俺だけ
入試から5日経った。
あれから俺は宿に連行されてこってりと絞られた。
私たちは心配していたのにルディはどうたらこうたら、そもそもどうたらこうたら。
こういった具合だ。
あんなに一気に喋ってなぜ息切れしないのか不思議なものだ。
最後の方は意識を保てていたのか怪しい。
何せ、気づいたら朝だったもんな。
正座したまま目が覚めたんだ。恐ろしい‥‥。
俺は身震いしながら王立リーデンブルグ学園の制服に腕を通す。
今日は入学式なのだ。
2日前に取りに行った時はこの制服を見て顔を引きつらせた。
何故なら俺だけなんか違うのだ。
王立リーデンブルグ学園はクラスによって制服が変わるのだが、それは肩章が付いているかいないかとか、胸についている校章が金色か銀色かといった些細なことで、色は黒だ。
それなのに‥‥。
「やっぱ俺だけ白って‥‥。」
そう俺だけ色が白なのだ。
金糸の肩章に、金糸で縫われた校章だ。
これじゃあこの人特別です! と言ってるようなものだ。
まあ、Zクラスは新設されたらしいので変える必要があるのはわかるのだが。
(いいじゃない。 カッコいいわよ? )
そうだけどさ、でも恥ずかしいんだよ。コスプレしてるみたいで。
鏡の前で回ってみたり、ポーズを決めてみるが全て様になっている。
この顔に助けられた。
今はどこぞの王子みたいで済んでいるが、転生する前だったら白い目で後ろ指さされるところだった。
俺はこれまた白い帽子を目深くかぶり宿の部屋から出て階段をコツコツと降りていき、宿に併設された食堂で待っていた父さん達のところに向かう。
俺が1人で着替えたいからと、先に行っててもらったのだ。
歩いている途中で好奇の目に晒されるが、我慢だ。これからずっとこれなのだ。慣れねば。
「おお! 似合ってるじゃないか! 」
そう言って父さんは肩を叩いてくる。
褒めてくれるのは嬉しいが、あんまり大声を出さないで欲しい。
さらに好奇の目に晒されるだろうが。
「坊っちゃま、お似合いです!」
アリアまで‥‥。もういいや。どうにでもなれ。
「ルディ! カッコいいよ! 」
「うん、カッコいい! 」
「そうだね、似合っているよ。」
俺と同じ型の制服を身に纏ったエルザちゃんとシナス総合学校の制服を身に纏ったヴィオラちゃん、ガルフさんもそう言った。
「エルザちゃんもカワイイよ。 そうだ、父さん達って今日で帰るんだよね? 」
そうなのだ。子供組は今日で全員入寮だ。
俺とエルザちゃんとアリアは今日寮に案内されるらしい。
何故アリアもとなるかもしれないがあの学校は1人、付き人を連れて行けるのだ。
貴族の子供のためらしい。
「ああ、お前の所の学校は父さん達は入れないからヴィオラちゃんの入学式を見てからな。」
不思議なことに王立リーデンブルグ学園は新入生とその付き人、在校生、教師以外参加できないのだ。
そこで父さん達はヴィオラちゃんの入学式を見ることにしたらしい。
という事は今日でしばらく会えなくなるのか。
じゃあやる事は1つだろう。
俺は帽子を外し、深々と頭を下げる。
「父さん、今まで有り難うございました。」
それを見た父さんは目を見開き、狼狽え、目に涙を浮かべる。
「お、おい。いきなり何だよ。 卑怯じゃないか。 父さんを泣かせにきてるな。」
言うことを言った俺は頭を上げる。
「エルザちゃん、アリアそろそろ行こうか。 泣き虫に付き合ってたら入学式に遅れるよ。
ヴィオラちゃん、週末にね。」
エルザちゃんとアリアの手を引いて出口に向かう。
「ルディ? 泣いてるの? 」
「坊っちゃま‥‥。」
堪えようとしたが、耐えきれなかったらしい。
保険を打っといてよかった。
父さんに泣き顔を見られるところだった。
帽子を深くかぶって泣き顔を隠しながら入学式に向かうのだった。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
やっと涙か引いたところで帽子を普通にかぶり直した。
ここで初めて、しっかりと外を見たが真新しい制服を着た生徒達でいっぱいだ。
まあ、どこの学校も今日が入学式だから当たり前だが。
しかし、さっきから見られているな。 それ程王立リーデンブルグ学園の制服が、知られているということか。
俺が辺りに視線を巡らせていると、あちこちからヒソヒソと聞こえてくる。
「なあ、あの子達、学園の新入生達じゃないか? 」
学園は俺たちの学校の通称か?
「ああ、今年豊作だってな。」
「何でも、Zクラスができたらしいぞ。 」
「マジか! 」
「マジマジ、ある生徒が強すぎてZクラスを作ったらしい。」
「へ〜、Zクラスの制服はどうなるんだ? AとSは肩章で区別してただろ? 」
「Zクラスの生徒は白色の制服に金の肩章、金糸で縫われた校章だと。」
そう言ってハッとこっちを見る。その二人組の会話を周りも聞いてたのか、つられて結構な人がこちらを見た。
「お、おい。あいつ、じゃないか? 」
「本当だ‥‥。 Zクラスはただ1人のはず。という事はあいつ、聖魔ルディアか! 」
「な、何だと‥‥。あの、破壊童子ルディアか! 」
「意外と可愛いのね。天災ルディア。」
「何ていうか、どごぞの王子みたいだな。 金閃のルディア。」
‥‥どうして誰1人として同じ2つ名を言わないんだよ。
統一してくれ、混乱する。
もう慣れてきた視線を浴びながら学園の門を潜り、入学者が並んでいる受付に向かう。
しかしこれは本当に目立つぞ。黒い制服にただ1人、白って。
「おい、来たぞ。」
「あいつか‥‥。」
受付の手伝いをしていた生徒に見つかり、それがザワザワと伝染していく。
いちいちざわつくなと、思うが仕方ない。
止まっていた歩みを密かにため息を吐いてから、再び動かし歩き始める。
すると人ごみの中から2人出てきた。
クロエとフランだ。
「久しぶり、すぐに見つかったわよ。 」
「お久しぶりです。」
「ああ、久しぶりだね。 2人も受付これからだったら一緒に行かない? 」
「いいわよ。」
「そうですね行きましょう。」
そして俺たちはフランとクロエ加えて受付にたどり着く。
前に結構な人がいたが俺を見るなり左右に分かれて道を開けたのでかなり楽だった。
「お、お名前をどうぞ。」
受付の生徒は少し言葉を詰まらせながらも聞いてきた。
「ルディア・ゾディック 。」
「エルザ・ワーライト。」
「クロエ・アークライト。」
「フラン・レーベルシュタイン。」
「はい、ルディアくんはZクラス、クロエちゃんはSクラス、エルザちゃんとフランちゃんはAクラスですね。 確認ました。 入学式開始まで講堂でお待ちください。あ、あとルディアくんは入学主席なので新入生代表の挨拶をお願いします。」
え!? 聞いてないんですけど。
「あ、あの聞いてないんですが‥‥。」
俺の言葉を聞いた受付の生徒が申し訳なさそうな顔をした。
「すいません、学園長の方針なんです。 毎年、主席の人はやらされているので‥‥。すいません。」
あの、エロジジイか。 どうせあたふたしているところを見て楽しむ気だろう。
「解りました。 今から考えておきますね。みんな、講堂に行こう。」
俺が黙っていることをどう勘違いしたのか顔が青ざめ始めている受付の生徒に笑顔で答え、講堂に向かう。
「ねえ、本当に良かったの? 」
とクロエが言う。
「大丈夫、あのエロジジイの思い通りにはいかないさ。 」
フフフ、久しぶりに子供殺法を使うとするか。
俺は顔に邪悪な笑みを浮かべながら講堂に歩いていくのだった。
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