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召転のルディア  作者: NTIO
壊れゆく日常
213/220

別大陸の住人②


「やっぱり知りませんか。ふむ。すいませんが貴方の質問に僕が答えたんです。次は僕の質問に答えて貰います。貴方と兵士達が先程から言っていたゲートとはなんですか? 」


「ああそうだったな。だがゲートを知らないのか? 一般常識だと思うのだが? 」


 イリスは俺の質問に質問で返してきた。俺は首を傾げているイリスの端正な顔立ちを見てイラっとする。わからないから聞いていると言うのに、質問で返してくるなんてなにを考えているんだこの人。目の前であれほど人をザックザック殺しまくってた人にそんな態度をとれるとは肝が座っているのかいないのか。普通自分達にその矛先が向かないかとビクビクして素直に答えるものなんじゃないですかね。


 はぁ、俺が円滑に進めるためにやった行動は無意味だったか。いや、それとも恐怖が振り切れておかしくなったか? どっちでもいいが、フィアリナとガウスの命を守る立場にあるんだったらもっと言動に気を使ったほうがいいぞ。うちの使徒達が殺る気が上がるんで。


 後ろに下げていたアリア達に目を向けてみると、今にもイリスに飛びかかろうとしていた。俺はそれを見て再びため息を吐いてからこれは1つ貸しですよ? と呟き、イリスに冷たい声色で話すようにと促す。これで一応はアリア達の暴走は避けられる筈だ。多分、な。


「いいですから、答えて。」


 するとイリスは突然目が虚ろになり、傾げていた首を元に戻して話し始めた。どうしたのか分からないが俺は疑問に思いながらも取り敢えず、イリスの言葉に耳を傾ける。考えてもどうせ分からないからな。


「分かった、答える。ゲートとは膨大な魔力よって起こされる現象の事だ。ある地点とある地点が魔力によって結びつけられたゲートを潜ればこの世界のどこかに出るらしい。」


 イリスはそう言い終わった後、目に光が戻り、あれ? といった顔になり口に手を当てて首を傾げている。その動作から先ほどのはイリスの意思とは違うもので尚且つ、今まで経験したことのない予期せぬものだったと言う事が分かったが、今の俺にはどうでもいい情報だ。頭の片隅に入れておくだけにしよう。


 さてそれはともかく、どうやら、あの黒い靄、いやもうゲートと呼んだほうがいいか、それはともかくゲートは魔力によって起こるどこでも○ア的なものらしい。そしてゲートはこの世界のどこかとどこかを繋げていると。つまりはあの先はこの世界のどこかに繋がっている訳か。


 俺はそこまで考えて口元に笑みを浮かべた。


 ふふふ。全部揃ったぞ。これで俺の仮説は現実になった。これによって他にも色々と可能性が出てきたわけだが、今は重要な情報をくれたイリスにもイリスが今欲しいであろう情報を提供してやるとするか。ギブアンドテイクってやつだ。


 俺はもう目的は達成したので、スキルを解き魔剣をスッと消してからゲートに向けていた目線をイリスに戻す。


「この世界のどこか、ですか。なるほどね。では先ほどの貴方の質問に答えます。リーデンブルグ王国とは人間のみの国です。そして付け加えるとするならばこの大陸に人間と魔族以外の国家は存在しない。」


「あ、ありえない! 嘘をつくな! 」


 イリスは俺の言葉を聞いて目に見えて狼狽える。フィアリナとガウスも目を見開き、何だって!? と言っているかの様だ。それに対して俺は首を横に振って答え、イリス達には聞きたくないであろう事実を続ける。


「いいえ、僕は嘘をついていません。一度王城で、地図を見たことがありますがあそこには僕達のリーデンブルグ王国、帝国、そして魔の樹海の中にある魔国グルーヴのみが描かれ、その周りは海でした。」


「なん、だと。」


 イリスはがっくりと項垂れ、地面に手をつく。もう絶望したと体現している様な体勢だ。耳も垂れているし、よっぽどショックだったのだろう。それを見たフィアリナとガウスも一緒に落ち込んでいる。


 俺はそれを見て、腰に手を当ててはぁとため息を吐く。


 まあ俺も突然こうなったらそうなるので気持ちは分かるが、一応はそのおかげで助かる事が出来たんだから前向きに捉えたほうがいいと思うぞ。それにまだ小さくはなってはいるけどゲートは開いているんだからまだ帰還は可能だ。


 縮むスピードとゲートの大きさを考えて、あれが完全に無くなるまでの時間は後10分強といったところだし、少し話をしたとしても余裕で帰れるだろう。まあ、聞くところによるとあの先は絶賛戦闘中らしいので戻る気が起こらないのかもしれないがな。


 イリス達の反応を見るにあっち側に帰りたいという思いがある様だし‥‥うん、出血大サービスだ。情報を提供するのに加えて、ゲートにプラズマキャノンを打ち込んであっち側を完全な安全地帯にして上げよう。その時に兵士と一緒にお仲間までも一緒にバイバイすることになるけど、背に腹は変えられまい。


 そうと決めた俺はしゃがみこんでイリスの肩に手を置いた。


「イリスさん落ち込んでいるところすいませんが、僕の推測なんですけど聞きますか? こうなった事について少しはわかると思いますが。」


「頼む。今はヒューマンといえどもお前を頼る他にない。」


 イリスは顔を上げ、懇願する様に頭を一度下げる。それを見た俺は1つ頷いて話し始めた。


「はい、ではまず王城で見た地図、貴方達の会話の中に出てくる言葉、この兵士達の装備、

そしてゲートの事から考えて、貴方達は僕に貴方達が元いた大陸から、今僕のいる大陸に召喚されたものと推測できます。」


 俺の言った言葉に前後から息を飲む音が聞こえてくる。アリアとアイリス、イリスとフィアリナ、ガウスはまさかそうなっているとは想像も出来なかったらしい。イリス達はともかく、アリアとアイリスはこの大陸に亜人がいないことを知っているんだから確証はもてなくともこのことにたどり着いてもいいと思うんだけどな。


 まあ、アリアとアイリスが初めて見る亜人に過激な反応を示さなかっただけでもいいとするか。恐らく、狂気感染がいい意味で作用しているんだと思うが、もし過激な反応を示し人じゃないとか魔物だとかで切り掛かったらどうしようかと密かに思っていたんだ。よかった。ふぅ。


 俺はアリア達に向けていた視線をイリスに戻す。


「色々とそう結論付けた理由はありますが大きく言って3つ。1つはこの人達が存在していない国の軍隊を名乗り、高品質の装備を身に纏っている事。これ程のものを揃え尚且つあれほどの兵士の練度を考えればどこかの過激集団という事はないでしょう。」


 俺はそう言ってから足元に落ちている兵士達が装備していた鎧の破片を手に取って、太陽に翳して見たり、コンコンと叩いてみたりしながら続ける。


「それに全ての鎧にこういった紋章が付いているし、品質も色も全て統一されている。ここから冒険者という線も消えました。冒険者はこういった格好は絶対にしませんからね。という事はです。この人達は自分たちで言っていた通り国の軍隊なのでしょう。しかもかなりの大国。」


「すごいな。これだけの情報でそこまで言い当てるとは‥‥。確かにレンティバー王国はヒューマンの国では第2位の規模を誇る。しかし、君は本当は人間ではないんじゃないか? なんていうか、その‥‥。」


「子供らしくないですか。よく言われます。ですが今はどうでもいい事です。続けますね。」


 顎に手を当ててチラッチラッと視線を向けてくるイリスに、手に持っている鎧の破片をベキっと砕きパラパラと地面に粉々になった破片を捨てて威圧する。全く、この人は俺がさっきやったフォローの意味も分かっていないのか。俺の話を遮ったらうちの核弾頭達が爆発するんですってば。さっきまで殺りまくってたからいつもより沸点が低いの! 今度からアホエルフ 略してアホフって呼んでやる。


「すまない。頼む。」


 俺に強く言われたイリスはまた耳を垂らしてショボーンとしながらすまないと頭を下げた。俺はそれを見て1つ頷き、人差し指を立てて口を開く。


「そのレンティバー王国は大国という事になりますが、これにより僕が王城で見た地図に国が小さすぎて載っていなかったという線は消えます。とすると貴方達がいた所は別世界、別大陸、平行世界という事になりますが、そこに残りの理由、レヴィ、ああレーヴァテインですよ? とゲートを加えると別大陸に絞る事ができる。」


「レーヴァテインを正しくレーヴァテインと知っている事と貴方が言った言葉、”ゲートとは膨大な魔力によって起こされる現象の事で、ある地点とある地点が魔力によって結びつけられたゲートを潜ればこの世界のどこかに出るらしい”を考えると別世界と平行世界という事はないのです。」


「おそらくですが、僕が行った召喚魔法がなんらかの異常をきたし、本来の効果とは全く異なるものを引き起こしたのでしょう。そしてそれが貴方達がいうゲート。僕は結構魔力を込めたので、それでゲートが発生し貴方達のいた大陸と僕のいる大陸を結びつけたんでしょうね。」


 俺は推測を全て一気に話して、あー疲れたと首をゴキっと鳴らす。久々にこんな長々と1人で喋った気がするし、頭も物凄く使った。頭をよく使った時に起こる独特な体が火照る様な現象も起きているので帰ったら甘いものをたらふく食べよう。自分へのご褒美だ。


 OLのようなことと言うことなかれ、人とは自分へのご褒美がなければ死んでしまう生き物だと思うのですよ。遊泳性のサメが泳ぎ続けないと死んでしまう様に俺はご褒美を自分に与え続けないと死んでしまう病気なのだ‥‥!


「な、なんとそんな事が起きているのですか。しかし別大陸とはファランジアの学者達が言っていた説は正しかったという事か。ならばこの地で‥‥」


「イリスどうしたの? 」


「苦しいぞイリス。」


 俺が何を食べようかな〜っと考えているとイリスが考え込み悲しげな目を浮かべてから、何か決意をした様な眼差しになり、ギュッとフィアリナとガウスを抱きしめた。先ほどまでのなんというか悲しみの目からは考えられない変わり様だ。一体何を決意したのか分からないが、さっきのあれよりは断然いいだろう。


 悲しむのはいいがそれだけでは何もできないからな。誰が助けてくれるわけでもないし、自分で切り開くしかないのが人生って言うものだ。その事が分かれば自ずと自分なりの道が見えてくるだろう。さて、そんなイリスには俺からささやかな贈り物を送るとしよう。

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