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召転のルディア  作者: NTIO
壊れゆく日常
202/220

図書館に行こう②


俺は転生して此の方、風邪を引いた事がない。これは今考えてみれば異常なのかもしれないな。たまに俺って風邪引いた事ないんだよね〜という事をひたすらに自慢してくる輩がいるがそれとは俺は性質が違う。


風邪引いた事がないと言っている輩は確かに自分の記憶の中で風邪にかかった事はないのかもしれないが物心がついていない子供の頃にかかった事はあるはずだ。つまり人間が風邪を引かないなどあり得ないのだ。だが俺は違う。胎児の頃から物心をつき記憶を持っていてその記憶の中に俺が風邪を引いたという事実はないのだ。なんなら母さんのなにからなにまで全て覚えて‥‥オッホン! 危ない危ない。変な事を言うところだった。ただあの頃の俺は初めてみた生命の神秘に少し興味津々だったとだけ言っておこう。


さて、話が逸れたがつまりは俺はなにかしらの影響で風邪を極めて引きにくいもしくは全く引かない体になっていると予測する事ができる。そしてその影響を与えているもので1番可能性が高いのは俺のステータスだ。というかそれ以外に考えられないからな。絶対にそれだろう。


しかし職業の特性はレヴィから教わり、スキルの詳細は自分で確認したがその中に風邪をひきにくくなるというものはなかった。では違うのではないかという事になるが、おそらくそれはない。


ここからは俺の予測だが、ステータスには記述されていない項目がありそこに俺が風邪を引いていない秘密が隠されているんだと思う。根拠は魂喰だ。あれは一定の魂を喰らうと進化を促すとあるがその一定が記されていない。


だから予測できずに戦闘中に進化を引き起こしてピンチに陥った事があるわけだが。あのピンチが今ここでこの謎を解くカギになるとは人生分かったものじゃないな。ま、時間があったら調べてみよう。自分の体の事なのに分からないじゃあ気分が悪いからな。


俺が空を見上げたままそんなことを考えていると肩を何者かに後ろからガシッと掴まれた。俺はなんだと空から視線を落として後ろに振り向く。するとそこにはにこやかな表情を浮かべたグレイがいた。グレイはずっと後ろの方でゾンビのようにう〜あ〜と言ってこれまたゾンビのような足取りで後をついてきていたのだが、どうやら誰かに蘇生されたらしい。俺はとりあえず蘇生し復活したグレイに向けて笑顔を向けた。


俺とグレイは暫くお互い微笑み合っていたがその空気をグレイが破り、口を開く。


「ルディア何か言うことあるか? 」


そう言ったグレイの眉はピクピクと動いており、心中が決して顔に浮かべている表情とは同じではない事を伺わせる。きっと俺がグレイを食堂に生徒会への供物として置き去りにした事に怒っているのだろうが、はっきり言って気絶していたのは自業自得だし、そもそも俺は報酬を払わない奴を助けるほど優しくはない、男性限定。あ、ここテストに出ますからね。ちゃんとノートにメモっておいて下さい。


それは兎も角、俺はこう考えているのでグレイに言う事はただ一つだ。俺はその言う事を片手を上げて元気に言い放つ。


「おっす! 」


「おっす!じゃねえよ! 俺だけ取り残しやがって! この! この! 」


俺の言葉を聞いたグレイは声を荒らげてから俺に殴りかかってきた。だが俺はそれらの攻撃全てをするすると避ける。1発2発と避けて大体のグレイの攻撃スピードを理解した俺は後ろに手を組んで目を瞑り、先ほどと同じようにグレイの攻撃を避けていく。


「フフン 目を瞑っていても避けれるわ。」


俺がそう言うと俺の言葉にムキのなったのかグレイは攻撃スピードを上げて腹、顔などなど体のあちこちに攻撃を仕掛けてくるが‥‥。俺はそこまで考えてグレイの攻撃を避けながら口元に笑みを浮かべた。ククク、ムキになり攻撃が単調になればただでさえ当たらない攻撃が更に読みやすくなり俺に当たる確率が皆無になるという事をわからないのか? まあ、わからないか。だってそのためにワザワザ目を瞑って挑発したんだからなぁ〜。ハハハ!


俺は心の中で高笑いを上げ続けながらグレイの攻撃を避け続けていく。そして暫くその俺とグレイの攻防を続き、やがてグレイの体力切れによって攻防は終わりを迎えた。グレイは膝に両手をつき息を荒らげている。俺はそのグレイを見て一つ頷く。


これでグレイの頭も少し冷えた事だろう。あれだけ拳を振るえば怒りも下がり、俺の言葉を聞き入れやすくなる。俺がわざわざ重力バリアで攻撃を受け止めずに避けて、体力切れをさせた甲斐があったというものだ。よし、ここで考えていたカードを切るとしよう。


あらかじめ考えていたカードを切ると決めた俺は未だに膝に両手をついているグレイに話しかけた。


「落ち着いたかな? グレイ。」


「落ちついてるわけあるか! 俺が‥‥」


グレイは膝から手を離して顔を上げ怒声を上げるが、そのグレイの怒声は最後まで続く事はなかった。俺が一瞬の間にグレイに詰め寄り肩に手を置いたからだ。肩に手を置かれたグレイは突如間近に現れた俺に驚き、目を見開くがすぐに冷静を取り戻して拳を振るってくる。


俺は顔面に迫るグレイの拳をパシッといとも簡単に受け止めてから押し返して、グレイの耳元に口を寄せて、口元に邪悪な笑みを浮かべてからおそらくこのプンプングレイをすぐに収める事ができるであろうカードを口にした。


「落ち着いたらもれなく、リザとの仲直りを手伝うぞ? 」


そう言った俺の声色はまるで人を惑わす悪魔の声のようだ。自分でもこんな声が出るとは思っていなかったのでビックリする。ま、まじか俺ってこんな声出せるんだ‥‥。可愛い可愛い声からこのような色々な欲望をかき立てるような怪しい声になるとは人って不思議だな。


これはいい経験をした。声へと込める感情の度合いによっては人に与える印象を操作する事ができるという事か。これを極めれば色々と面白い事ができるかもしれない。今日から夜の訓練メニューにこれも加えるとしよう。


俺はじゃあどうやって訓練しようかな? と考えながら俺の悪魔の囁きを聞いて欲望を掻き立てられ、目にギラギラと欲望の炎を灯すグレイからもう大丈夫だろうと踏んで手をグレイの拳から離した。すると俺から手を離されたグレイは片手で肩を押さえ腕を回して図書館の方へと歩き出す。


「あ、あれ〜? なんか落ち着いてきたな〜うん。よし、早く図書館に行くぞ。早く罰を終わらせたいからな。」


俺はそのグレイの後ろの姿を見てこう感想を抱いた。ちょろい。ちょろ過ぎると。おそらくこのまま育てばグレイはリザ関連で詐欺に遭いそうだ。俺俺詐欺ならぬ、リザリザ詐欺で破産するだろう。あれ? 冗談で考えていたが物凄い現実味があるんですけど‥‥。こ、これは俺が色々と近くで見てやらないといけなそうだ。はぁ〜


「はぁ〜もう、お兄ちゃんは単純ていうか、なんていうか。」


俺が心の中ではぁ〜とため息を吐いていると俺と同じ感想をグレイに抱いたのかリザが腰に手を当ててやれやれとばかりにため息を吐いた。俺はそんなリザに眉尻を下げてあんな妹愛全開なお兄ちゃんがいて大変だなと同情する。だが俺はそこでいや待てよ? となりハッと目を見開いた。


いや待てよ? 他人からみたら気色悪い事この上ないことでもグレイの行動は兄としては普通な事なんじゃないか? だって妹=LOVEはこの世の絶対的な法則と言っていいし、なにより俺も妹が生まれた場合グレイと同等、いやそれ以上の妹愛を発揮する事は目に見えている。ていうかする、これ絶対。うん、グレイは普通だな。正常だ。


そうと気づいた俺は、今まで心の中でキショイ・フォーカスって呼んでごめんなと謝りながらリザへと視線を向けてグレイと仲直りさせるために話しかけた。グレイとの約束もあるしな。


「いいじゃないか、そんなお兄ちゃんでも。 弄り甲斐があって僕はいいと思うな。」


「そうかな〜? 全然そんな事思わないんだけど。」


リザは俺の言葉に顎に手を当てて首を傾げる。それに俺は笑顔を浮かべて、リザの頭に手を置きさっき考えついた声に感情を込めることを早速利用し今はねと言う。


「今はね。 でもいつか大切さが分かる。だからグレイの事を許してあげて。」


「う〜ん。ルディア君がそう言うなら分かったけど。でも人前で私のあ、あ、あの個数を暴露しようとしたお兄ちゃんはしばらく無視しないと気がすまない! 」


リザは俺の言葉に顔を赤らめ、途中まで納得したという表情を浮かべていたが、次第にその顔の赤らみが照れから怒りに変わって声に怒気を滲ませて声を荒らげた。俺はそれを聞いて確かにと頷く。


確かに人前で自分の体にあるホクロの個数を暴露されそうになったらこうなるのは当たり前か。例えるならば部屋にあるエロ本の本数を暴露されるのに等しいだろうからな。少し違うか? いやかなり違うなうん。リザのホクロとエロ本を同じに扱うのは違いすぎるというものだ。


俺は心の中で馬鹿な事を考えているのを周りに悟られないように笑顔を浮かべたまま、怒りのオーラが可視化する程になっているリザへと目線を合わせて話しかける。


「うん、そうだね。思う存分無視してから許してあげて。」


俺はそう言ってから俺の言葉が届いているのかいないのか定かではないリザとその後ろに引っ付いているクロエ、俯いているエルザを引き連れてとっとと先に行って図書館の中に入ったらしいグレイの後を追う。あれこれやっているうちにだいぶ近くなっていた図書館へとカツカツと足音を鳴らして歩いていき、やがて見えてきた図書館のドアを開けて中に入るとそこには想像を絶する光景が広がっていた。


図書館内は学校の設備という事を忘れてしまいそうになるくらい‥‥なんて言っていいのだろうか。俺の凡庸な頭ではこの光景を言い表す事ができない。ただ言える事は想像を絶するそれだけだ。それ程までに凄まじい。図書館の規模としては入り口から見える範囲だけでも膨大な量の本棚とそこに仕舞われている本が見え、しかもそれが3階建てだ。かなりの量の本がある事は確かだろう。しかし、本当にすごいな。カメラでもあればパシャリと撮りたい位だが、この世界にはおそらくないし、あったとしてもマナー違反なので俺は脳内保存するだけに止めよう。


そうと決めた俺は辺りをキョロキョロと見回しながら前の方でこっちに振り返って待っているグレイの元に歩いていると周りからこの図書館の利用者達の声が聞こえてきた。


「ルディアだ‥‥。」


「ルディアが1年ほぼ全員引き連れてきたぞ。」


「図書館を征服するつもりか! 」


俺は最後の言葉を本で頭を隠しながら言った大体12歳くらいの男の子に視線をちらりと向けてからはぁとため息をつく。しませんから。図書館を征服して何になるっていうんだバカアホ。というより苦情でうすうす気づいていたが俺はどうやらかなり怖がられているようだ。ここで俺はなぜ? とかは言わない。大体の理由は分かっているからな。


きっと昨日の俺が起こした事件、通称デスボール事件で色々な噂が飛び交っているのだろう。悪い噂というものは驚くべきスピードで広まるからな。さて〜この噂が障害にならないうちに取り除かなくてはならない。どうしたものか‥‥


俺が頭を巡らせてあれこれ考えていると右手の方にあったカウンターから学園の制服ではない服を着た1人の男性が手をパンパンと叩きながら出てきた。俺はその人を見て首を傾げる。誰だこいつと。しかし、そんな俺の疑問はその男性が次に発した言葉で解決した。


「はいはい、みなさん静かにしてください。ルディア君達には本の整理を手伝って貰いに来ただけですから。安心して、勉強に戻ってくださいね。」


俺は男性の言葉を聞いてああそうか! となり、傾げていた首を元に戻す。なろほど、あれか司書というやつか。図書館には必ずいる固定キャラだな。うん。


俺がそんな事を考えているだろう事はつゆ知らずに散った散ったとやっていてその男性司書は腰に手を当ててふぅと息を吐いてから俺たちに向き直り両手を合わせてきた。


「ごめんね〜。みんななんか君に怯えているみたいで。」


「いいですよ。自業自得なので。それより僕達は本の整理ということでここに来たのですがその本は一体どこに? 」


「ああ、そうだったね。いや〜本当に助かったよ〜。私達司書も必死にやってるんだけど、返却される本の数が本当に多くてね。困っていたんだ。」


俺の整理する本はどこに? という問いかけに男性司書は手をポンっと合わせて一つ付いておいでと言ってから歩き出した。それに俺たちはついていく。


確かにこの規模の図書館とこの学園に在籍している生徒の数とその学園に在籍している生徒の勉強の熱心さを考えるに相当返却される本の数は多いだろう。大人の司書の人たちが必死にやっても追いつかないという事は相当だ。


俺たちはその本の整理を手伝うという事だが、一体今日で終われるのだろうか。すごく、もんの凄く心配だ。いざとなったら能力をフル活用して終わらせる事を厭わないぞ。俺は。


俺がめんどくさくなったら能力を使って楽しようという決意を心の中でしているうちにどうやら俺たちにが整理する本がある場所に着いたようで、男性司書は一つのドアの前に立ち止まった。


「ここにある本全てがそうだよ。」


男性司書はそう言ってからガチャとドアを開けた。するとその中には本、本、本。本だらけだ。本の山と言ってもいいだろう。高価な本をあんな風に積まれると金色に輝く金塊の山に見える俺はきっと心が薄汚れているに違いない。

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