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異世界探求者の色探し  作者: 西木 草成
序章 序章の色
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第19話 鑑定の色

「いただきっ!・・・ごちそうさまっ!」


「はやっ!」


 彼女は俺の作ったおよそ三人前はあるであろう昼の残りのサンドウィッチをたった一行の間で食い終わってしまった。


「ステラっ!女の子なんだから礼儀正しく食べないと!」


「ご飯の前に理性は必要ないぞ!リーフェ=アルステインっ!」


 そう正々堂々と、マヨネーズでテカテカになった手を掲げて断言できる人間というものもまた珍しい。


「そうじゃなくて!ちゃんとお礼を言わなきゃだめでしょっ!ショウさんにっ!」


「ん?、あぁ、そうかそれは無礼なことをしたな、大変美味しかった、え〜っと・・」


「ショウです、今一色 翔」


「イマイシキ ショウ?変わったイントネーションの名前だな、あっ、そうそう、私の名前はステラ=ウィオラーケウスだ、よろしくな」


 そう言って差し出された手は前の記述通り、マヨネーズでテカッていたが、まぁ握手をした後に手を洗えばいいだろう。


「さぁて、ご飯も食べたし、で私に何をしてもらいたいんだい?」


 そう言って彼女はそばの埃だらけになっている椅子の上に、ドカッ!と座る、当然埃が舞いまくり、咳き込んでしまう、昔見たテレビでゴミ屋敷とかに住む住民の特集をしていたがまさにそれだろうと思う。


 しかし、あまり手入れはされていないがはっきりとわかる鮮やかな紫の長いストレートな髪に、前髪の間から覗く凛とした知的さを感じる整った顔が覗く、服装は若干ボロボロだがそれでも元は立派な白衣のようなものだったのだろうと想像する。


「見てもらいたいものがあるんです」


「ほぉ、にしても久しぶりだなぁ、そんなことを依頼されるのは、リーフェ=アルステインに言われてきたのか?」


「えぇ、そんなところですね」


「私のことをなんて聞いている?」


「そうですねぇ・・・よくわからない人間と聞いています」


 そう答えると彼女は、キョトンとした顔になったが、そこからいきなり大口を開けて笑い始めた、その笑い声は林の中にある家なのに、よく響く声だった。


「いやいやぁ、すまん、こういきなり素直に悪びれもせずに答える人間も珍しいもんだ、リーフェ=アルステイン、こいつは将来大物になるぞ!」


「そうですね、私もそうは思いますが、あんまり無理はして欲しくないですね」


「おっ!なんだなんだぁ!『過保護の天使、リーフェ=アルステイン』の再来かぁ?」


「っ!その名前はやめてください!、恥ずかしいですっ!」


 そうリーフェが言うなり、ステラの肩を揺さぶったり、ぽかぽかと殴ったりしている姿は、なんとなくリーフェの言ったように妹ような姉のようなという姿にぴったりだろう、しかしこっちにも用事があるのまるで姉妹のような可愛いらしい喧嘩を長々と見るわけにはいくまい。


「あの・・・そろそろいいですか」


「だいたい、そんなんでよく・・・おぉ、すまないな、久しぶりなもんでついついね、それで見てもらいたいものは?」


「これです」


そう言って、腰のベルトから剣を外し、それを近くの散らかったテーブルの上に置く


「これがかぁ・・・どこで手に入れた?」


「話せば複雑なんで、まぁ、簡単に言えば拾いました」


「フ〜、拾ったねぇ〜」


 線が細く紫がかった瞳で心底疑わしそうに見られているが事実なのだからしょうがあるまい、考え事をしばらくすると、彼女は立ち上がりテーブルの上にある剣の観察を始めた。


「この剣のことをどこまで知ってる?」


「そこまではまだ、ただこの剣の刀身に描かれている文字を読むと、剣に何らかしらの変化が起きることがわかっています」


「よし、じゃあまずその文字とやらを見せてもらおうか」


 テーブルから、まず剣を取り上げ、そしてそのまま剣を鞘から引き抜きその白い刀身と文字があらわとなる。


「ほぉ、随分と綺麗だがこれは使ったことがあるのか?」


「ええ、ただ使っても血などの汚れがまったくつかないんです」


「随分と不思議な材質だなぁ、さてさて、この文字をはと・・・」


 そう言って俺の手に握られた剣の刀身に顔を近づけてまじまじと観察を始める、おそらく2分くらいたった頃だろうか、彼女は諦めたかのように顔を上げ、こちらに向き直る。


「ダメだな、まったくどこの言語かわからん、だが少なからずわかったことがある」


 まず一つ、と彼女は華奢な人差し指を立て説明を始める。


「この剣には・・・無駄と言っては悪いがこの材質に直接的に魔力行使ができるような術式を使用している」


「・・・というと?」


 そうすると、今まで少し影を薄くしていたリーフェさんが間に入って説明をしてくれる、要約して説明すると、この世界で魔力の干渉ができない物質が鉄なのである、ゆえにおそらく鉄でできているであろう剣に魔力を流すような術式をはめ込むのははっきり言えば無駄なのだ。


「・・・ことなんです」


「でしたら、なんでこの剣には魔力が通せるんですか?」


「・・・さぁ?」


「おそらく、鉄以外の物質でできてるだろうが、さて・・・久しぶりに覗いてみますか!」


『この世の(ことわりを全て見通す(まなこを我に アエスティマーティオ』


 ステラさんが詠唱した瞬間、彼女の右目に三重の紫色の魔法陣が浮かび上がりそれがまるで対物レンズのようにピント調節しながら動いている。


「あっ!ちなみに私は紫色を持っていて、特技は鑑定と透視だよん」


「その特技を生かしてもらって、素材の鑑定とかをギルドでお願いしていたんですが、この人つまらない鑑定は引き受けてくれなくて・・・それでクビになってここで暮らしているんですよ」


「あぁ・・・」


 こいつはとんでもない、自信過剰な人間で残念な人だったというわけだ、そんな人間が今俺の剣を鑑定しているが本当に任せていいのだろうか。


「あ、その点は大丈夫ですよ、人格に問題ありきですけど腕は、というか眼に狂いはない人ですから」


「・・・あなたは超能力者ですか?」


 そろそろこの世界のコミニケーション方法について恐怖を感じてきたところで。


「なんか後ろで、喋ってるようだけど、鑑定が終わりましたぜぇ?」


「えっ、もう?」


 確か術式を使ってからものの1分しか経っていないと思うが、こんなにも早く終わるものなのか、やはり腕は確かなのか?


「そりゃあ、当然だろ?」


「どーなってんだよっこの世界っ!」


「はぁ、まず結果なんだけどな、こいつはとんでもなく高い技術力と途方もない魔術式が使用されている」


 そういった後に術式展開させたままの真剣な表情で、それはまさに鑑定士としての顔で告げられる。


「まさに、神話級と言われてもおかしくないほどの剣だということがわかった」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「神話級・・・って?」


「あぁ、言葉のまんまだ」


 そう言って手をひらひらさせて答える、しかし、彼女にはあまり驚きというものが感じられない。


「し、神話級って・・・」


「リーフェさんどういうことなんですか?」


 口に手を添えたまま固まってる、彼女に聞くことにしよう


「神話級、というものはこの世界の聖典に描かれている神器のことを指します・・・今まで発見されているものは世界の覇者に与えられると言われている、今では王の戴冠式に使われる『 神冠(しんかん』それと同時にこの世の最大の賢者に与えられるこの世の知を集めたとされる『 識杖(しきじょう』と言われるものが見つかっています、しかし、そんなものがここにあるはずが・・・」


「あるんだなぁ〜、それが目の前に」


そこで、とつけ加えて、ステラさんは俺に指をさし


「その剣のグリップに巻かれてる、皮を剥いでみたら?」


「・・・えっ?」


「私の今の目はねぇ、ものの材質の正体や、その内面にあるものを透視することができるわけで、例えば今日あなたの着ているローブ?、それの上に付けているこの剣とついていたと思うベルトが、実は神龍(しんりゅうの翼で作られているということもね」


「ちょ、ちょっと待ってステラ?、ショウさんのしているベルトが 神龍(しんりゅうの翼でできてるって?」


「あれ?そういったはずだけど?」


神龍(しんりゅうって!あれはもう200年前に絶滅したはずじゃないのっ!」


「ということは、この剣が200年以上前に作られたものだということがわかるわけだ」


 そう言うと彼女はまるでリーフェの言葉を紡ぐように話を続ける。


「さぁ、この剣は君のものだ、そして、その剣の秘密を知るか知らないかは全て君次第だ」


「・・・グリップ、剥がしてみます」


 ちょっと待てと、ステラに言われ、そこから持ってこられたのは小さなナイフだった、それを手渡されて、これを使えと目で言ってくる。


 グリップ自体はそれほど丈夫な皮ではなかったので簡単に剥がせるだろう、問題なのは、いったいこの下に何があるというのかだ、小さなナイフはグリップの皮へ何の抵抗もなく刺さり、そのまま縦へと切り開いてゆく、そして全ての皮がはがれた時に。


その何かが姿を表す。


「パレット・・・ソード?」


あらわになった金属のグリップに深々と彫られていた文字だった。    

みなさんよいお正月を!


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