表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召転のルディア  作者: NTIO
壊れゆく日常
195/220

学園都市へ


俺はさてと、と起き上がる。本音を言えばずっとこのままゴロゴロしていたい、というより膝枕して貰いながら何も考えずグデーっとしていたいがそうもいかないからな。学園都市に早く帰らないと俺の死体の山を見て起こった色々なことに対して賠償とか求められそうだ。


今日1日営業できなくなったからその分の金出せとか、客足が遠のいたから全ての商品買い取って貰おうかとか言われるかもしれない。ありそうでないようでありそうな話だ。どっちだよ! まあ、そんな事をするのはごく少数だと思うが。


「どうしたの? 」


リザが起き上がった俺を見て聞いてきた。俺はそれに笑顔で答える。


「そろそろ学園都市に帰ったほうがいいと思ってね。僕のアレのせいで色々と大変なことになっているみたいだし、早く学園長達と合流してから学園都市に向かったほうがいいでしょ? 」


俺の言葉を聞いてリザを含めた全員があっとした顔になる。どうやら忘れていたようだ。


おいおい、忘れるなよ‥‥。元々ここに来たのはそれが理由だろうに。あれか? 俺のお仕置きに夢中になって頭からすっぽ抜けたのか? ありえそうだ‥‥はぁ〜


俺ははぁ〜とため息を吐いてから観測眼をここら一帯を対象にして発動する。するとここら一帯の景色が頭の中に浮かんだ。さて、馬車はどこかな?


「馬車は‥‥。」


俺は馬車、馬車と呟きながら探していく。そんな俺を不思議に思ったのかクロエが首を傾げていたが、頷いて納得したような表情になった。俺が魔眼、観測眼を発動していることに気付いた様だ。大体みんなもクロエと同じ様な反応をしている。まあ、観測眼はしょっちゅう使っているからどんな能力か大体分かるか。能力の内容をあんまり他の人に知られるのは避けるべきかもしれないが知られてもねじ伏せられるし、そもそも観測眼は防ぎようがないのでいいだろう。


俺はみんなから意識を外して再び馬車探しに戻る。馬車の周りには2週間の間今まで通り魔物や盗賊を狩るためにエイバに残った500名と他の神軍を集める為にこれまたエイバに残った10名を除いた残りの490名がいるから分かりやすいと思うんだが‥‥。


俺がそんな事を思いながら視線を巡らせていると、見つけた。今ちょうど馬車に近寄ってきた魔物を始末したらしい。神軍の列から光の矢が飛んで魔物を爆散させた。とんでもない威力だな。あのレベルがあと3000人以上と考えると俺は思わず口元に笑みが浮かんでしまう。だが俺はそこでハッとなり、笑みを引っ込めた。こんな事をやっている場合じゃないからだ。


おっと、こんな事をやっている場合じゃないな。こういうのは余裕のある時にやろう。さて馬車は見つけることができたが肝心な位置はどこかな? あ、これってかなり近いじゃないか。なら来るまで待つか。あまりにも遠いようならこっちからビューンって行こうと思ってたんだけど、無駄だったみたいだ。


馬車の位置を確認した俺は観測眼を解き、馬車がいる方向へと目を向けてみんなに話しかけた。


「馬車はすぐ近くに来ているね。もう直ぐ見えて来るかな? 」


みんなが俺の視線を辿って馬車がいる方向へと目を向ける。俺は横目でそんなみんなを見て、そういえばと、ふととある考えが頭に浮かんだ。神軍を見て驚かないかな? と。


490人といえばかなり小規模だがもう軍隊と言っていい。それを王都に行った同級生が引き連れて来たとなると驚くことは請け合いだろう。そしてあれは何か、と聞いてくるに違いない。ど、どど、どうしよう。なんて答えようかな。まさか、はは! あれはぜーんぶ僕を崇めてる人達で結成された軍隊なんだ〜なんて答えられない。あ、そうだ。騎士王だからで通そう。どうせ、アリエル達を俺の私兵と答えてるんだ。それが約500名増えたところで変わるまい。


(全然違うわよ。)


レヴィがボソっと何やら呟いたが俺はスルーし、みんなへと向けていた視線を馬車のいる方向へと戻す。すると遠くに白銀の鎧を纏った集団と、その集団に囲まれた一台の馬車が見えた。馬車と神軍だ。お! 俺が色々と考えているうちに近付いて来ていたみたいだな。よしよし、早く合流して学園都市に行こう。


俺がそんな事を考えていると神軍を見て驚愕の表情を浮かべたクロエが俺の肩をガシッと掴んで揺さぶって来た。


「ね、ねえ! あれなによ! あの軍勢! あれも貴方の私兵なんて言わないでしょうね!? 」


神軍をピシッと指差してそう言うクロエ。あまりの剣幕に俺は色々と考えていた事を言えずにクロエからすーっと目をそらす。それを見たクロエは更に揺さぶりを強くして俺をガックガック揺らしてきた。あ〜目が回る〜。


「私兵なんだ!? ああもう非常識ったらありゃしない! 」


「おいおい、一人一人が尋常じゃなく強えじゃねえか。それがあの数、はっ! さすが騎士王様ってか! ハハハ! 」


俺がガックガック揺らされているのはどうでもいいとばかりにジルコは神軍を見て、スクッと立ち上がり笑い声を上げた。顔に手を当てている手で隠れてどの様な表情をしているのか伺えないが恐らく笑みを浮かべているのだろう。この笑い声で笑みを浮かべていない事なんて有り得ないからな。


「ねえ、クロエ。そんなにあの人達強いの? 」


俺がクロエに揺さぶられて揺れる視界に映るジルコを見てそう思っていると、エルザがクロエに問いかけた。クロエはエルザに問いかけられて俺を揺さぶっている手を止め、エルザへと目を向ける。助かった。ナイスエルザ。


「ええ、その通りよ。あの背を向けている子達が子供の様に見えるくらいには強いわ。まあ、あの子とあの子は別格でしょうけどね。」


「へ〜凄いんだね〜。」


未だに俺から背を向けているアリエルと、ゴゴゴと復活し出しているアイリスを指差して言ったクロエの言葉に、ヴィオラちゃんが凄いんだね〜と分かっているんだか分かっていないんだか声を上げた。


俺が思うに多分あんまり分かっていないんだと思う。だって今の全員直立不動で背を向けている使徒ズと比べられても凄さなんて伝わるとは思わないからな。もし俺がヴィオラちゃんの立場だったら絶対に伝わらない。子供に見えるって、プッ! だって子供じゃんwとか思っていたことだろう。


「なあ、ルディア。聞きたいんだけど、お前にあれほどの大人数を雇う金あるのか? かなり掛かるだろうに。」


グレイがトントンと肩を叩いて俺に雇う金があるのかと聞いてきた。ああ、そうか。私兵って事になっているから俺がお金を出して雇っていると思っているのか。実際は俺の信者達なのと神軍というものの存在を知ったのがつい先日というか昨日なので今の所一銭たりとも払ってないが、私兵という事にしておきたい俺は上空に浮かべている死体の山を指差す。あ、ちゃんと給料は払うつもりだ。その方がモチベーションが上がるだろうからな。


「これで、暫く持つんじゃないかな? 」


「ああ、成る程。その手があったか。」


グレイは俺が指差した死体の山を見て頷く。俺はそれを見て分かってくれたかと安堵してからそれにしてもと死体の山に目を向ける。


魔物を狩っている時にはお金に目が眩んで考えていなかったが、これ程までの大量の魔物の死体を果たして買い取ってくれるだろうか? 死体を収容する場所がない、買い取るお金自体が足りないという事があるかも知れない。まあ、お金がたりないのは小切手みたいな物で済ませるんだろうが‥‥。1番の問題は食べれるという魔物の肉が消費しきれないから買い取れませーん、だ。そんな事になったら俺の努力が無駄になってしまう。ま、大丈夫だよね? だべ盛りの学生が集まる学園都市、言い換えたら腹ペコ都市だ。何とかなるだろう。


俺が上を見上げ魔物の死体を見て考えているうちに、馬車と神軍がやって来た。ガシャガシャっと音を立てて一斉に跪く。


その中にしれっとアリエル達が混じっているが見なかった事にしてやろう。お仕置きされている時に助けてくれなかった時は、ちょっと! いつもの刺々しさはどうしたの!? いつ発揮するの? 今でしょ! と思っていたが元を辿れば俺1%、クソジジイ99%が悪いんだ。責めるのはお門違いだからな。


一斉に跪いた神軍を見て皆んなの顔が引き攣っているが、俺は気にせずにお仕事モードに入って立ち上がり1番前にいるイレイザーへと目を向ける。


するとそれを待っていたとばかりにイレイザーが口を開いた。


「ルディア様、お疲れ様でございます。魔物の狩りは、いえ聞くまでもありませんね。流石でございます。して、そちらの子達はどちら様でしょうか? 私が見ていたところ、ご友人と推測致しますが‥‥。」


相変わらずに俺に視線を合わせないイレイザーは、感服しましたと1つ頭を下げてから皆んなへと視線を巡らせる。目に傷があるイレイザーが怖いのか何名か俺の後ろに隠れたが、俺はただちらりと視線を向けてから再びイレイザーへと戻す。ま、イレイザーは強面だから仕方がない。


「はい、僕の通っている学園の仲間達です。なぜ、ここにいるのかという点に関しては今直ぐ説明したいところですが、後に回させて貰います。これが原因で学園都市がかなり大変なことになっている様なのでね。急ぎましょう。」


「畏まりました。皆の者聞いたか! 我々神軍はこれより、学園都市まで駆け抜ける! 全ての体力気力を当て、自らが出せる最高速度の限界を超えよ! これは絶対神ルディア様の神命である! 」


「「「はっ! ルディア様の御心のままに! 」」」


死体の山を指差して言った俺の言葉に畏まりしたと言ってからイレイザーは声を張り上げた。それにドッと地面が揺れるような大声で神軍の全員が答える。あ〜みんなの前でルディア様の御心のままにと言われるのは結構恥ずかしいんだけど、まあいいか。自分たちで決めてやっている事に俺がとやかく言えないし、それに‥‥かっこいいし。


ポツリと呟いてから俺は、首をボキボキならしたり、屈伸をしたり、肩を回したりなどなど各自本気モードな事が見てわかる神軍の皆さんに声を掛けた。


「待ってください。今回は本当に急を要します。僕がみなさんを運びましょう。」


そう言って俺は指をクイっとあげ、馬車も神軍もみんなも全てを空中に浮かべる。絶対に走って向かうよりこの方が早いからな。空を飛ぶこと以上に早く移動する方法はを俺は知らない。だからみんな我慢してくれ。すぐ着くから。


俺は突然浮かべられたことで困惑しているみんなに目を向け、慣れたら景色が綺麗だぞ? と言ってから、それにと口元に笑みを浮かべる。


それに、ククク。この移動方法なら馬車の中に篭って出てきてないクソジジイを重力操作でグロッキーな事にできるしなぁ〜。フハハハハ!


俺は早速とばかりに指をパッチンと鳴らす。すると馬車から悲鳴が聞こえてきた。


「な、なんじゃあぁぁあ!? 回る! 目が、目がぁ! おぇ気持ちわる‥‥。イヤァァァ! 」


いい悲鳴じゃないか。クハハハ! この素晴らしい音楽をBGMに学園都市までの短い旅を楽しむこととしよう。フフフ


「ねえ、ルディア君。馬車から悲鳴聞こえてこない? 」


俺が心の中で黒い笑い声を上げていると1人の女子が聞いてきた。さすがに今もなお続いているこの悲鳴は気になるらしい。俺は聞いてきた女子に目を向けて笑顔で答えた。


「ああ、これ? 実はあの馬車作られてから何十年も経っているらしくてガタがきているんだよ。それで馬車がよく悲鳴をあげるんだ。まったく学園長も新しい馬車に変えてくれてもいいのにね。」


女性は俺の答えを聞いてそんなものかな〜の首を傾げているが納得してくれたようだ。今ので納得するのはどうかと思うがな。まあいいか。


「ルディア様の神力で運んでいただけるとは光栄の極みに御座います。」


イレイザーが目をキラキラとさせている神軍を代表するように言ったのを聞いて手を振りそれに応えてから俺は、全員に聞こえるように声を上げた。


「ではいきましょう。学園都市へ。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ