ルディア教
はぁはぁビックリした。 覗き込んだらいきなり声を上げるんだもの。
心臓止まるかと思ったぞ。
(あなた意外と臆病なのね。 )
臆病じゃないし、ただちょっといきなり出てきたりするのにビックリするだけだし。
(はいはい。)
俺が胸を押さえ、息を整えていると悲鳴上げ終わった女の子は俺にすごい勢いで詰め寄ってきた。
「本物!? 本物なの!? あの聖魔ルディアなの!? 」
「そ、そうですけど。」
「嘘でしょ!? 突如学園都市最難関校の王立リーデンブルグ学園に現れて剣聖や轟魔を抑えての首席合格。しかも、最強のSクラスの上のZ! 最近では学園都市を襲った魔族を単身で撃破した神童で、一部ではルディア教と呼ばれる熱狂的なファンまでいるというあのルディア・ゾディック!? 」
こ、怖い。 何でそんなに知っているんだよ。あとルディア教ってなんだ初耳だぞ。
「そのルディア教は知らないけど、僕ルディア・ゾディックです。はい。」
俺が冷や汗を掻きながら、頷くと女の子は目を輝かせた。
「キャァァァ! 私、ルディア様のファンなんです! 握手してください! 」
さっき俺の手を借りて立ち上がったじゃないですか。忘れているのか?
俺は手を差し出すとガシッと両手で捕食されるように握手された。
‥‥‥‥。
いつまで握手しているつもりだろうか。 かれこれ5分くらい経っているのだが。
手を引こうとしても、先回りして近寄ってくる。
俺の動きを先読みしているらしい。
この動きができたら下に転がっている男なんて対処できただろうに。
俺はいつまでも握手しているわけにもいかないので、少し鼻息が荒い女の子に声をかける。
「あ、あのもういいですか? 」
「ああ、ごめんなさい。 ルディア様と握手していると時間を忘れてしまって。」
「アハハ。 そ、そうですか。 お名前お聞きしてもいいですか? なんて呼んでいいのかわかりませんし。 」
俺が顔を引きつらせながら女の子に聞くと、また鼻息を荒くさせ目を輝かせ始めた。
この子可愛いんだけど、いろいろと残念なようだ。
「ああ! 憧れのルディア様が私の名前をお聞きくださっているなんて。 今日が私の命日なんだわ。 」
なぜか、お祈りのポーズをし始めた。
それを俺は肩を叩いて止める。
「な、名前を教えてくれませんか? 」
さっき言ってたルディア教ってこの子じゃないんだろうかと思い始めた俺は引きつるのが止まらない顔を何とか笑顔で保つ。
この7年間で鍛えたポーかフェイスは伊達ではない。
「そ、そうでした。ルディア様の忠実な僕にしてルディア教エイバ支部所属アリエル・ウェイトスターです。」
ファンから僕にランクアップしたぞこの子。
しかしこの子ルディア教だったか。何だよエイバ支部って他にもあるのか。
いつの間にそんなのが出来ていたんだ。
「聞きたいんだけど。そのルディア教っていつ出来たのかな? 僕知らなかったんだけど。」
「それは学園都市が魔族に襲われた時です。 ルディア様は学園都市を覆うほどの魔物たちをまさに神の所業の如し力を振るい、大空に持ち上げ殲滅した時に助けられた人々が立ち上げたのです! ルディア様の素晴らしさを王国内に広めたいとの一心で立ち上がったルディア教は今ではこのエイバのみで1000人の規模を誇ります。」
ま、マジかよそんなにか。
いや、この状況のエイバだからこそそこまで増えたのか?
「そ、そう。 最後に1つ聞きたいんだけど、さ。 ルディア教は信者達からお金を集めたり、命令とかしていない? 」
そう、宗教と汚職はつきものとラノベでは常識だ。
もしそんな事実があれば俺がこの手で潰す。
「いいえ、お金などは集めておりません。 ルディア教はただ‥‥。」
やはりなんかあるのか。
俺は何が来てもいいように身構える。
「ルディア様がお困りの時は手助けをする様にと言われているだけです。」
‥‥‥‥。
何じゃそりゃ。物凄いクリーンだな。
構えた俺が損した。
「そうか。聞かせてくれてありがとう。 家まで送るよ。」
「いえいえ、そんな恐れ多い! 」
腕を左右に降り恐れ多いですと連呼してくる。
アリエルはさっき食料奪われかけたこと忘れているのだろうか?
「いいから、送るって僕はご主人様の言うことを聞くもんだぞ? 」
にやりと笑い言うと観念した様で、はいと頷いた。
それを見た俺はアリエルを家に送り届ける為に歩き出す。しかし、俺が知らない内にルディア教なる物まで出来ていて信者までいたとは。
これは、エイバの問題を早く解決してやらないとな。
知らない間に出来ていた信者たちの為にも。
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