国と帝国と魔国と
俺たち2-Aは今謁見の間に向かう途中である。やーそれにしても調度品っていうの?一つ一つが目が飛び出るような値段なのは間違いないと思う。
なぜかって?、そりゃ絨毯なんてふかふかすぎてアリウシア様にねえ、これ踏んでいいの?、踏んでいいの?って聞いたくらいだし。壺や絵画だって見るからして高いぜ!オーラが漂っているからだ。
ちなみにその時アリウシア様に物凄い慈しみの目を向けられていた。……なぜ?わからないわからないったらわからない。あっこら正義壺さわろうとしない!割れたらどうするのバカなの?死ぬの?
そうこうしてるうちに、謁見の間にたどり着いたらしい。アリウシア様が、扉の前で固めてる兵士と話してる。それにしても見るからに強そうな兵士だ。近衛兵というやつだろうか?俺なんて、小指でノックアウトされそうだ。くだらないことを考えている内にアリウシア様の話が終わったらしい。
「勇者様方、これよりあちらの兵がお呼びしますのでそれに合わせてお入りください。わたくしは先に入っていますので。」
え!?嘘、アリウシア様まさか俺たちおいてくの?まずい!取り敢えず捕まえる。
「ア、アリウシア様俺たち礼儀作法知らないんですけど。」
アリウシア様は、ハッと気ずいたように
「そうでしたわね。言い忘れておりました。勇者様方は普通にしていただければ結構ですよ。」
その答えに2-A一同ホッとする。
「では、わたくしはこれで。」
それからしばらくして兵士が、
「勇者様方後入来!! 」
と大声で言いながら豪華な扉を開く。扉の先には、右側に軍関係する人たち、左側には内政関係の人たちが列をなして規則正しく並んでいる。たぶん間違ってないよね?軍関係であろう人たちは筋肉で服がパッつんパッつんだし、逆に内政関係であろう人たちは脂肪で服がパッつんパッつんだしね!これで、逆だったら俺はこの国の未来が破滅になることに全財産を掛けよう! ……たしか俺の全財産500円だ。あれ?おかしいな目から汗が。
それはともかく、軍関係の人たちと内政関係の人たちに挟まれ俺たちは進んでいく。豪華な玉座に腰掛け此方に視線を向けているのが王さまだろう。さすがアリウシア様の父親と言うべきか髪を横に分け、口髭を蓄えたナイスミドルである。その王様の隣には女4人男2人が控えている。アリウシア様がその内に入っていることから、あの人たちは王族だろう。
「よくぞ参った。勇者たちよ。余はリーデンブルグ王国第14代国王ベルクリウス・フォン・リーデンブルグである!」
ベルクリウス様が雄々しく名乗る。うわーイケメンはどんな年でも様になるのね。(滅びろ!)
「して、我が国が勇者召喚したわけであるが、どこから話したものか……。」
そこへアリウシア様が
「父上、ここはわたくしが。」
「ふむ。ではアリウシアに任せるとするか。アリウシア勇者たちに、ことのあらましを説明せよ。」
ベルクリウス様が偉そうに命令する。あれ?王様なんかほっとしてね?ははーんさては、めんどくさいこと説明しないでホッとしてるんだろ?分かるよー。すごくよく分かる。俺もよくそういうことあるしな! このとき俺は初めてベルクリウス様に親近感が沸いたのだった。
「仰せのままに、父上。」
それにしてもアリウシア様偉いなーあの笑顔解ってるけど知らないふりしてる笑顔だ。俺もよく正義にしてる。あれ本人が隠してるふりしても回りの人には大体気づかれてるからね!
「それではまず、リーデンブルグ王国と魔族の戦いの歴史について話しましょう。魔族が最初に確認されたのは今よりおよそ300年ほどです。当時王国は近隣諸国との戦時中で、国内は疲弊しておりました。そんなあるときです。」
「リーデンブルグ王国より東、魔の樹海と呼ばれるSランク迷宮から100万を越える魔物、魔獣が現れました。魔物、魔獣が大挙として現れる大進行と呼ばれる現象は、100年に1度の頻度で起きましたが、その年の大進行は、過去を遡っても規模、質共に類を見ないものでした。さらにその魔物、魔獣たちはなにかに率いられてるかのように統制のとれた動きをしていました。この事態に王国は近隣諸国に停戦、共同戦線を求めました。さすがに近隣諸国も、戦争してる場合ではないと判断し王国と共に大進行を乗り越えました。」
「しかし、新たな問題が発生しました。大進行時、魔物、魔獣の中に明らかに他のものとは異なる個体がいたのです。その個体は、人種に限りなく近い見た目をしており計り知れない魔力、他のものを率いる知性を有しておりました。何とか10万の兵を犠牲に討伐することができましたが王国、近隣諸国連合軍は多大なる損害を受けました。皮肉なことにこの時受けた被害によって戦争は一旦の平和が訪れたのです。」
「それが魔族ってことか。ん? それっていいことに聞こえますけど? 」
「いいえ。一旦の平和です。それより30年後、大進行の傷が癒され始めた頃こんどは魔の樹海より10万の魔族が王都に進行してきました。それに対して王国は殲滅もしくは、撃退を試み30万精鋭をもって当たりました。そして、たった一個体に皆殺しにされました。」
「えっ?皆殺し?30万もいたんだから一人くらい……。」
「いいえ皆殺しです。」
うぉいまじかよ!30万の精鋭を皆殺しってそれ絶対魔王じゃん!って待てよ俺たち勇者だよね?そんなやつと戦うわけ?
「そして魔族10万は、王都にやってきました。そしてこう宣言したのです。「我は魔族の王、トレイスタン・ベルフェゴールである。我ら魔族は魔の樹海に魔国グルーヴを建国することを宣言する。それにより魔国グルーヴは、人間どものすべての国に対して宣戦布告する!」そう言って魔王トレイスタン・ベルフェゴールは魔族を連れて魔の樹海に帰っていきました。」
「魔王が宣言した年より今日まで魔族による攻撃は続いているのです。」
「それで?なんで俺たちを召喚しようとおもったわけ?」
「それは迷宮より、稀に見つかる魔導書の中に異世界より召喚した勇者は絶大な力を誇ることと、その勇者の召喚の方法が載っていたからです。」
ふざけんな!そんなことで召喚しやがって、確かに俺も異世界召喚とか夢見てたけどさ。なに?10万でやっと討伐できる魔族?精鋭30万を皆殺しの魔王?いやいやいやいやそれはまずいよ。ハードモードじゃん。魔王めっちゃ強いじゃん。おれは逆に今まで生き残った人類マジRESPECTするよ。俺はこめかみがピクピクしているのを自覚しながら、
「で?俺たちは勇者として魔族どもと戦えと?」
「いいえ。帝国とも、戦っていただきます。」
「「はぁ!?」」
っえまだあんの!?この王族ども俺たちを使い倒してポイする気だな!って帝国ってなに?
「帝国ってなんですか?」
「それは300年前の大進行の時に疲弊した近隣諸国が手を取り合いできた国です。」
「でなんで帝国とも?」
「帝国の領土の殆どは北に位置しており、土地が豊かでは無いため王国、魔国に対しても宣戦布告し我が国に関しては、戦争を仕掛けては領土を属州とし、領民を奴隷としているため戦うしかないのです。」
帝国はクズっと。メモメモ……
まー理由わかったけど、こういっちゃなんだけどおれたち戦う必要なくね?まあこっちの人たちには悪いかも知れませんが~ここは逃げるが勝ちですねはい。
「それで俺たちは帰れるのですか?」
「それはできん。」
ここで王さま乱入かよ。知ってんだぞ!さっきからそわそわしやがって、きっと説明長くて焦れたんだな、構ってちゃんか!?
「それは、なぜですか?」
「帰還させる方法を知らぬからだ。」
はい、退路絶たれましたー。俺はいまおそらくムンクの叫びのような顔になっているだろう。拝啓、じいちゃん俺は異世界で王族たちにボロ雑巾のように使われ死ぬでしょう。その時は、幽霊になって呪うので応援しててください。
「そう悲観するでない。もちろんただで戦えとはいわん。武勲に応じて金が欲しければ、浴びるぼどの金を用意しよう。美男美女がほしければ、毎晩毎晩取っ替え引っ替え抱けるようにしよう。教育にも、最高の教師をつけよう。我が国は、勇者に対して一切の妥協はしないつもりだ。どうか、この国を救ってはくれぬか?」
そう言うベルクリウス様。フムフムソウデスカー。カエレナインダッタラシカタアリマセンネー。これで俺は、いや2-Aの意志は固まった。
「「「その話乗った~!!!」」」
単純な2-A諸君である。……ちなみに一番絶叫していたのは、先生である。
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