親近感
「俺が言うと思っているのか? 」
下を俯きそう言うジャック。声に少し怒気がこもっている。
「言ったほうがいいと助言しておくよ。 痛い思いはしたく無いだろう? 」
俺はそれに対して目に殺気を込め忠告する。
拷問してもいいが、あまり時間を掛けたくない。他にあるだろう隠れ家も回らないといけないからだ。
「ククク、アハハハハ!! 俺に恩人達を売る趣味はねぇ! 自爆プログラム起動! 」
だがジャックは俺の殺気を元のもせず笑い出し、突然顔を上げ剣を自らの腹に突き刺した。
するとジャックを包んでいた真っ黒な鎧と、剣が輝きだす。
クソ! 面倒な事しやがって!
「チッ! 」
「お前らごと道ずれだ! 」
口から血を流しながら此方をあざ笑うようにニヤリと笑う。それを見た俺は急いでジャックを封じ込めるように強めに重力を掛ける。 これで大丈夫なはずだ。
俺がそんなことをやっている間にも光はドンドンと、大きくなって行きやがて爆発した。
ドゴォォォン!!
ジャックの自爆は此方に被害を及ぼすことなく終わった。俺の重力を破るほどの威力はなかったようだ。
俺は掛けていた重力を解く。 立ち込めていた煙が晴れると、そこには地面黒く焦げ、抉れているだけでジャックの死体はどこにも無かった。
「自爆までしてくるとはな。 ヴィクティムについて聞きたかったんだけど。」
俺が頭を掻き、そうゴチるとアイリスが怒りのオーラを迸らせ始める。
「最後までルディに迷惑かけて死ぬなんて許せない。」
ジャックがいた場所を凝視して感情が感じられない底冷えする声でそう言うアイリス。
アイリスをこのままにしてもいいがまだやる事があるので宥めるとしよう。
「まあまあ、アイリス。 いまは死んだ奴のことは置いといて、あっちでコソコソと逃げようとしているお頭達に他のアジトの場所とか色々聞こう。」
俺は抜足さし足で出口にコッソリと向かっているお頭達に振り返り、笑いかける。俺のステキ笑顔を見たお頭達は顔を引きつらせた。
「「「ひっ! 」」」
「逃げれると思ったんですか? あなた達にも言いますが痛い思いしたくなかったら僕の質問に素直に迅速で答えたほうがいいですよ。」
俺は指をゴキゴキと鳴らしながらそう忠告する。 すると、アイリスがくいくいと俺の袖を引っ張ってきた。何だろうか?
「ねぇ、ルディ私がやっていい? ルディの役に立ちたいの。 」
アイリスが無邪気な笑みを浮かべそう言ってきた。
お、おう。 この子本当にやりそうだな。でも、そんな必要はなさそうだ。
なぜなら、アイリスの言葉を聞いたお頭達は顔を真っ青にしてガタガタと震えているからだ。
でも、もう少し恐怖を煽っておこう。 嘘を一切吐けないようにするためにな。
「う〜んそうだね。 少しずつやるんだよ? すぐやったらダメだからね? 」
俺は口元に凶悪な笑みをわざと浮かべそれを隠すように口元に手を当て、アイリスにそう忠告する。
勿論お頭達には笑みをチラッと見えるようにした。
「い、言います! 言いますから! どうか殺さないで! 」
「じゃあ他の盗賊の隠れ家とヴィクティムに知っている事について全て教えてくださいね。」
俺が、口元に当てていた手をどけ、そう笑いかけるとお頭は淀みなく答え始めた。
「はい! 他の隠れ家はここを除いてあと2つあります。 ここの森の中にある他の洞窟を使っていると聞いています! ヴィクティムについてはただの人身売買組織としか聞いていません、ジャックさんはヴィクティムから俺たちを育成するために派遣されたって言っていました。」
あと2つあるのか。 しかし盗賊は洞窟が好きなのな。 全ての隠れ家が洞窟とは。
しかし、ヴィクティムについては分からず仕舞いか。 あの魔導鎧とか魔導剣とかマジックキャンセラーとか俺だったからああも簡単に対処できたけど、他の人にはかなり強力な武装だ。 マジックキャンセラーからの魔導剣、魔導鎧のコンボは凶悪だ。
最後に自爆といい、絶対にただの人身売買組織だとは思えないんだよなぁ。
気にしても仕方ないか。 手がかりも自爆しちゃったし。
「うん、ありがとう。 じゃあ、死ね。」
聞きたいことを聞いた俺は腕を振りお頭達の頭を捻じ切る。
頭のない死体がバタバタと地面に倒れた。
「これから他の隠れ家に行くの? 」
アイリスが俺の顔を見てそう聞いてくる。 この子、あれを見て大丈夫なのか?
戦いに慣れている人でもショックな光景だと思うんだが。どうやらこの子はそういった感情が壊れてしまっているようだ。何だか親近感が湧いてくる。 確かこの子親が殺されてしまったんだよな。決めた、この子は俺が面倒を見るとしよう。 お金は広告塔としてお金が入るし、あの大きい家なら1人くらい増えても大丈夫だ。
「そうだね。 早めに潰すしといたほうがいいから。 さて、そろそろみんなの所に戻るとしようか。」
俺はここからまた出口に戻るのは面倒くさいので先程と同様重力操作で天井に大穴を開けそこから飛び立つ。それを見たアイリスは目を輝かせた。
「やっぱりルディは凄いね。 大会でSランクの人を見た事があるけど、ルディと比べるとミジンコだね。」
Sランクって言えばあの試験官。確か‥‥そう、閃光のシュバルツだったか。
「アハハハ、確かにSランク程度じゃあ比べものにならないかな〜。」
「Sランクって冒険者じゃあ上から3番目で才能がある人だけがなれるってお父さんが言っていたけどルディは冒険者になったら、Sランクなんてすっ飛ばしてSSSランクに簡単になれるよ! 」
へ〜Sランクって上から3番目なんだ。 初めて知ったぞ。
「そうかな? でも卒業したら冒険者になるのもいいかも知れないな。 そのほうが動きやすそうだし。 」
俺の目標の為にな。
「? そう言えばルディはどこの学校に通っているの? 今着ている服、制服だよね。あの学園に似ているけど‥‥。」
「僕? 僕はその学園だよ。色が違うのはZクラスで新しく作られたものだからなんだ。」
「凄いよルディ。 さすが私の王子様‥‥。」
アイリスはもう、うっとりとして乙女オーラ満タン状態だ。そんなアイリスを連れた状態で皆さんを待機させていた場所にたどり着いた。
「皆さんお待たせしました。 他の隠れ家が分かりましたよ。 これから僕はそこに向かいます。ですが、皆さんは捕まっていた人たちを連れてエイバに戻っていてくれませんか? 捕まっていた人たちは疲れているだろうでしょうし。 」
俺のそんな言葉に檻の中で見た女性達が感動いたしましたという表情で涙を流す。
この短時間でルディア教に侵食されたようだ。
「なんと慈悲深きお方。 私共の事も考えてくださるとは。」
「私はルディア様のために生き、ルディア様の為に死にましょう。」
そんな女性達を見て連れてきていた人たちは1つ頷く。
「分かりました。 私たちはエイバに戻ります。ルディア様お気をつけて。」
俺はその答えを聞いて、中に浮かべている人たちをエイバへと送って行った。
下ろすタイミングや場所は馬車を送った時と同じで観測眼で調節できる。
よし、全員冒険者ギルドにおろした。 周りの通行人がひっくり返っているが大丈夫だろう。
俺は観測眼を解き、アリアに視線を向ける。
「アリアはどうする? 戻る? 」
「いいえ、私は坊っちゃまと最後まで共に。」
しかし、アリアは首を左右に振り一緒にいると言う。俺はアリアからの視線をアイリスに向けると途端に抱きつく力を強くした。 離れる意思は全くないようだ。
「わかったよ。アイリスは‥‥聞くまでもなさそうだね。じゃあ行くよ。」
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