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異世界探求者の色探し  作者: 西木 草成
第4章 黄の色
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第153話 お人好しの色

「た、助けてくれっ!」


 男性は肩から血を流して必死に助けを求める。辺りを見まわそうにも、そんな時間はないように思われた。すぐさま、助走をつけて今剣をふりおろさんばかりのゴブリンに飛び蹴りを食らわす。そしてすかさず剣を振り抜き、辺りの魔物たちを威圧する。


「大丈夫ですか?」


「あ、ありがとうっ!」


「あなたは馬車の荷台の中へ。ここはなんとかします」


 無言で頷き、怪我をした男性は荷台へと避難した。


 さて....と。


 威圧をかけているせいか、急に飛びかかるような輩はいない。見たところ、20はいるか。手にはボロボロの剣、あとは盾といったところか。ここまではまだいい。問題は、人型ではない魔物が混じっているということだ。オークの一匹が、手に鎖を巻いて、まるでペットのようにして二匹の狼のような魔物を待機させているのである。


 おそらく、あいつがこの集団のリーダーだろう。なんだか、身につけている装飾も多い。


 すると、威圧を解いていないのにもかかわらず。ゴブリンの一匹が飛び出してきた。身長が低いため、下半身への攻撃が主に行われるわけだが、至極読みやすい。


 足元に切りかかってきたゴブリンの細い腕を一刀両断する。肘から先がなくなったゴブリンの頭を蹴り飛ばし、再び固まったままの状態の集団へと送り返した。


「....来いよ」


 一気に頭に血が上った魔物どもは、集団で襲いかかる。


 持っている剣は右下で低く、そして迎え撃つようにして体の重心も低く構える。


 一瞬。


『今一色流 剣術 時雨』


 後方に散らばる、魔物の残骸。


 剣にべっとり張り付いた血を振り払う。そして、横からやってきたオークの斧を躱すのと同時に、剣を上に振り上げるとオークの手首から先が消えていた。目を丸くしているそんなオークをお構いなしに、足の健を切断。膝から地面へと崩れ落ちていったオークの首を切断。


 続けざまにオークの背中を飛び台にして空中で一回転。


『今一色流 剣術 鉄砲百合』


 遠心力のかかった剣は、オークのリーダと思しき魔物の脳天をかち割る。


 飛散した血しぶきは地面でビチャビチャと音を立てながら散らばって行く。しかし、死んだオークの手から離れ、狼の魔物はジャラジャラと鎖を引きずりながら真っ先に地面へと着地した自分へと襲いかかる。


「チィ....っ」


 向かってきた二匹の魔物の片方に向かって剣を投げつける。そして、投げつけた剣は狼の眉間へと辺り、そのまま地面を滑るようにしてその場で息絶えた。しかし、もう一匹は隣で一匹死んだのにもかかわらず、勢いを殺さず向かってくる。


 とっさに右手に魔力を込める。


 狼が空中で跳ね、そのでかい口が今にも自分の頭蓋に食いかからんと大きく開く。


 そして、魔力を込めた右手は、そんな大きく開かれた下あごに思いっきり右フックをかましてやった。


「ギャンっ!」


 激しく、外れた下顎と共に地面に転がっていった狼はそのまま地面に落ち、力尽きた。


 戦闘終了。


 辺りを見渡すと、リーダー格が倒れたことによって他にいたゴブリンどもは逃げていったようだ。


 ホッと胸をなでおろし、剣を一振りして血を払うと鞘に収める。やっぱりこ戦闘が終わった後の喪失感はなかなかに拭いがたい。


「さて....と」


 馬車に避難した男性は無事だろうか。


 曇り空の下、湿った地面を歩き馬車の方へと近づく。馬車を引っ張っていた馬は....残念ながら足が一本欠けた状態で死んでいた。


 馬車とは言っても、荷物を運搬するようなもので、人が乗るようなものではない。俗に言うキャラバンが引いているような馬車と言えばわかりやすいか。馬車の本体にはそれと言って目立った傷はなかった。


 おそらく、馬車を引いていた馬を狙った襲撃だったのだろう。


「大丈夫ですか?」


 馬車の後ろの皮でできたカバーを剥がすと、肩を押さえた状態の男性が涙目になりながら端の方で震えていた。


「ひっ!」


 声をかけた瞬間、体を縮みこませて軽い悲鳴を上げられた。よほど怖かったのだろう。それにしても、年齢は自分よりちょっと上くらいか?


「だ、大丈夫ですよ。魔物は全員追っ払いましたから」


「へ....え? あの魔物を....君が?」


「はい、外に出ていただければわかりますよ」


 恐る恐る馬車の外へと出てきた男性の手を取りながら、馬車から降ろしてあげた。そして、先ほどまで戦闘があった場所へと連れて行くと安心したのかわからないが、深く息を吐き出して、地面に両膝をついた。


「よかった....」


「えぇ....ですが....馬が....」


 そう、肝心の馬車を引くための馬が文字通りお釈迦になってしまった。これでは馬車を動かすことはできない。


「....っ! 君っ! 冒険者だよねっ!」


「え? まぁ、はい。そうですけど....」


 突如、大きな声をあげて自分の膝にすり寄ってきた馬車の男性は本当に今にも泣き出しそうな表情でこっちを見上げてきた。


「君が代わりにこの馬車を引いてくれないかっ!?」


「....はい?」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 自分という人間は本当につくづくお人好し遠いうか、アホ、というか。馬鹿というか。結局、彼の眼差しに耐え切れずその話を請け負ってしまった。


「いやぁ....助けてもらって悪いね」


「いえ....あはは....」


 あんまり人と関わりたくないのだが....


 彼は、これを冒険者側の依頼として馬車の荷引きを頼んできた。となると、当然ながらそこには依頼料が発生するわけであって、ようはタダではない。まぁ、肩を怪我している彼に馬車を引かせるわけにもいくまい。それに、魔物がいつ戻ってくるかわからない。


 そして現在、体全身に魔力をほとばしらせながら本来は馬が引くべき重量の馬車を引っ張っている。


「隣町に着いたらちゃんとお礼をするから」


「はぁ....」


 あの後、死んだ馬は丁重に解体して食べられる部に切り分けた後、埋葬してやった。そして、自分が馬の代わりをするのは隣町という条件らしい。そして、さすがに能力を使っての治療はあまり人に見られたくないため、応急処置程度で男性を治療した後、出発をしたというわけだ。


「それにしても冒険者のお兄さん、強いんだねぇ。剣も着ているローブも一級品だ。ランクはSSかな?」


「いえ....まだ、Aランクなんです」


「Aランク? 本当かい、そりゃ」


「まぁ」


 この男は商人なのだろう。話し方も人懐っこい上にこっちも話してい悪い気分ではない。となると、今後ろで積んでいる積荷の正体は彼の商売道具なのだろうか。


「僕の名前はハンクって言うんだ。お兄さんは?」


「え、あぁ。カケルって言います」


「カケルさんか、ホォ....聞かない名前だねぇ。出身はどこ?」


「しゅ、出身ですか....出身は....イニティウムです」


「イニティウムっ! いいねぇ、最近魔物の襲撃があって大変だったって聞くけどあそこはのどかで、人も親切だし。それに美人が多いんだよなぁ」


「そう....ですね、はは」


 よく喋る人だ。


 肩の痛みは何処へやらである。


 だが、楽しそうに自分の思い出深い場所を話しているのを聞いている気分は決して悪いわけではなかった。


「でも、なんだか王都の張り紙だらけで。あそこの街の出身の人かわからないけど....確か、イマイシキ ショウ? だっけか」


「....」


 まずい。


 気づくべきだった。


 イニティウムに行ったことがあると言った時点で逃げるべきだった。


 突然怖くなり、首を徐々に後ろの方へと向けると。


 案の定、こっちを不審な目でじっくりと、じーっと見ている。


 まずい、バレた。


「でも、お兄さんカケルって言ってたしなぁ....まぁたまたま似てるってだけか。ごめんな、変な疑いかけちゃって」


「い、いえ....」


 ....こう言ってはなんだが、この人が鈍くて助かった。


 だが、油断はできない。もし、何か怪しいそぶりしたらすぐさま逃げよう。逃げ切れる自信はある。


 そして、馬車をゴロゴロ転がしながら山道を進んで行く。もともとあまり使われない方のルートだからか、人とすれ違うことがない。


 もしこんな姿を見られたら、それこそ非人道的行為というか、奴隷がいるのかどうかはわからないがまさにそんな感じである。


「お兄さん、魔力は大丈夫かい? 何もできねぇけど、休憩入れようか?」


「いえ、まだまだ大丈夫ですよ。ちなみに....隣町までどのくらいかかります?」


「そうだなぁ.....大体このペースで、二日かな?」


「....」


 特段急いでいるというわけではない。でも、できることならば一日でも早く彼女のそばにいたい。でも、乗りかかってしまった船だ。ここ隣町まで行くまでの辛抱だろう。


「ハンクさん、何をやっている人なんですか?」


「ん? 僕はね、いろんな街や国を渡って、自分の商品や、その街の珍しい商品を売って行く商人さ」


「そうなんですか、いろんなとこを行かれるんですね」


「うん。主に人の服とかを扱ってるかな。民族衣装、正装、冒険者の服。もう何でもござれだよ。布は軽いし、持ち運びに便利だからね。商人にはもってこいの商品さ」


「なるほど」


 確かに、服とかだったらかさばらないし、軽いから持ち運びに便利だ。それに、日用品で消耗品だし、売れないことはないだろう。


「もしよかったら、カケルさんにも一着やるよ」


「いいんですか、ありがとうございます」


「いいって、こう見えて結構儲けてるんだ。そうだなぁ....カケルさん珍しい髪の色してるね。真っ黒でいい色だ。となると、逆に白とか赤が似合うかなぁ。でも....やっぱり赤だ。うん、赤だなっ!」


 後ろで勝手に話を進めているハンクだが、なるほど。自分の髪の色は珍しいのか。確かにハンクの髪の色は茶色だし、真っ黒の髪と言ったらレギナ以外見たことがない。黒い髪と言ったらアジア人とか黒人とかを思い浮かべるのだが....


 そんなことを考えながら歩いていると、徐々に日が落ちていった。そして、完全に暗くなったところで、馬車を森の端に隠して野宿を始める。


「痛てて....」


「ちゃんと掴まって」


 肩を貸しながらハンクを馬車から降ろす。やっぱり応急処置では足りなかったようだ。命に関わるようなことはないだろうが、辛そうにしている顔はあまり見たいものではない。


「そんじゃ、食事の準備をしますかね....荷台に干し肉が乗ってるから。取ってきてもらえるかな」


「いいですけど....大丈夫ですか?」


「いいって、大丈夫だよ。こんなんで弱音を吐いているようじゃ商人なんてできないって」


 そうは言っているが、その顔は辛そうだ。言われた通り、荷台に乗っている木箱の中から干し肉を見つけ出し、それを取り出して行く。


「あぁ、ありがとう」


「まさか....食事って」


「そう、これだけだよ」


 .....本当に自分ってお人好しだと思う。


さて、新キャラのハンクくん。


近々、有人くんの絵も上がるようですシィ?


明日も、張り切っていっきましょーっ!

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