もっと苦しめ
俺は口元に浮いた残忍な笑みを隠そうともせずに地面に這い蹲っている兵士達の先にいる、1人だけ立っている者の所へと歩み寄っていく。俺の進路上にイリスがいたが、イリスは俺が近づくとペタンと地面に座り込んでしまった。俺はそれに足を止めないでちらりと視線を向け、アリアにここでガウスとフィアリナを下すようにジェスチャーを出してから再び兵士達へと目線を戻す。
後ろからガウスとフィアリナ、イリスの声を聞きながら俺は1人だけ立っている者の所にアイリスとシルヴァスを引き連れながらたどり着いた。その者、ちょび髭は自分の周りで這い蹲っている兵士達へと声を荒らげる。
「ど、どうしたっていうの!? 」
「お、恐れながらマイラー様我々はなんらかの力によって押さえつけられていると思われます。今すぐお逃げを‥‥」
ちょび髭の問いかけに声を震わせながらも俺の目の前にいる兵士がそう答えた。俺はそいつを冷たい眼差しで見つめながらその兵士の足に人差し指を向け、そこからプラズマキャノンを放つ。人差し指から解き放たれたプラズマキャノンは鎧を纏っていることなど物ともせずに脚を突き破り、地面までも大きく穿った。
「アァァァアアァァ!! 」
脚に大穴を開けられた兵士は到底人の口から出しているとは思えないほどの悲鳴を上げた。俺はその兵士の頭の上に足を乗せてグリグリと踏み躙り、兵士の傷口に目をむける。その兵士の傷口からは血が出ておらず、ただ穴が空いているだけだ。プラズマキャノンで傷口を焼かれて血が出ないのだろう。それを見て俺は一度足に込める力を強くしてからよしよしと頷く。
これで、出血死でぽっくり死にましたという事は起きない。身体中を穴だらけにしてくれる。俺は口元にずっと浮かべていた残忍な笑みをそのままに俺を微動だにせずに見ているちょび髭へと目線を向けた。するとちょび髭は顔を引き攣らせ、へたり込む。
「ひっ! 」
ちょび髭の股間から水たまりが出来てきている事から、失禁した様だ。俺はそれを見てフッと鼻で笑ってから再び足元の兵士に視線を戻す。
「誰が口を開いていいって言ったんだ? 胸糞の悪いものを見せた事と勝手に口を開いた事に対するお仕置きが必要な様だな。」
「たす、たすけ‥‥」
兵士は顔を涙でぐしゃぐしゃに濡らしてそう言ってくるが、俺は無視して重力操作で地面から土を持ち上げ、その持ち上げた土を槍状に圧縮し、その槍を手に取り振りかぶる。
「お前らがやっていた事と同じことを味あわせてやる。」
俺はそう言うのと同時に槍を腹目掛けて振り下ろした。槍は鎧を貫き肉を貫き地面に刺さって止まる。しかし、俺はそこで止めずに傷口を広げる様にグリグリと動かしていく。ブチュブチュという音を聞きながら俺はただひたすらに傷口を広げる。ここでやめるのは勿体無いからな。この人も楽しんでいる様だし、やめる理由がどこにもない。
「ギャァァァァ!! 痛い痛い痛い、腹がァァァ!! 」
「アハハハハハ! 痛いか! 苦しいか! もっとだ! もっと苦しめ! お前らに串刺しにされて見世物にされた人の痛みはこんなものじゃないぞ! 」
「辞めろぉぉぉぉ!! あああああ!! 」
俺が更にもう一本手に槍を生み出して左腕に槍を振り下ろしていると周りで這い蹲っていた兵士達の声が聞こえてきた。俺はその声に槍で刺した兵士の傷口を広げながら耳を傾ける。
「な、なんでことを‥‥あいつは本当にヒューマンの子供なのか!? 」
「やめろ! その手をとめろ! おい! 聞いているのか! 」
「あれではまるで、残虐非道な魔族‥‥アアァァァアアァァ!! 」
最後の1人が俺の事を魔族呼ばわりしようとしたが、俺の後ろから飛び出したアイリスに腕を切り飛ばされて悲鳴をあげる羽目になった。それを見て声を上げていた兵士達はおし黙る。突然のアイリスの行動に声も出ないのと、そのアイリスの刃が自分に向くのが怖いのだろう。フフフ、どうしたんだ? 結局は自分が大事か? いいよいいよ! それが人間ってものさ! もっとさらけ出して自分の仲間達が信じられなくなるといい。クハハハ!
俺は口元に笑みを浮かべて槍に力を込めながらそれにしてもとアイリスに目を向けてみるとアイリスの目は紅く光っていた。
それを見た俺はあ〜あと俺を魔族呼ばわりしようとした兵士へと目を向けた。何やってくれてんだよ、アイリスカンカンに怒ってんじゃないか。兵士達にかけている俺の重力なんてものともしないで兵士に足を乗っけているし。まあ、兵士程度を押さえつける程度の重力じゃあアイリスは行動を阻害されないのかもしれないけど。それにこれは、何かで鬱憤をはらさせないとまずいぞ。でないと絶対に暴発すること請け合いだ。はぁ〜あ、なににしようかなぁ〜
「ルディを魔族呼ばわりなんて‥‥いい度胸だね。あんな下劣で愚鈍で能無しとルディを一緒にしないでくれる? 」
「ひっ! やめてくれェェ! 」
俺がどうしようかなと悩んでいるとアイリスは残っていた方の手を切り飛ばして、最後に首を刎ねた。しかしアイリスの攻撃の手は止まらない。もう息絶えた死体に次々と攻撃を加えていく。切りつけるたびに血が飛び散ってアイリスに掛かっているが、アイリスは気にしていない様だ。
いや、血が掛かっている事に気づいていないのか? まあいいか、はぁ学園都市に入る時にどう説明しようかな? あ! 魔物の返り血ってことにすればいいか。うんそうしよう。それにしてもアイリスは容赦ないな。死体にあんなザックザックやりまくるなんて。ま、俺が言えたことじゃないけど。さてアイリスはああだけど、もう1人気になるのがいるんだよな。そっちの方はどうなっているのか。
俺は気になるもう1人、アリアに目を向けるとアリアも目を紅く光らせて体に怒りのオーラを纏わせながら兵士達を睨みつけていた。ギリギリとここまで音が聞こえるほどに拳を握りしめている。アリアもかなりお怒りらしい。
ではなぜアリアは兵士達に突っ込まないのかは、きっとオリジナルのアイリスとの違いだろう。‥‥冗談はさて置きただ単にアイリスが勢いよく飛び出してあんなザックザックやるから乗り遅れたんだな。そして目の前でやりまくっているアイリスを見て、行きたくても行けない自分にイライラし更に鬱憤が溜まると。
‥‥なるほど、それであんなにイライラオーラを出しているのか。これはアリアにもこいつらの始末頼んだほうがよさそうだな。本当は俺が1人1人丁寧に心を壊しながらじっくりと殺りたかったんだけど、半分ほど始末を頼むか。
アリアとアイリスを見たシルヴァスはさっきまでノリノリだったのにも関わらずシッポを垂らして怯えているし、イリス達も抱き合って目を閉じることも出来ないというほどに怖がっているしな。
そうと決めた俺は足元の血だまりを作っている兵士に視線を向け、こいつを始末してからにしようと今持っている槍から手を離して新たな槍を生み出して口を開く。
「ほら、こんなものじゃないぞ? もっと苦しめ。」
「あ、ああ、あ‥‥‥」
俺が槍を振り下ろそうとすると、その兵士は口から血の泡を吹いて死んでしまった。目から溢れた涙からは死ぬ間際どれ程の恐怖を感じていたかが伺える。だが俺は満足しない。もっともっと恐怖して貰いたかったのに‥‥。
「ありゃ、死んじゃったか。弱いなぁ、脆いなぁ、もっと苦しんで死ねよ! 」
俺は手に持った槍をぽいっと捨ててから、死んだ兵士に人差し指を向けた。そしてそこからプラズマキャノンを何回も何回も発射する。肩、手、胸、首、頭と全てを吹き飛ばした。もう兵士の死体は下半身の一部しか残っていない。俺はそれを見て邪魔くさいと思い、手を翳してそこに先ほどよりも大きいプラズマキャノンを発生させる。
跡形もなく消し飛ばすためだ。もうすでにこの死体に用はない。ならこの世に存在していたのかわからない程に跡形もなく消してやる。埋葬なんかしてやるものか。ゴミカスにはちょうどいい末路だ。消えろ。
「やめてくれ! 俺たちが何をしたって言うんだ! ただヒューマンのなりそこないの亜人を狩っていただけなのに! 」
「狩っていた? 」
俺が手からプラズマキャノンを放とうとしていると1人の兵士が声を上げた。それを聞いた俺はプラズマキャノンで死体を消し飛ばしてから声が聞こえてきた方に顔を向けて首を傾げる。狩っていた、その言葉が気になったからだ。その言葉からしてこいつらがなにをしていたのか大体想像つくが一応聞いおかなくてばならないからな。
すると首を傾げた俺を見てなにを勘違いしたのか、顔に自信の様なものを漲らせて声を張り上げ答えてきた。
「そ、そうだ! 俺たちは偉大なる国王陛下のご命令で亜人を狩って奴隷にしているのだ! それを邪魔しようとは極刑に処されることを覚悟出来ているのだろうな! ガキ! 」
俺は兵士の言葉を聞いて目を見開き、顔に手を当てる。狩っていたという言葉を聞い時にもしかしてと思っていたけど、やっぱりそうか。こいつらイリス達の村だか都市だか国だかを襲って亜人達を奴隷にしているらしい。なんとも胸糞の悪い話だ。
確かに奴隷というものがこの世界において重要な労働力として扱われているのは知っているし、借金をしたものを奴隷に落とし売ることでその時の売上で借金を賄ったり、犯罪者に対する罰として奴隷という制度が必要なことは分かっている。
だが、残念ながら全ての奴隷がそう言ったもの達ではない。盗賊に誘拐されたりした所謂違法奴隷が全奴隷の三分の一を占めている。もちろん王国はそれに対して対策をとっているが行き届かないのが現状だ。
だから奴隷市場にそういった違法奴隷が出回り、それに対して国が歯痒い思いをしているのだが。まさかこいつらの国は国が主導して奴隷狩りをやっているとは。やっている事は帝国と同じだが、実際に目の前でみるとこう感じるものが違うな。ククク、なんだか笑えてきたぞ。
なんだかおかしくなってきた俺はお腹を抱えて笑い出す。その異様な光景に生き残っている兵士、イリス、ガウス、フィアリナは固唾を飲んで見守る。だが、俺は見られていることを知りながらも笑い続ける。
おかしい。本当におかしい。自分たちが奴隷狩りなんてことをしておきながら俺に命乞いをしてきたカスも、俺が死体を消し飛ばそうとした時に必死な形相で止めてきたカスも何もかもが笑える。本当に笑える。笑えすぎて殺意がとめどなく湧いてくるよ。
「ククク、ハハハ、アハハハハハ!! そうかそうか、お前らはそういう奴か、そしてお前らのいう国王陛下とやらはクソ野郎らしいなぁ! 」
「き、貴様! 国王陛下に対する侮辱断じて許さんぞ! 取り消せ! 」
俺の言った言葉に所々から取り消せとか、殺してやる! という言葉が上がった。それを聞いた俺は煩いゴミが騒いでいて耳が痛くなってきたので、取り敢えず1番近くにいた兵士の足を蹴り砕く。
「黙れ。」
「俺の、俺の足がぁぁぁ!! 」
その兵士は黙らせるために蹴り砕いたというのにも関わらず更に大きな悲鳴を上げた。俺は煩いなと呟いて眉を潜めながら黙らせるために二度三度と顔に蹴りを入れていく。
蹴りが大体10回を超えた頃からだろうか、鳴き声が止んだと思って見てみたら首の骨が折れて死んでいた。どうやら力加減を誤ったらしい。俺はそれに対して冷たい目を向けてからアリアとアイリスに視線を向ける。
「アリア、アイリス聞いたか? 」
「はい、坊っちゃま。とんでもない輩共です。」
「国で奴隷狩りなんて、そんな国滅びればいい。」
アリアはガントレットをガチン! ガチン! と打ち合わせて目に殺気を宿らせながら答え、アイリスはもう原型を留めていない肉塊に剣を突き刺しながら淡々と感情の篭っていない声で答えてきた。それを見た俺は足元に転がっているものを蹴っ飛ばしてから、1番手近なゴミに目を向け歩み寄る。
「俺は半分を殺る、アリアとアイリスはもう半分を好きにしていいぞ。鬱憤が溜まっているだろう? あ、あのちょび髭は残しておく様に。 」
「「はい! 」」
「来るな、来るな、来るなァァァ!! アアアア!! 」
「俺の脚がァァァ!! 」
アリアとアイリスは元気よく頷いて、各々兵士へと飛びかかって行った。アリアとアイリスが思い思いに兵士達に攻撃しているので辺りに血飛沫が飛び交っている。相当鬱憤がたまっていたんだなぁ。まあ、こんなゴミ共をサンドバックにして晴れるんだったら遠慮せずやってくれ。でも数には限りがあるから大事に使えよ? さて、俺もかなりたまっているんだ。相手して貰おうか。
俺はニィと笑みを浮かべて、アリアとアイリスから視線を逸らして俺の分のゴミに目を向ける。
「さてと、俺も殺ろうか。」
「「「ひぃ! 」」」
ゴミ共は俺に見られて情けない悲鳴をあげた。そんな怖がらなくていいのに。はじめからそんなに怖がっていたら俺が恐怖を与える余地が減るじゃないか。う〜ん、でもいいか。それならば少ない余地を上質な恐怖で埋めればいいんだから。




