ヤンデレ
俺は腕を一振りして檻を重力で捻じ曲げて出れる様にする。
「あ、あ、出れる ここから出れるわ! 」
「パパに会えるの? 」
「そうよ〜 パパに会えるんだよ〜 よかったね。」
泣いて喜んだり、まだ小さい子供を抱きしめ涙を流している女性と各々喜び合っている。
う〜んこのままにして置いてあげたいんだけど、どっかの逃げ道から盗賊が逃げてもあれだしなぁ〜。
悪いけど、後にして貰おう。
「あの、すいません。 お取り込み中のところ悪いのですが、皆さんを安全なところに移させてもらいますね。僕のことはそこにいる人たちから聞いてください。」
俺はそう言って捕まっていた人たちを浮かせる。
「え!? う、嘘浮いてる? 」
「これ、楽しい〜よ〜! 」
ほとんどの人が困惑しているが早くも子供達は順応してパタパタと暴れて遊んでいる。
元気だな。
「今浮いているのは僕がやっています。絶対安全ですので安心してください。では行きます。」
そう言って天井に開けた大穴から浮かべていく。
ここまでド派手にやる必要は全くないのだが、効率よく信者を増やすなら俺に関する伝説があったほうがいいだろう。 例えば、大勢の人を空に浮かせたとか、輝く鎧を召喚して纏ったとか、腕の一振りで洞窟に大穴を開けたとかな。
そして、それを見ていたであろう上空にいる信者達や捕まっていた人たちがこの事を広めれば‥‥。
ククク とても愉快な事になりそうだ。
「ねえ、私たちもいかないの? 」
プカプカと浮かんでいる俺に抱きつもきながら、目を赤く腫れさせた女の子は小首を傾げ聞いてくる。
「僕はまだやる事があるからね。 君は皆んなと一緒に安全なところに行っていてくれないかな? 僕もすぐに終わらせていくから。 」
俺は頭をなでてそう言う。
だが女の子はイヤイヤと首を振る。
「ヤダ! 」
「や、やだって言われても、ねえ。 これからやらないといけない事もあるし。」
俺は頭を掻きながらそう答えるが女の子は予想外の返しをして来た。
「君と離れるくらいだったら死ぬ! 」
目が座り、本当に実行しそうな雰囲気を醸し出す。
「え!? どうしてそうなるの? お父さんとお母さんが悲しむよ? 」
俺が焦り説得にかかるが座っていた目の光が消え、全てを飲み込むような闇が宿る。
「ううん、それは大丈夫。お父さんとお母さんは死んじゃったし、お兄ちゃんもバラバラにされちゃった。」
やっちまった。 とんでもない地雷を踏んでしまった様だ。 ここに捕まっている時点でそれは考えられた筈なのに俺はなんて迂闊なんだ。
「そ、それはごめんね。 辛い事を思い出させちゃって。 」
俺が申し訳なさそうに謝ると、女の子は首を振りニッコリと笑う。目に闇を宿したままで。
「いいの、今は私を助けてくれた君さえいれば私は生きていける。 ウフフフ、カッコいいなぁ〜。 私を助けてくれた王子様。 私の体も、心も、命も全て君のものなんだぁ〜。」
そう言って俺の胸に頬をスリスリとする。
ど、ど、どうしようレヴィこの子、怖いんですけど。
俺は背中に冷や汗を掻きながらレヴィに話しかけるがレヴィはどうでもよさそうに適当に答える。
(いいじゃない。 それ程、愛されているのよ。 それにその子お人形さんみたいで可愛いからあなたも嬉しいでしょ? )
うんそうだよ!? この狂気的なオーラがなきゃね!
「ねえ王子様、名前教えて? 」
女の子は頬ずりをやめ、俺を覗き込んで聞いてきた。それに俺は詰まりながらも答える。
「僕はルディア・ゾディックだ、だよ。 き、君は? 」
「アイリス・レーティシア。 宜しくねルディ。 」
笑顔でまだ愛称も教えていないのにルディと当たり前の様に呼んでくるアイリス。
俺は鉄壁のポーカーフェイスが崩れかけるほどそれに驚く。
「ど、どうして僕の愛称を知っているのかな? 」
「ん〜、愛の力かな? 」
顎に人差し指を当ててう〜んと悩んでから、ニコっといい笑顔で答えた。
「そうなんだ。アハ、アハハハハ 」
もう乾いた笑みしか出てこない。 なんですか愛の力って。
「ところで、さっきの話なんだけどこれから盗賊を退治しに行くからアイリスを危ない目に合わせたくないんだよ。 だから安全なところで待っていてほしいな〜。」
「そうなんだ! そこまで私の事を考えてくれていたなんて。 でも大丈夫! 危なくなったら私が盾になるからね! 」
この子何が何でもついてくる気だ。 無理やりみんなの所に行かせる事もできるけどこの子本当に自殺しそうなんだよな。はぁ〜連れて行くしかないか。
「そ、そう。 そんなことにならない様に気をつけるよ。」
こうして俺はアイリスを連れ、この空間に来た道を戻って行ったのだった。
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