Mの脅威
「いつもなら、素振りから模擬戦というメニューなのだが今日はあの学園から生徒が来ているそうなので特別に私とその生徒で模擬戦をすることとする! 他の奴らは見ることも訓練の内に入るからしっかりと見ているように。じゃあルディア前に出てこい。」
アリウシア様達に連れられて来た大きなコロッセオのような闘技場で始まった此処で俺の初めての授業は、どうやらバトル大好きと体で体現している様な教師との模擬戦らしい。
周りの生徒も、また始まったとか言っているのでこれはよくある事なのか?
でも苦笑いで済んでいるので嫌われてはいない様だ。
「ルディア様、頑張ってくださいね。応援しています。」
「はい、勝ってみせますとも。」
隣にいたアリウシア様がそう笑顔で言ってきたので俺はそれにサムズアップで答えて教師が待っている所へと向かう。
「噂の聖魔の力、存分に見せてもらうとしよう。 本気で来いよ。」
前へと出てきた俺を見て剣を抜き本気で来いと言う。本気か〜無理だな。俺の本気に耐えられるとは到底思えない。 下手したらスキル抜きのただのパンチが一撃必殺の奥義になりかねないからな。敵には別にいいんだけど教師にやっちゃうとな〜
俺は念のため確認する。
「確認しますけど本当に本気でいいんですか? 」
「あ? ああ本気でこい。」
軽く本気で来いとか言いやがって俺はこめかみが引きつるのを感じながら俺はもう一回念のために聞く。 みんなには本当に好かれている教師らしいからな。
「本当に本当ですか? 」
俺が好意で念のために聞いた質問に何らかのスキルを発動した教師が俺の後ろに回り込み首筋に剣を当ててくる。
「くどいぞ! もしや怖気付いたのか? やはり、噂は噂。本当は大した力など な!? 貴様、傷が治っているだと!? 」
このクソ野郎。 そんなに見たければ見せてやるよ。後悔するなよ!
「分かりました。 見せてあげましょう、僕のフルパワーをフフフ 」
「行くぞレヴィ【顕現せよ我が力、世界を恐怖のどん底に叩き込め、魔剣レーヴァテイン】」
(うんまあ今回は珍しく人に気を使えたのにね。残念だったわね。)
俺が魔剣召喚をする言葉を唱えると、胸に銀色の魔方陣が浮かび上がりそこから魔剣の柄が出てくる。
それを俺は掴み取り引き抜く。
「【観測眼】 【身体強化】 【聖具召喚lv.5】 」
目が金色に変わり、体がキラキラと輝いて最後に全て白金に輝く鉱物で造られた聖具を纏う。
全力という事で最強の聖具を召喚する。多分今の俺なら魔族と何十体と対峙しても傷1つつかないで全滅させる事ができる自信がある。 まあ傷がついてもすぐに治るけど。
「聞きましたからね。全力を出していいかって。」
空間が軋むほどの魔力を迸らせながら俺は教師を睨む。
「ああ、ああ! 此処からでも強さの波動が伝わってくるぞ! 【身体強化】 【剣身一体】
【魔闘技】 」
しかし、その教師は俺の姿を見てなぜか悶えていた。 へ、変態だ。
なんか寒気がするので、軽めに一撃を叩き込んでKOで終わらせよう。
そうと決まればもはや空間と空間を移動したかの様な速度で迫り胸に人差し指でかる〜くチョンとする。ふざけているように見えるかもしれないがコレが人に対してはちょうどいいくらいなのだ。
「グハッ!! 」
ほら教師の人もまるでトラックに弾き飛ばされたかのように闘技場の壁まで一直線に吹き飛ばされてめり込んだ。だから言ったのに人の話はちゃんと聞かないと、と思っているとこの観測眼が驚くべき未来を捉えた。
なに!? あれを受けて立ち上がれるのか? 本当に人間か!?
(貴方それを言うのね。)
いや実際にあれを受けて立ち上がれるなんておかしいだろ!
(ええおかしいわ。 ただの指チョンでその威力を出せるのはおかしいわ。)
もうレヴィがうるさいので無視する。俺とレヴィが話している内にフラフラと教師が立ち上がった。ゾンビかよ。
「いい一撃だった。 体の奥にくる響いてきてジンジンとしていい気分だ。ハート撃ち抜かれたみたいだよ。」
そりゃあ胸に攻撃したからな。
「だけど私はこの快感に負けはしない!打ち勝ってみせる! 」
「‥‥。」
拳を握りしめそう宣言する教師。
それを絶句して見つめる俺。
しばらくお互いに沈黙が続き俺がその静寂を破る。
すっと手を教師に翳し、重力を掛けた。
ズゥゥゥゥゥン!!
「な!? まだこんな技を隠していたのか! はぁはぁ、 教師として負けられん! 」
はぁはぁと教師は鼻息荒くそう言ってくる。
いやいやその時点で負けてるから! 教師として負けてるから!
しかし、この人マゾだ! 何で鼻息荒くしたおっさんの顔を見なきゃいけないんだよ! しかも俺の攻撃でそうなっていると思うと鳥肌が立つ。
「この、押しつぶされる感覚、いい! はっ!? いや良くない! 私はまだピンピンしているぞ! お前の力はこの程度か! 」
途中で取り作っても無駄だから。俺を期待する目で見てる時点で終わりだから。
俺は早く気絶させようとゴミを見るような眼差しを向けながらさらに重力を掛ける。
「教え子にそんな目で見られながらのこの重圧! ここは天国、か ガクン」
本当に天国に送ってやりたいが仕方ない。
しかし、別の方向でここまで俺の心にダメージを負わせるとは世の中には恐ろしい敵もいるんだなと戦慄するルディだった。
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