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召転のルディア  作者: NTIO
壊れゆく日常
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実は

「ホームルーム始める前に手短に自己紹介をする。私はこのSクラスの担任になったゼンツ・ガフェインだ。 担当は実技だよろしく頼む。さて、今日の予定だが今から2時間後、第一闘技場で上級生たちと顔合わせとなる。その時にだが、オリエンテーションとして1年生と9年生の代表同士の試合がある。ルディアはその時に試合に出るように。何か質問は? 」


そう言って見回すゼンツさん。


おいおい、いくらなんでも年の差がありすぎるだろう。

恐らく、この学校に入って有頂天になったクソガキどもに上には上がいると教え、鼻っ柱を折るためだと思うが。


もしこの考えが合っていたとしたらよく出来ている。

今まで通じたものが通じなくなるんだ、従順になるだろう。

まあ、俺は負けないがな。


俺が心の中でブツブツと言っているとゼンツさんの目がクロエで止まる。

まさか‥‥。


「ん? どうしたクロエ。 顔が赤いぞ? 大丈夫か? 」


やっぱりか。 今のクロエはほっといて欲しいだろう。

俺が原因の一端だし、少し助けるか。


「先生、クロエの事は僕がなんとかしますので大丈夫です。」


真剣な表情でゼンツさんに訴える。


本当になんとかしないとこれからまともに話なんてできないだろうし。


「わ、分かった。 クロエのことは任せるとしよう。 これでホームルームは終わりだ。」


そう言ってゼンツさんは教室を出ていった。


さて、じゃあやるか。

ここではガヤガヤと煩いし、茶々を入れられそうなので場所を移そう。


俺は立ち上がり、未だに俯いているクロエに話しかける。


「クロエ、話がある。 場所を変えて話さないか? 」


「‥‥うん。」


俯いたまま小さくうん、と答えた。

それを聞いた俺はクロエの手を取り歩き出す。

対面式まで時間がないからな。


廊下に出て窓をガラガラと開け、そこからクロエの手を引き寄せいわゆるお姫様抱っこをして飛び立った。


「え!? うぇぇぇ!! 」


クロエが変な声を上げているが我慢して欲しい。

あのまま学校で話したら好奇心に押されたクラスメイト達に覗かれる所だった。

これから俺は俺の根幹に関わる話をするんだ。

不特定多数の人に聞かれてはいけない。


学園都市が見渡せる所で滞空する。


「クロエ、ここなら誰にも聞かれないで話ができる。」


「う、うん。でもわざわざこんな所じゃなくても良かったんじゃない? 」


クロエは驚きでもう恥ずかしさも吹っ飛んだようだ。


「いいや、クロエの気持ちに応えるためには俺の秘密を話しとかないといけないんだ。

それはあんまり人に聞かれたくない。 だから上空にした。」


俺の余りの真剣な表情にクロエも真剣な顔になる。


「わかったわ。それを話してくれるのよね? 」


「ああ、疑うかもしれないけど最後まで聞いてくれ。ある所に何処にでもいる普通の青年がいました。 その青年は平凡ではありますが、毎日を楽しく友人達と過ごしていました。」


俺は今でも鮮明に覚えている光景を思い浮かべながら語る。


「しかし、ある時そんな日常は壊れてしまいました。 その青年と友人達は異世界に勇者として召喚されたのです。知らない世界、知らない文化、知らない力、召喚された所は青年達が住んでいた世界とはかけ離れていました。」


「青年は勿論住んでいた世界に帰ろうとしましたが帰える方法がありません。うじうじ悔やんでも仕方ない、何か出来ることはないかと青年は探しました。 ですが世界は青年に対して何処までも残酷です。 他の友人達には力がありましたが青年は全くの無能。」


「青年は絶望しました。 もう前を向いていけない。 このままではいつか自分の無能が友人達を殺してしまうのではないか、それなら自分など死んだほうがと。しかし、その青年に友人の少女が言いました。 」


「それはだめ貴方は私の生きる意味だから、それに貴方を庇ったりして死んだりしないと。

それを聞いた青年は救われました。 これからも精一杯がんばろうと思い頑張りましたが一向に強くなりません。 そんなある日、友人がこう言いました効率がいい魔物がいる一緒に狩りに行かないか。 」


「その言葉に青年はいい友人を持ったと思いました。ですが、それは全くの間違いだったのです。狩りに行きましたがそこには数多くの凶悪な黒い魔物がいました。青年は騙されたのです。 その友人に麻痺の魔法をかけられ魔物の中に放り込まれた青年はそこで死にました。」


「しかしまだ青年の運は尽きていませんでした。 魔剣と契約した青年は新たな命を得て召喚された16年前に転生したのです。 」


そこで区切りクロエに視線を戻す。

俺の話を最後まで聞いたクロエは目を見開き声を震わせる。


「ま、まさか、魔剣レーヴァテインにその勇者の称号! 貴方は‥‥‥。」


クロエがなんで俺の職業を知っているのか気になるが俺はクロエの言葉の続きを言う。


「俺は今から9年後に召喚される勇者、彩月 龍太の生まれ変わりだ。自分でも信じられないから親にも言ってないんだけど‥‥。前にクロエは知り合いに似ているって言ったよね。

それが俺を救ってくれた少女、青山なんだよ。」


「だからクロエにだけは言った。 それにクロエはしっかりしてるからちゃんと聞いてくれると思ったからね。 」


「色々と前置きが長かったけど、さっきのクロエの気持ちに答えるよ。正直、物凄く嬉しい。お嫁さんにしたいくらいだ。クロエの気持ちだけでなく他の子の気持ちにも気づいている。でも俺は青山も好きなんだ。 前の世界だったらここでだれか1人を選んでたと思う。」


そう、前の世界ならな。 でもこの世界は一夫多妻制だ。


「でもこの世界なら全てを選べる。 俺はクロエもエルザちゃんもヴィオラちゃんもアリアも青山も誰にも渡したくないんだ。なあクロエ、そんな俺でも好きでいられるか? 」


俺の質問にクロエはフフフと笑う。


「フフフ、そんなこと? 私のお父さんは3人娶っているのよ? そんなこと普通よ普通。

でも貴方の気持ちは分かったわ。 つまり、たくさんお嫁さんができるかもしれないけど俺のことが好きでいられるかでしょ? 」


「そ、そうです。」


勇気を出して言ったのにそんなことって‥‥。


「そんなの当たり前じゃない。貴方とずっといるわよ。」


「でも俺、勇者に復讐するから王国敵に回すよ? 」


「その時は一緒に王国を潰すわ。」


軽快な笑みを受けべてそういうクロエ。


「帝国も絡んでたから帝国にも復讐するよ? 」


「手伝うわ。 」


「魔族も‥‥」


「うだうだ、煩いわね! いいって言ってんの! んむ! 」


俺が言い切る前にクロエにキスで口を塞がれてしまった。


「いい私、いえ私たちは貴方が世界を敵にまわそうと貴方のそばにいるわ。そこんところ覚えといて。 さあ、そろそろ帰りましょう。対面式があるでしょ。」


「あ、ああそうだな。」


そう言って俺は降下して行く。 最後がグダグダになってしまったがこれこれでいいだろう。

ああ、今なら魔王でも倒せる気がするぜ!



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