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異世界探求者の色探し  作者: 西木 草成
第4章 黄の色
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第156話 新たな出だしの色

 ギルドの外へ出る。相も変わらず快晴ではあったが、全体的に見る街の風景はどこか灰色っぽい。


 ギルドの前は、そこそこに広い通路だ。先に立ち止まり背後からぞろぞろついてくるギルドパーティーを見つめていた。あっという間に周りを取り囲んだ総人数は、ザッと20人ほど。全員、手に武器を持って構えている。そして、パーティーのリーダーを務めているとか言ったバールと名乗る男。そいつは、全長2メートルほどある長剣を装備していた。


「....さてと」


「おい兄ちゃん。止めんのなら今のうちだぜ? そんなヒョロイ体をリンチして楽しむ趣味はねぇんだ。おとなしくテメェの報奨金の一部をこっちにわたしゃあ怪我をしなくて済むんだぜ?」


 汚く唾を飛ばしながら威圧をかけてくるが、こいつらは何にもわかっちゃいない。単に、金を渡してどうこうの問題だったらこんな大ごとにはせずにするつもりはなかった。


 自分の住んでいていた土地を、思い出の詰まったあの場所をバカにしたこいつらが許せない。


「....いいえ、僕はここであなた達を徹底的に叩き潰します」


 その瞬間、背後から何かが迫ってくる気配を感じる。とっさに右手に持ったパレットソードの柄を下に向けて勢いよく押し下げると、起き上がった鞘の先端が背後から迫ってきた男の股間を思いっきり強打した。


「きゅ....っ!」


 こいつは痛かっただろう。


 手に持っていたナイフを地面に落とし、そのまま股間を押さえたまま男が地面で悶絶をし始める。気のせいか周りの男たちは無意識に内股になっている。


 そして、その男に追い打ちをかけるように悶絶して両膝をついている男の顔面に身体強化術を乗せた蹴りを思いっきり打ちかます。後ろの方へと大きく吹き飛ばされた男は取り囲んでいる集団の中へと逆戻りした。


「て....っ」


「不意打ち仕掛けたのはあんたらだろう。来いよ....全員まとめて相手してやる」


 その瞬間、一斉に雄叫びをあげながら飛びかかってくる19人。


 パレットソードの持ち手を捻る。


「サリー、火を貸してくれ」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 吹き荒れる炎を纏った刀を振り回し、周囲の男どもを一掃してゆく。実際に殺しているわけではない。全員峰打ちで気絶をさせているわけだが、刀で打たれた後にはひどい火傷を負っている。まぁ死んでいるわけではない、一生の傷はつけたが。


『今一色流 剣術 氷雨』


 全身に激しく打ち付けた刀は、相手のつけている鎧や防具を砕いて破壊をした。そして、防具をなくした男たちの顔や腹に思いっきり刀を叩きつける。


 そして、刀で受け止めた剣は、剣の方がその触れた部分から溶け始め振り抜くと同時に剣が真っ二つになるのだから戦っても勝ち目がないのは見て分かるとおりだろう。


『今一色流 剣術 氷雨<雹>』


 六連撃、頭、胴、足と受けた男はそのまま崩れ落ちる寸前、胸の部分を思いっきり蹴りつけ吹っ飛ばす。その先はちょうど今まさに隙を狙って切りかかってきた二人組の方だ。


 突然飛んできたものの正体に驚きひるむ二人。


 すかさず、腰に下げた赤い鞘を左手に持ち刀と同時に振るう。


『今一色流 剣術 蜻蛉とんぼ


 決して退かず。突進技としての両手持ちである。


「くっ....」


「まぁ、あんた一人を残すようにして戦ったんだ。周りの奴らと同じように、簡単に気絶できると思うなよ」


 背後には、すでに頭を殴りつけて気絶した二人。死屍累々とはこのことだろうか、死んではいないが。周りには地面に突っ伏して唸っているパーティーメンバー。そしてその様子を見せつけられたリーダーが大剣を持ったままじりじりと後ずさりをしている。


 刀を振り払う。その瞬間、地面にかすった刀の先端から火花が飛び散り炎が吹き出る。


「覚悟しておけ」


「う....ウォオオオオッ!」


 大剣を構え雄叫びをあげるバール。


 だが、大剣デメリットは読みやすさにある。現在横向きに大剣を構えたまま突っ込んで行くが、となると次にくる攻撃は


 大ぶりの横薙ぎ。


「ハァアアッッ!」


「....」


 そして、予想通りの横薙ぎ。受け止めはしない、軽くその場を飛び上がり剣をかわす。そして、ゆっくりとゆっくりと歩きながら近づいて行く。その度にジリジリと後ろへと下がるバール。


『雷鳴よ 黄の名の下に 吼えよっ!』


「っ!」


 振り抜いた大剣を左手に構えた瞬間、とっさにかざした右手から発した雷撃が発し地面を抉りながら飛んでくる。とっさに刀で防御を取るが、雷撃の当たった瞬間、そこから激しい火花と火の粉が飛び散り始める。


「ハァアアアッッ!」


「チィ....っ!」


 右手をかざして電撃を浴びさせているバールが、大剣を構え直しこちらの方へと近づいてきた。自分はといえば突如発生した火花に圧倒され目を開けることができずに、必死に防御を固めていた。


 だが、これが冒険者ランクSの実力かと思うと、ガルシアみたいなギルド長を戦っていた自分には物足りないといった感じだ。


 火花が散る中、そのまま刀を防御の構えをとったまま、駆け出してゆく。攻撃をしようとしていたバールは突如間合いを詰めてきた自分に反応することができない。


 大剣の弱点は、間合いに入られた時の反応に遅れるということだ。


『今一色流 剣術 雨樋あまどい


 電撃を受けながら、左手で持った鞘で一気に相手の喉を突く。自分が今、前を見れないのと同じように、相手も刀から飛び散る火花で相手を見ることができない。ゆえに、刀の下から出てきた鞘の先端に気づくことなく攻撃ができた。


 防御をしながらの鞘を使った攻撃を行う剣術である。


 喉を突かれ、思わず大剣を手放してしまったバールを一気に叩く。


『今一色流 剣術 氷雨<雹>』


 六連撃。


『今一色流 剣術 蜻蛉』


 首に鞘、刀の峰を両側に叩き込む。


『今一色流 剣術 翡翠』


 鞘に収めた刀で、思いっきり鳩尾に突きを叩き込んだ。


 後方に大きく吹き飛んだバールが地面に転がり、唸りながらそのまま気絶した。炎を纏う刀を納め、サリーとの接続を解除した。


「おい、なんでこんなクズども倒すために俺の力を使った。答えろクソガキ」


 目の前に現れたサリーは大層ご立腹だ。だが、これには理由がある。それはたった一つだ。


「なんでって、峰打ちができないじゃん。普通の剣を使ったら殺しちまうだろ?」


「別にいいだろうがよ。こんな奴ら、死んだところで喜ぶ人間の方が多いんじゃないか?」


 そう言って、サリーが周りを見渡すと、そこには家の窓から一部始終を覗いていた人々が目を丸くしてこっちを見ていた。よく見れば、この通りに並んでいた家の人々は窓から顔を覗かしてこっちを見ていた。


 この街の活気がなかった理由は、こいつらが原因だったのだろう。


「まぁ、たった一人にここまでボコボコにされたんだ。これからはこの街では大きい顔ができなくなるだろう。周りの人が証人さ」


「甘いやつ。いつか死ぬぞ?」


「死なないよ、まだね」


 確かに、サリーの言う通りこんな奴らは死んだどころで悲しむ人間はいない。むしろ、喜ぶ人間の方が多いだろう。だが、生きてこその辛さというものがある。それは死ぬよりも恥ずかしいはずだ。周りの人間は当然、そして噂は噂を呼んで、たった一人の冒険者に壊滅させられた最弱のパーティーとして、ある意味では有名なパーティーになるかもしれない。


 そうなったら、彼らの冒険者人生も終わりだろう。


「あ、あの....」


「あ、」


 ふと、後ろの方を見るとギルドの方では先程おどおどした様子だったギルド職員が先程の薬草の報奨金を手にして、怯えた目でこっちを見ていた。


「すみません、騒いじゃって。もう僕は行きますから」


「は、はい....その....ありがとうございました....」


 怖かったのだろう。それもそうだ、あんなチンピラまみれのところでこんなか弱い女の子一人で受付をさせられていたのだ。おそらく今日一日だけの話ではないだろう。


「こ、これ。薬草のお金です」


「ありがとうございます。すみませんが、お名前は?」


「え、あ....ヘリスです.....」


 お金を受け取り、彼女からギルド証を受け取った。やはりその手は震えている。まぁ、名前なんて聞いたんだ、ちょっとは驚くだろう。


「ヘリスさん。あなたみたいな女性をこんなところで一人接客をさせるギルドなんて早く辞めたほうがいい。イニティウムはいいところです、悪いことは言いませんから」


「へ? それは....?」


「では、これで」


 優しく微笑んだ後、彼女に背を向けてローブのフードを深くかぶり、魔力を流す。その瞬間透明化が発動。自分はその場から姿を消した。後ろの方では突然姿を消した自分の姿を探そうとしてキョロキョロしているヘリスの姿が目に入った。


 そう、イニティウムはいいところだ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「あ、カケルさんっ!」


「すみません、待たせてしまいましたか」


 塔のそばに行くと、ハンクが自分の姿を見るなりニコニコして手を振って迎えてくれた。後ろの方には新しい馬に引かせた馬車が待機させてある。


「新しい馬見つけたんですね」


「えぇ、これからの新しい相棒ですわ。そんじゃ、報酬の話をしますか」


「あ....その件なんですけど....」


「どうか....しました?」


 突然の話に曇り顔になるハンク。そんな彼の前に差し出したのは先程薬草をギルドで換金して得た金だ。


「僕に渡す報酬と、プラスしてこのお金で僕を王都に連れてってもらえますか?」


「え....」


 突然の話に動揺したハンクは、固まった表情のまま差し出した金の袋を受け取る。そしてようやく頭の整理がついたのだろう。すぐさま明るい表情になり、二つ返事で了承してくれた。


「あと、見せてくれた洋服は....厚かましいですけどいただけませんか?」


「いいっていいって、まぁ護衛料としてあげるよっ! よし、さっさと乗った乗ったっ! ちょっと寄り道が多いけど王都に行くぜっ!」


 こうして、商人のハンクと供に王都へと行く道筋は整った。


 あとは、道中なにもないことを祈るばかりである。


さて、新しい仲間を加えいざ出発っ!


明日も更新頑張りますっ!

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