臭い奴らに大層なワザはいらない
家に戻った俺はアリアを連れ学園長が待っているという門へと向かうとそこには豪華な馬車が待機していた。その豪華な馬車は二頭立てでドアにはうちの学園の校章が描かれている。恐らく学校専用の馬車なのだろう。
「坊っちゃま。王都へ行くという事ですが、あまりにも突然なのでは? 皆さまへの挨拶も済んでいませんし。 」
アリアが少し不機嫌そうに言ってくるが俺に言わないでくれ。
悪いのはあのクソジジイだ。
絶対なんか企んでいる。王都に向かう途中も気をつけねば。
「本当は明日出発の予定だったそうだが、今日になったらしい。 みんなには学園長から知らせがいっているそうだ。 まあ、行く途中に手紙も出すから大丈夫だろう‥‥たぶん。」
「たぶんって、坊っちゃま! 絶対に大丈夫じゃ無いですって! 戻ってきたときにコッテリと絞られても知りませんからね。 」
アリアがプンスカ怒っているが俺のせいじゃないんだって。
「その時はあのクソ、いや学園長になすりつけるから大丈夫だよ。」
危ない危ない。 危うくクソジジイと言いそうになってしまった。
俺たちの会話が聞こえたのか馬車のドアをギィと開いてクソジジイが顔を出した。
「何をしているんじゃ。 早くせんと次の都市の門が閉まってしまうぞ。」
「初めまして学園長様、私は坊っちゃまのメイドをしていますアリアと申します。この度の急な出立に同行させていただくことになりました。 どうぞよろしくお願いします。」
アリアは節々に棘を感じさせながら、学園長に向かって綺麗にお辞儀をした。
だがそれを受けた学園長は暖簾に腕押しとばかりに全く堪えた様子はなくホッホッホと笑っている。
やっぱりこのクソジジイ食えない。
「知っておるよ。 確かルディア君の恋、おっと間違った。メイドじゃったの。さあ入りなさい。」
何がおっと間違った、だ。 ワザとだろうが。
流石にこんなバレバレな事、アリアも気づいているだろう。
「そ、そんな恋人だなんて、私と坊っちゃまは主従関係! でもそれも‥‥」
両頬に手を当てイヤンイヤンしている。
何を引っかかってやがるんですか、アリアさん。
「アリア、アリア! 」
「そんな坊っちゃま。こんなところでなんて、はしたないですよ。」
「何を言っているんだアリア。」
俺はジト目でアリアを睨む。
そこでやっと正気に戻ったようだ。顔を赤くし、手を左右に振って何でもないですと言ってきた。
「あ、いえ何でもありません。 さあ早く行きましょう。坊っちゃまは良い学園長をお持ちになりましたね。」
さっきのトゲトゲしい雰囲気はどこへやら綺麗な手のひら返しだ。俺は、はぁと密かにため息を吐きアリアと一緒に馬車に乗り込む。
「2人とも乗り込んだかの。 さて出発じゃ。」
学園長が御者に合図を出すと馬車が動き始めた。
ああ憂鬱だ。 こんなクソジジイと一緒に5ヶ月もいないといけないなんて。
俺は先行きの不安な旅に嫌気がさしながらもアリアがいるだけましかと思い直すのだった。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
ガラガラと馬車の車輪が鳴り、ゴトゴトと揺れる。俺は流れる風景を眺めながら寛いでいる。
学園都市に来るときにわかっていたが馬車の中は暇だ。 何もすることがない。
この世界の人たちはそれを読書をしたり、寝たり、趣味に没頭したりと色々な時間の潰し方を持っているが俺に読書の趣味はないし、こんなに揺れている中でなんて眠れない。
クソジジイはグースカと寝ているがどんな神経しているのだろうか?
不思議だ。
アリアも、編み物やっていて楽しそうだ。
俺の退屈凌ぎといえば魔物狩りなのだが、出発してかなり時間が経つのに全然現れない。
何でもいいから現れないかな〜
俺がヤケクソ気味に心の中で呟いていると願いが通じたのか危険察知が反応した。
これは魔物じゃないな。 だったら‥‥
「お前ら、止まれ! 」
盗賊だ。だいたいに30人とういうところか。
結構多いな。
「30人というところじゃろ。 どうする? わしがやるか? 」
いつの間にか目を覚ましたクソジジイがそう言ってくるが冗談じゃない。
俺の暇つぶしを奪わせてたまるか。
「いいえ、僕がやります。」
「そうか、じゃあ任せたぞ。」
「が、学園長!? 」
そう言ってまたクソジジイは眠った。俺が負けるとは微塵も考えていないらしい。
そんなクソジジイが信じられないらしく御者の男性は驚いているがどうでもいいだろう。
「坊っちゃま、お気をつけて。」
アリアが編み物をしていた手を止め、送り出してくれる。
「ああ、行ってくるよ。」
俺はアリアに向かって手を振り、馬車の扉を開け外に出た。
「おいおい、お頭ぁ! ガキが出て来やしたぜ! 」
外に出てまず目に入ったのは薄汚いボロ切れを纏った、ザ盗賊といった風貌の男だ。
ここまで異臭が漂ってくる。
こいつ風呂入ってないだろ。
あまりの臭さに顔を顰めていると、盗賊たちの中から一際大きい髭ズラの男が出てくる。
お頭と呼ばれていたところを見るにこいつらの親玉だろう。
「なぁに〜? ガキだと? おお、上玉じゃねえか! こいつは生かしとけ! 変態貴族に高値で売れるからなぁ。 」
そのお頭は俺の顔をマジマジと見た後、舌なめずりをしてそんなことを言う。
「それはちげえねぇ! 」
「「「ギャハハハ!! 」」」
何がそんなにもおかしいのかバカ笑いをしている。さっきから臭くて喋れないのを俺が怯えている、と勘違いしたのか隙を晒しまくっている盗賊達。
もういい加減に臭い。
終わらせよう。 何でもいいから来てくれなんて思わなきゃ良かった。
俺は盗賊達に手を翳し上空に螺旋回転をかけながら打ち上げる。
よし終わりっと。
あまりにもあっけないが体を洗っていないような奴にブラックホールとか贅沢なのを使いたくないからな。
あんな奴ら大気圏からの再突入で十分だ。
燃え尽きて死ね。
俺は今度から魔物のみ現れますようにと願って馬車の中に戻って行くのだった。
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