さあ行こうシナス総合学校!
俺の嫌な予感はよく当たるようだ。
散々ため作っていったことが広告塔になってくれとは‥‥。
「広告塔、ですか。」
「そう、広告塔だよ。今日の君を見てぴったりだと思ってね。 知っている通りこの王立リーデンブルグ学園は王国内に留まらず帝国にまで知れ渡っているエリート校。
その学生には実力はもちろんの事、気品も求められている。その広告塔ともなればそれにルックスも加えなければいけない。しかしそれらを備えた生徒がなかなかいなくてね。困り果てていたんだよ。」
「そこで君だ。 オリエンテーションでの観衆へ常に笑顔を絶やさないポーカーフェイスっぷりに、気品溢れる所作、神の造形美の様な顔立ち。全て揃っているんだ。やってくれるかい? 」
誰がやるか、そんなクソめんどくさい事。
ここは丁重にお断りしよう。
「残念ですが‥‥。」
「ああ、そうそう。 広告塔になってくれればそれ相応の謝礼を用意するよ? 」
俺が断ろうと口を開いたのを見て、さも今思い出したといった感じに生徒会長が言った。
ぐぬぬぬ、お金もらえるのか。
将来絶対、莫大なお金使うし今のうちに貯めておきたい。
けど、うむむむ。
俺が悩んでいるところを見てあと一押しと思ったのかさらにと付け加えてくる。
「学校側としては、早急に必要としているんだよ。 早めに決断してくれると私もさらに学校側に色々と要求できるんだけどね。 お金とか。」
それを聞いて俺は決断した。
「やらせていただきます。」
お金に負けた。俺は一生お金に勝てないだろう。
後悔はしてない。
「うん、ありがとう。 学校側には私から言っておくね。それで広告塔についてだけど式典とかそんな感じのに参加とか学校の名前で大会に参加してくれるだけで良いから。」
なんだそんな事だったのか。 アイドル的な何かをやるもんだと思っていたぞ。
「次に君の生徒会としての仕事だけど、学園内の諍いを時には口で、時には武力で収めたりするだけだね。集まりは週に一回、放課後にこうして集まるだけだから。何か質問は? 」
つまり、喧嘩が起きたら力ずくでおさめろという事か。
それならないな。
口で言うより手が先に出るかもしれないが。
「ないです。」
「そうか。じゃあ今日はこれで解散。明日は休みだからしっかりと休む様に。」
そう言って生徒会のメンバーは席を立ち各々寮に帰っていく。
今日は疲れた帰ってゆっくりするとしよう。
俺は席を立ち、帰路に着くのだった。
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「アリアただいま。今帰ったよ。」
家のドアを開け中に入る。
するとドタドタと足音が聞こえてきた。
「坊っちゃま、お帰りなさいませ! ご飯にしますか? お風呂になさいますか? 」
玄関に駆けつけるなりそんな事を言ったアリア。
俺はそれを聞いてご飯と答えた。
「わかりました、すぐにご用意しますので少々お待ちください。」
「わかったよ。」
俺の答えを聞いたアリアはキッチンに行った。
俺はそれを見てソファーにどっかりと腰掛ける。
今日は疲れたな〜。あ、そうだ明日ヴィオラちゃんに会いに行く時、アリアも連れて行こう。
服は、制服で良いか俺が持っているどの服よりも上等だしな。
「坊っちゃま、ご飯のご用意できました。」
俺が天井を見上げながら考えているとどうやら食事の準備が終わった様で呼びかけられた。
「ああ、今いくよ。 なあアリア、明日ヴィオラちゃんに会いに行くんだけどアリアも来ないか? 」
「ご一緒させていただきます。 」
よし、アリアも行くと。
でもシナス総合学校ってどこにあるんだろ? まあいいや。人に尋ねながら行くのも楽しそうだな。
「じゃあ明日の朝行こう。」
「はい坊っちゃま。」
明日の予定も決まったところでご飯食べるか。
ヴィオラちゃん友達できてるかな〜? できてたらいいんだけど。
ご飯を食べ終え、お風呂に入った俺は、ヴィオラちゃんへの心配を胸に眠りについたのだった。
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「坊っちゃま本当に制服で行くのですか? 」
アリアがそう聞いてくる。
私服で行った方がいいと言ってるのだろう。
でも、これが楽なんだよな〜。服に気を使わなくていいし。
「ああ、こっちの方が楽だし。 面倒ごとがこれを着ているだけで避けられそうだしね。」
これを着ているだけで力の証明だからな。
どんな馬鹿でも、化け物揃いの学校の生徒に手出しは出来ないだろう。
「そうですか、分かりました。」
「じゃあ行こうか。」
そう言って家のドアを開く。先ずは聞き込みからだな。
なんかワクワクしてきたぞ!
(子供っぽいわね。)
当たり前だ、見た目は子供なんだから。
家を出てた俺たちは学校の門を潜り商店街を進んでいく。
誰に聞こうかな? そうだあのおじさんにしよう。
聞き込み相手を見つけた俺は、果物を売っている店で後ろを向き何か作業しているおじさんの所に行く。
「ねえ、おじさん。 ちょっと聞きたいんだけど‥‥。」
「‥‥‥‥。」
俺が呼びかけるが無視だ。もう一回声を掛けてみよう。
「ねえ、おじさん。ちょっと聞きたいんだけど‥‥。」
「‥‥‥‥。」
クソこうなったら意地だ。 絶対振り向かせてみせる。
おじさんいや、クソジジイを振り向かせて誰得? と自分でも思うが、負けた気がするので呼びかける。もう鬱陶しいくらいに。
「ねえねえねえ‥‥‥‥」
呪詛の様にねえを連呼していると根負けしたのかやっと振り向いた。
「うるせぇんだよ! ク、ソガキ‥‥」
最初は眉間に血管を浮かび上がらせて怒っていたが、俺の制服を見て青ざめ始めた。
「そ、その制服、聖魔ルディア‥‥。」
「ねえおじさん。なんで無視したか、聞いてもいい? 」
怒気を漲らせながらも笑顔で聞く。無視されまくって結構腹にきてるのだ。
「坊っちゃまを無視するとはいい度胸です。」
アリアも怒り心頭の様で、後ろに不動明王が見える。味方だと頼もしい限りだ。
「そ、それはですね。 えーっとそのー‥‥。」
冷や汗を流しながら目を泳がせて言葉を捻り出そうとしているが出てこない様だ。
クソジジイの言い訳を待っていたら日が暮れそうだ。
面倒になってきたので俺から答えを出す。
「恐らくですが、おじさんは声から子供と判断して相手にする価値なしと判断した。違いますか? 」
「そ、そうです。」
俺に当てられて真っ青を通り越して真っ白になった。
何ともムカつく話だ。だが時間がないので本題を聞くとしよう。
こんな対応をしてたら潰れるのは時間の問題だが指摘してやる義理もない。
「そうですか、これとこれを買いますのでシナス総合学校がどこにあるか教えて貰えませんか? 」
俺は美味しそうな果物を2つ指差し、そう尋ねる。
「ああ、まいど。 シナス総合学校は‥‥‥‥」
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「おお、この果物美味しいな! 」
「そうですね、とても美味しいです! 店主が最悪でしたが。」
俺とアリアはさっき買った果物を貪りながら聞いた道を歩きシナス総合学校を目指す。
今では時々こうしてクソジジイの悪口を挟むにとどまっているが店を出た時なんて、それはもう鬼の面を被っている様な表情で不機嫌だったものだ。
宥めるのにかなりの労力、時間を使った。
もう2度とあの店には行かないだろう。
果物をバリバリと齧っているとシナス総合学校が見えてくる。
シナス総合学校は聞いた話によると約2700名の生徒を抱えるマンモス校だそうだ。
その中からヴィオラちゃんを探さなければならないのかとゲンナリしたが、受付に行けば呼んでくれるらしい。
俺はそんなことを考えながらアリアを連れシナス総合学校の門を潜る。
すると、そこいらで遊び回っていた生徒たちがカチンと固まった。
中にはなぜ固まっているのか分からず動き回っている子達もいるが、それは小さい子達だ。
今年入った子達だろう。
「あ、あの制服‥‥。何で学園の生徒がうちの校内入ってくるのよ! 」
「わ、分からないよ。そんなの! とにかく先輩達を呼ばなくちゃ! 」
そう言って12、3歳の女子生徒達が走ってどっか行ってしまった。
なんか面倒なことになりそうだ。
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