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召転のルディア  作者: NTIO
壊れゆく日常
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クローバー

「ヴィオラちゃんもう暗くなり始めたから帰ろうか。 」


俺に抱きついているヴィオラちゃんの背中を優しく叩いてからそっと離す。

顔が少し涙で汚れてしまっているので、手で拭う。


「うん! 」


眩しい程の笑顔でヴィオラちゃんは頷く。

うん、もう大丈夫だ。


俺はヴィオラちゃんの手を取り、歩き出す。


「ヴィオラちゃん、どうして丘の上にいたの? 」


エルさんが1人でヴィオラちゃんを外に出すはずがない。

いつもは俺が迎えに行っているが‥‥。


「ルディから、もらった四つ葉のクローバー落としちゃったの。 それでね、探しにいったの 。」


もしかして、エルさんに秘密で行ったのか。

それで、あいつらとあったと。

最悪だな。


「ん? でもよくあの中から見つけられたね。 」


草や花が生い茂っている丘から落としたクローバーを見つけ出すなんて尋常なことじゃない。

ヴィオラちゃんは何かスキルを持っているのだろうか?


「ううん、本当は落としてなかったの。 ポケットに入れてたの忘れちゃってたの。 」


ポ、ポケットって。


「あはは、おっちょこちょいだねヴィオラちゃんは。 」


笑いながら歩いているとヴィオラちゃんの家が見えてきた。

でもなんか騒がしい。あ、ヴィオラちゃんか。 ヴィオラちゃんの話からに勝手に出てきたっぽいしな。勝手にいなくなった上に日が暮れるまで帰ってこないとなるとそりゃあ心配するだろう。

エルさん、心配しているんだろうなーと思いながらヴィオラちゃんのうちに向かっているとドタバタと男の人が出てくる。


「エル! 俺は外を探してくる! エルは家で待っていてくれ、ひょっこり家に帰ってくるかもしれない! 」


もしやあれは、ヴィオラちゃんのお父さんだろうか?

黒髪をした骨肉隆々の強面の大男だ。

ヴィオラちゃんはお母さん似だな、よかったよかった。


すると振り向いたヴィオラちゃんのお父さんとが此方を見た。


「ヴィオラ! 」


ヴィオラちゃんを見たお父さんは、ヴィオラちゃんに駆け寄り抱きしめる。

ヴィオラちゃんは苦しそうにしてるが嬉しそうだ。


「よかった、本当によかった。」


よかった、よかったと泣きながら繰り返しながら泣いている。

こういうのを見ているとほっこりする。


「あなた、ヴィオラ帰ってきたの!? 」


俺がヴィオラちゃんに親子に癒されているとお父さんの声を聞いたか、エルさんが家から飛び出してくる。

エルさんはヴィオラちゃんとお父さん、特にお父さんのを見て腰に手を当てため息をついた。


「あなた、大の男がだらしないわよ。 まったく。」


先にお父さんが泣いてしまったため、涙が引っ込んでしまったのか若干涙声でそういった。


「うるさい! ヴィオラ〜! 」


「お父さん苦しいよ〜」


お父さんは暫くヴィオラちゃんを抱きしめ泣き続けたのだった。


‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥



「お前がルディアくんか、妻から聞いている。」


泣き止んだお父さんはヴィオラちゃんを離して目を赤くしながら言ってくる。

しかし何故だろうかさっきから睨まれている。

恐らくこの人は親バカだ。しかも相当の。その親バカが、まだ幼い娘がこんなぷりちーな男の子と帰ってきたとなると気が気ではないのだろう。

ここは、先制ジャブ叩き込んでおこう。


「初めまして、お父さん。ルディア・ゾディックと申します。 娘さんとはいつも、親しき友人として遊ばさせてもらっています。」


「お、おう。」


お父さんが突然の挨拶に動揺している。

それはそうだ、見た目幼い子供がここまで礼儀正しい言葉使いをする事はきみが悪いを通り越して思考停止するレベルだ。

ここに付け入らせてもらおう。


「娘さんは、私の家の裏にある丘に居りました。 少々虫が付いていましたが、問題はありません。 2度と寄り付かないよう致しましたので。」


「なに!? 虫だとおお!! それはどこの虫だ! ヴィオラのこの傷も虫がやったのか!直々に叩き潰してやる! 」


あ、地雷踏んだ。

お父さんの体から怒気が吹き出している。

このままでは俺が我慢した意味がなくなってしまう。

止めなければ。


「その必要はないかと。 一生残る傷を与えましたので。 」


3歳児にお尻ぺんぺんと、シッペでお仕置きされたという一生心に残る傷をな。

一生弄り倒してやる。

フフフフ


「お、お前なにやったんだよ。 すこし、本当にちょびっとだけその虫に同情するぞ。」


おっと、心の笑いが漏れてしまった。


「しかし、アルスんとこの息子は成長が早い早いって聞いてたが此処までとはな。お前本当に3歳児か? 」


此方を探るような目を向けてくる。

だが無駄だ。俺のポーカーフェイスの前には通じない。


「まあいい。ヴィオラを送り届けてくれた事は礼を言う。 だが、ヴィオラに妙なことをしてみろ、その時はお前を殺す。」


殺気を込め睨みつけてくる。

この目、殺ったことのある人だ。この人只者じゃない。


「あなた、こんな子供にいい大人がなに言ってんのよ。 いい加減親バカも、大概にしなさい。 ルディくんゴメンね〜、こんなこと言ってるけどいい人なのよ。 許してあげてね? 」


俺とお父さんがにらみ合っているとお父さんの頭がエルさんにはたかれた。


「いいですよ。 お父さんもヴィオラちゃんを気を使ってのことですもんね。」


「ほら、あなたも見習いなさい。 ルディくんの方が大人よ。」


「そ、そんな事ない! 」


叩かれた頭を抑えながら、顔を赤くして言う。


「はあ〜、いつまでたっても子供ね。ルディくんもそろそろお家に帰ったほうがいいんじゃないのかしら? きっとお母さんが、心配しているわよ。」


確かにそうだな、もう日が沈んだ。

そろそろ帰るとしよう。


「そうですね、じゃあ僕は帰ります。 さようなら。」


「はい、じゃあまたね〜 」


エルさんにそう言って家に向かって帰る。

ヴィオラちゃんの家から暫く離れた頃に、「あいつは何かおかしい、気をつけなくては。」

という声が聞こえた。

お父さんには警戒されちゃったかと思いながら家に歩いていくのだった。


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