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召転のルディア  作者: NTIO
壊れゆく日常
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あのお方より怖いもの

「グギギギュ! ギゴゲガ!(死ね! 人間風情が! )」


そう叫びながらゴブリンが棍棒を振りかざしながら飛びかかってきた。

それを俺はショートソードを掲げて防ぐ。


「甘い、甘いよ。 お前は、ゲイボルグに到底及ばない。」


そう俺は呟きゴブリンを弾き飛ばす。

弾き飛ばされたゴブリンはおよそ3メートルほど先に着地した。

そのゴブリンに向かってショートソードを突きつけ、ニヤリと笑う。


「もうお前の命は風前の灯だ。」


「グギャギ!?(何だと!?)」


驚愕の表情を浮かべたゴブリンは次第に顔が赤くなっていく。

フフフ、こいつ直情的で怒ると周りが見えなくなる高木タイプだ。

これは勝ったな。


「彩月! そんなんだから、いつの間にか妄想が発動してました。なんて事になるのよ! ふざけないでちゃんとやりなさい!」


内心でほくそ笑んでいると、お叱りの声が飛んできた。


「いや、青山これは挑発であって決しておふざけでは‥‥。」


俺は何とか弁解を試みる。


「言い訳しない!」


俺の弁解は通用しないようだ。ああ、こうして誤審は生み出されるんだなと思ってると怒りから覚めたゴブリンが俺に同情の眼差しを送ってきていた。

その眼差しを見た俺は沸々と自分でも理不尽と思う怒りが湧いてきた。


「お前のせいだぞ。ゴブリン、お前のせいで怒られちゃったじゃないか! 滅してくれる! 行くぞ!」


そう叫び、ゴブリンに向け駆け出す。


「がぎげ!?(なんで!?)」


慌てふためいているゴブリンに向け、頭からショートソードを振り下ろし、真っ二つにした。

ゴブリンを真っ二つにした俺は、フフィーと腕で額に浮かんだ汗を拭って一息つく。

そこに、戦闘が終わるまで見ていた青山がやってきた。


「これで5体目ね、やったじゃない彩月。」


俺たちはゲイボルグとの戦闘から計5回ゴブリンの群れと遭遇し、これを狩った。

もちろんこの大半は、青山が殺ったわけだが‥‥。


「そうだな。しっかし、どこも彼処もゴブリン、ゴブリンゴブリン三昧だ。いい加減俺は、スライムが見たいよ。」


そう本当にゴブリンだらけなのだ。数分歩いたら遭遇するという、脅威のエンカウント率だ。

害虫の王としてブイブイ言わせてるあのお方より多いかもしれない。


「そうね、いい加減殺り飽きてきたわ。たまには別の魔物を殺りたいわね。」


フフフと口元に残忍な笑みを浮かべる青山。

俺はそれを見て決して逆らわないことを誓った。

俺が脳内逆らってはいけないリストに青山を刻み込んでいると、前方の茂みからガサガサと音がして何かが飛び出してきた。


「何だ!?」


「なに!?」


俺と青山は同時に後ろに跳びのき、俺はショートソードとバックラーを構え、青山はいつでも詠唱出来る体制になった。そこで俺はあまりの衝撃に慄きショートソードを落としてしまった。何故なら‥‥


「な、何だこいつは、気持ち悪過ぎる。」


そう、飛び出してきたのは全身まるでヘドロのような色をした俺が大っ嫌いな要素をこれでもかと詰め合わせた不定形生物?だったのだ。その不定形生物は常に脈打ちながらその飛沫を周りにまき散らし、まるで我が道を邪魔をするものなしとばかりにこちらに這いずり寄ってくる。しかもその周りに撒き散らされた飛沫は辺りを溶かしている。


「バカな、そんなバカな! この森はゴブリンとスライムがしかいないはず‥‥。まさかこいつがスライムとでも言うのか!?」


あまりの恐怖に俺は一歩二歩と後ずさる。


「お、終わりだ。もう人類は終わりだ!」


そう叫び後ろに向け駆け出す。

しかしそれを邪魔するもが現れた。


「待ちなさい。どこ行く気?」


俺はまるで子猫のように首根っこを掴まれ、捕獲された。


「嫌だ! 離してくれ! 俺はドロドロしてて汚い不定形な形をしてるのが大っ嫌いなんだよ!」


それを聞いた青山は、はあと溜息をついて掴んでる首根っこを離した。


「じゃあ、私がやるわ。あなたはそこで見ていなさい。」


そう言って、青山はスライムに向け詠唱を始めた。そこでハタと思った。俺は、自分の嫌な物を人に押し付けて後ろで怯えてていいのかと、しかも彼女の後ろで、いいはずがない!立ち上がることを断固拒否する足を殴りつけ、立ち上がる。


「待て!俺がやる。俺は、此処で苦手を克服するんだ!」


「あっそう、じゃあよろしくね。」


ちらっと、彩月の方を見た青山はただそう告げ後ろに下がった。因みに青山はバカだ、バカだと思っていたけど確信したわ。あれは本物バカだわと心の中で呟いていた。


「ウオオオオオオ!!」


俺は恐怖を誤魔化すように叫びスライムに向け、バックラーで体をガードしながらかけていく。

それに反応したスライムはその体から触手を数本ウネウネと生やし龍太を、迎撃する形でドッシリと構えた。


それを見た走ってる途中の龍太は吐くのを精一杯こらえていた。

もう決壊寸前である。


「絶対! 終わったらお前の死骸に吐いてやるからな!覚悟しとけ!」


吐くことは龍太の中では確定事項らしい。そんな龍太とスライムのお互いの距離が5メートルを切った所で、突如龍太の足元の地面がモコモコと盛り上がった。


「え!?」


彩月の驚愕の声をかき消すように、地面から触手が飛び出てきた。その触手は龍太の腕、足胴体に巻きつき捕獲した。


「うわ!ヌメヌメしてる!臭い!クソが!」


触手に捕獲された龍太は、必死に抜け出そうと触手に攻撃するがまるで液体を切ったかのような感触しかしない。物理的な攻撃は効かないようだ。


「こいつ、剣が効かない!?」


驚愕の事実に動きが止まった龍太にスライム躙り寄ってきた。罠にはまってしまったようだ。


「イ、ヤアアアア!!」


気持ち悪い、臭い、気持ち悪い、臭い。苦手なものがズリ、ズリっと這い寄ってくるというあまりの恐怖にただでさえ少ない龍太の語彙力が低下する。スライムがあと1メートルを切った所でついに龍太の心が折れた。


「助けて!ヘルプミー!! 青山さーーーん!!」


「はいはい、今助けるわよ。 大いなる風よ、我が手に集いて、敵を斬り裂け【ウィンドカッター】」


青山の手に出現した魔法陣から鎌鼬のようなものがスライムに向け飛んでいく。その鎌鼬はスライムを切り裂くにとどまらず、まだ足りぬとばかりに後ろに木を数本切り倒してから、消滅した。


スライムが倒されたことで触手から解放された龍太は地面に四つん這いなりながら、息を整えていた。


「はあ、はあ助かったよ青山。」


「どういたしまして。」


こうして俺のスライム初戦闘は人生トラウマランキング堂々の1位を獲得して終わった。


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