン?」
はて、未成年という単語が通じていない。となるとこれはあれだろうか? 重度の幻覚障害を引き起こしていて何かとんでもないことをしているんじゃないだろうか?
「すみません、夢でもないなら、ここら辺に腕のいい精神科専門の医者はいますか?」
「セイシンカ?、イシャ?」
やっぱり通じていない。それもそうか、だってこんな美人現実にいるわけがないもんな。
「あのここだと迷惑なので、すみませんがお引き取りいただけ....」
「いや本当に教えないと....」
「ヒイッ!」
だんだん俺の目が狂気じみてきたのだろうが仕方あるまい。どうせ夢か幻なんだから好きさせろ。
「へ、兵隊さ〜ん!」
え? 兵隊?
「どうしました!」
すると、ギルドの扉の向こうからドシドシと物凄い音を立てて、西洋の甲冑を着た兵隊たちが中へと入り込んできた。
「この人・・・変なんです!」
この流れ、なんだか身に覚えがなくもない。
「墜ちろ!この変な奴!」
変なやつ呼ばわりをされた。まぁ、こんなことをやっていれば変なやつ呼ばわりされてもおかしくはないが。
次の瞬間、下腹部に衝撃が走る。おそらく殴られたのだろう。
兵隊の一撃で俺は意識が闇の中へと落ちる
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・・・ん?、この部屋は....、そうかここは....俺の部屋か....あれ、どうやって帰ってきたんだっけ? にしても相変わらず....
「殺風景だな」
.....誰かは分かった、懐かしい声がした、もう二度と聞くことがないと思っていた声がした。
「....親父?」
「すまない....」
どの口が言うんだよ....
「テメェ! 生命保険にも入らないで勝手に死ぬな! ばかやろーっ!」
「....重要なのそこか?」
「どれだけ苦労したと思ってるんだよ....」
変わらない姿がそこにある。身長が低いくせして立派に道着を着込んで、腰に日本刀をぶら下げている変わらない姿が....
あの時と同じだ....
目頭が熱くなり、だんだんと視界が徐々に歪んでゆく。
「無理するなって、何回言ったら分かったんだよ....」
「まぁ....あと10回くらい言ってくれてたら?」
「ばっかやろぉーっ!」
あぁ、この剽軽さは俺も引き継いでるんだろうな....
「翔」
「なんだよ・・・」
「すまない」
「....」
「突然こんなことを言われて混乱するだろう....だが信じてほしい」
目の前の胴着を着込んだ親父は真剣表情を作り、その重たそうな口を開き始める。
「さっきまでいた世界は、お前の夢でも、幻想でもない」
は?
「すべて、現実だ」
「だからこそ、お前には俺の教えたことを生きる術としてほしい」
「なんで、俺が....」
「運命といえばチャチなもんだが、一番近い表現だろう」
じゃあ....
「親父が死んだのも運命っていうのかよ!」
「さあな....」
「俺はどうすりゃあいいんだよ....」
「それは自分で考えろ、お前の人生だ」
視界がまた歪み、だんだん親父の顔が見えなくなる。
「親父....」
「とにかくまあ....そうだな....」
そう言って自分の頭に手を伸ばしているのは、なにか言いかけている時の証拠だというのはよく知っていた。
体から力が抜け、地面との距離が近づくのと同時にその言葉を聞いた。
「飽きるまで、まっすぐ生きてみろ」
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
夢から覚めるような感覚だ、実際は殴られたけど....徐々に視界がクリアになっていく、この状況で言う言葉は一つだろう。
「知らない天井だ....」
部屋の天井は高く、明らかに自分の部屋ではないと悟る。かといって天井が白くないことから病室でもないということは....
「....」
「そんな目で見ないでください....」
体の向きを変えるとさっきの受付嬢がこちらを不審そうに見ている。そりゃあそうだな、でもやっぱり耳が長い。
「....名前を教えていただけますか」
「....」
ですよね
「そちらこそ....」
ん?
二つの目がまっすぐとこちらを向いている。
「そちらの方が先に名乗るのが礼儀じゃないですか?」
「あ....そうですよね」
ベットから上半身を起こし、ちゃんと目を見て話をする、見れば結構美人だ。
「探求者....今一色 翔です」
まっすぐか....とりあえずやれるだけやってみるか。
続きをお楽しみにしてください