俺の5歳の時の方が強い
「「「ジャックさん! 」」」
俺を攻撃してきた男をみてお頭達がジャックと呼んだ。
なるほどこいつがヴィクティムの奴か。じっくりとヴィクティムについて聞かせてもらうとしよう。
俺は視線を鋭くしジャックを改めてみて見る。 黒髪をボサボサに腰まで伸ばし獣のような眼光をした男で、まるで猛獣を思わせる風貌だ。首と腕にアクセサリーをしているのはオシャレだろうか? よく分からん。
まあ見た目からして強そうだが、それは見かけ倒しではないだろう。
仮にも俺の重力バリアで弾き飛ばされて生きていたんだ。弱いはずが無い。
「お前なぁ、こちとりゃあいつらを手塩にかけてやっと使えるまでに育てたんだよ。それをああも簡単に殺しやがって。 覚悟できてんだろうなぁ? 」
「覚悟? いったい何の覚悟でしょうか? 臭いカメムシを殺した程度で何の覚悟をしろと? 」
取り敢えず挑発しておく。心理戦は戦いにおいて基本だ。
「言ってくれるじゃねえか、カメムシでも精一杯生きているんだぜ? 」
む、こいつ見た目に反して挑発に乗ってこないな。
意外だ。
「そうですね、それは認めましょう。 ですが人に害を為したものは例え虫であれ獣であれ魔物であれ殺されて死ぬのは道理です。 自分がやってきた事を後悔しながらね。」
「ひゅ〜 圧倒的強者様は言うことが違うね〜。 だがなその強者様がうっかり虫に食われちまうこともあるんだぜ! 」
「オラァ! 」
そう言って俺の後ろに回り込み首に鋭い蹴りを放ってくる。
それを俺は人差し指で受け止めた。危ないな、アイリスに当たるところだったじゃないか。
「なに!? 」
「虫がブンブンと煩いです。 これは叩き落とさなくてはいけませんね。」
目を見開いて驚いているが、俺は構わず受け止めた足を弾き飛ばし虫をはたき落すように腕を斜めに振り下ろす。
「ク!? 」
これで決まるかと思ったがギリギリの所で避けられ少し肉を削ぐに止まった。
「おや、どうやら存外この虫は素早かったようですね。 」
腕を広げ左右に首を振り挑発するのを忘れない。 引っかかってくれれば万々歳だ。
そんな甘くはないだろうが。
「はぁはぁ、何て出鱈目なんだよ。 ただ手を振っただけでこの威力か。」
傷を負った腕を押さえながら息を荒くさせてそう言ってくる。
そろそろ決めるとするか。
「僕的には色々聞きたいことがあるので、大人しく捕まってくれるのが有難いのですが。」
「は! 誰が捕まるかよ! 」
やっぱりみんなこの言葉にはこう返してくるか。 はい! 分かりました! って言う人を見てみたいな。
「そうですか。 では這い蹲れ。 」
俺は指を振り下ろし、ジャックに拘束する程度で重力をかける。
聞く前に殺しちゃまずいからな。
「な、何だこれは!? 体が重い! 」
突然襲いかかった重力にジャックは対処できず這い蹲っている。
これで決まりだな。
「威勢がいいのは口だけのようですね。 じゃあ‥‥」
「マジックキャンセラー起動! 」
俺が言い終わる前にジャックが付けていた腕輪が光り俺のかけていた重力がかき消されたのが感覚でわかった。
「な!? 」
「フゥフゥ 俺に奥の手の1つを使わせるとはなぁ。 」
「これはマジックキャンセラー。 魔力で発動しているスキルを封じることができる装置だ。 まだまだ試作品らしいが使えるようだな。」
ご丁寧にマジックキャンセラーの説明してくれるジャック。 まあ名前で大体推測出来るが。
「ご丁寧に説明ありがとう。 つまり、その腕輪の消せる以上の魔力でスキルを発動すればいいわけですね。」
俺はニヤリと笑い、ジャックを取り囲むようにかなりの魔力を込め重力操作を発動させた。
ズドォォォン!!
重力操作を発動させた場所は底が見えない真っ黒な穴が空く。
重力操作を封じられたところで余裕なのだが、威嚇と恐怖を煽るためにやった。
「バ、バカな! この腕輪は理論上5万までなら耐えることができるんだぞ! ま、まさかそれ以上だとでも言うのかお前の魔力は‥‥化け物め! 」
吐き捨てるように言ったジャックは胸にかけているペンダントを掴む。
「こ、こうなったらアレを使うしかねぇ! 魔導鎧起動! 魔導剣起動! フィジカルブースト アクティベート! 」
ペンダントを掴んだいたジャックを真っ黒な鎧が包みこみ。左腕に妙に機械チックな剣が現れた。しかし、随分と苦しそうだ。
「こ、これを発動した俺の能力値は全て1万を超える! 発動させていられる時間は短い上に反動が大きいが、馬鹿げた魔力でスキルを発動しているだけのお前が俺を捉えられるかなぁ! 」
どうやらジャックは俺が魔力でごり押しするタイプと勘違いしたみたいだな。
最初の攻防は純粋な攻撃力と防御力なんだけど。
まあ、マジックキャンセラーを壊したあれのインパクトが大き過ぎたのだろう。
最後の最後で心理戦に勝ったようだ。
「俺の聖具召喚の劣化版のようなものか。ふーん、ますますヴィクティムが気になってきたな。 あと頑張っているところ悪いけど5歳の時の俺の方が強いぞ? 」
そう言って真正面から剣を振り下ろしてきたジャックの剣を人差し指と中指で挟みへし折り
、そのままその2本の指で鎧に包まれている腹を弾き飛ばした。
「グハ! な、何故だ? お前は魔力特化のはず‥‥。」
俺に弾き飛ばされたジャックは、ヒビが入った鎧に包まれた腹を抱え膝をつきながら聞いてくる。
「まあそうだけど。他の能力値もスキルを発動してなくても軽くお前の倍はあるからな。さて、ヴィクティムについて聞かせて貰おうか? 」
俺はニヤリと笑い、ジャックにそう問いかけたのだった。
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