久しぶり王都
ゴトゴトとここ2ヶ月で慣れた馬車の揺れを体全体で感じながら遠く見えてきた懐かしの王都を見つめる。
この2ヶ月は俺のルディア教拡大計画を立ち寄った都市で魔物を退治したり、攫われた貴族の令嬢を助け出したりとしながら着実に進行させて行った。今ではかなりの規模を誇る宗教団体へと成長したと思う。まあ、2ヶ月だけなので俺が満足するには程遠い。
王都では‥‥やめといたほうがいいかなぁ? そこはおいおい考えよう。
しかし、王都は7年と数ヶ月ぶりだな。 俺がみんなと召喚されてから殺された、転生するきっかけとなった都市。俺は必ず復讐を成し遂げてみせる。
頬杖をつきながら王都を見て拳を握りしめ新たな決意をしていると、アイリスが腕に抱き着き話しかけてきた。
「ルディ、王都が見えてきたね。 王都には1ヶ月はいるんでしょ? いろいろ回ってみようよ。ルディと回ってみたい所があるんだ〜 」
「そうだね、時間があったら回ろう。 美味しい所知っているんだ。」
あの焼き鳥は絶品だった。是非アリアとアイリスにも食べさせてあげたい。
「ほう、ルディア君は王都に行った事があるのかのう? 」
俺がアイリスにそう言っているのを聞いた学園長が聞いてくる。
あ、迂闊だった〜! この歳で王都二回目って異常なんだよな、この世界では。
どうしよう。 父さんに聞いたことにしようかな?
まあ、父さんが知らないことについては早くもボケが来たということで片付ければ良いか。
「父さんが自慢話に何処何処が美味しいと何度も話していたんですよ。それを覚えていただけです。」
「ほ〜う そうかの。」
「そうですよ。」
「ホッホッホ 」
「フフフフ 」
やっとこのクソジジイとの探り合いが終わると思うとホッとする。
この人は何かと俺を探ろうとして来るので話を逸らしたり、別の物に気を逸らしたりとかなり苦労した。もう精神がゴリゴリと削れるのだ。 働いたことはないがサラリーマンの苦労の一端を体験したと思う。
「ところでアリアはどこか行きたいところはある? 」
俺はクソジジイから目線を外しアリアに目線を向けて話しかけた。
永遠とクソジジイと見つめ合っていたくない。
「ん〜 そうですね〜 」
俺に聞かれたアリアは編み物の手を止め頬に人差し指当て悩む。
かわいい。 俺のこの2ヶ月で削れた心が癒されるようだ。
「あ! 坊っちゃまと一緒にスイーツが食べたいです。」
そうか、アリアもアイリスとセットで連れて行こう。1人1人連れて行きたいけど、アイリスの方が納得しないしな。
「分かったよ。 行ってみようか。」
「はい! 」
俺と一緒に行くことが嬉しいのか輝くような笑顔だ。
俺も、自然と笑顔が綻ぶ。
「オッホン、そろそろ王都に着くぞい。 準備しておくように。」
俺とアリアとアイリスがキャキャと戯れていると、学園長が大きく咳払いをしてそう言った。もう着くのか、そろそろ準備するとしよう。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
予め王国が取ってあったという宿に馬車を預けた俺達はクソジジイは王城に到着の知らせを、俺とアリアとアイリスは王都の散策だ。
「すごい賑わいですね。 私王都に来たのは初めてで目が回りそうです。」
アリアは通りの人混みを見て頭を押さえる。
確かにこれより凄い人混みを体験している俺からしたらなんてことないかもしれないけどそうじゃない人からしたらそうなるか。
「あっちのお店行ってみたい! 」
そう言ってアイリスは通りの反対側にある店を指差す。それを見て俺は冷や汗を流し始めた。何故ならアイリスが指差した店はランジェリーショップだったからだ。
何故そこ!? と言いたい。隣にお人形屋さんがあるでしょう。
「ん、ん〜 あそこはまだ僕たちの年齢じゃ早いかな〜 アリアくらいにならないと。」
アリアを見てそう言うとアイリスは自分の胸を触りとんでもない事を口にする。
「でも、最近おっぱいが膨らんできて‥‥」
「ブフッ!? 」
な、何てことを言うんだ。 思わず吹いちゃったじゃないか。
でもそれは、必要なのか? わ、分からん。 いや知っていたら知っていたで色々問題だけどさ。
あと、こっちに振り返った奴覚えたからな。
「そ、そうなんだ〜 アリアパス! 」
「え!? パスと言われましても‥‥。ふぅ、分かりました。レーティシア下着は‥‥」
アリアがアイリスに下着について色々と教えている。 まるで姉妹のようだ。
しかし、俺はどうすればいいんだよ。 隣で下着の話をされて物凄い恥ずかしいんですけど。
(貴方も混ざれば? やっぱり下着ってロマンんだと思うんだとかね。)
ふざっけんな! ただでさえ幼女マフラー何てふざけた2つ名までついてるんだぞ。
ここで、俺が混ざってみろ? 変な方向ジョブチェンする事請け合いだ。
そう、幼女マフラーとは1ヶ月ほど前に訪れた都市で知った俺のクソ不名誉な2つ名だ。いつ出来たのか全く心当たりがない。
いや、自分自身で記憶を封印しているのか?
「ルディ、ルディってば。」
俺が顎に手を当て考え込んでいると、体を揺すられる。
「ああ、なにアイリス? 」
「早くいこ! 」
俺が顎に手を当てたまま、聞くと腕を引っ張られる。
「え!? ま、まさか‥‥。」
ギギギと首をアイリスの進行方向に首を向けると、さっきのランジェリーショップがあった。 ま、まじかよ。
「ルディどんなのがいいか教えてね? 」
「坊っちゃま私もお願いします。」
そう言ってアリアはアイリスに捕まえられている腕の反対側にピタリと張り付く。
た、退路を断たれた。 何とか抜け出そうともがくが無意味に終わる。
どうやら非力な俺にこの包囲網を突破する事はできないようだ。
俺が抵抗している間にも、ランジェリーショップの目の前に到着したようだ。
「さあ坊っちゃま行きますよ。」
「ルディ行くよ。」
そう言って俺を悪魔の館へと連れ込もうとする。
やめて、お願い! 変な2つ名がつくから! もう欲しくないんだよ! まって!待っててばァァァ!
イヤァァァァ!!
結局、ルディの心の叫びは届く事なく長々と下着を選ばせられるのだった。
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