お仕置き執行
俺はクロエからここに皆んなが来た理由を聞いて、ふむふむと頷く。なるほど、それでここに来たわけですかい‥‥。あんのクソジイイィィ! なんちゅう手紙送ってくれてんだ! 何が逢いたくて仕方がない? 病的なまでずっと逢いたい逢いたいと呟いてる? 嘘っぱちじゃねぇか! あの野郎、俺がクロエ達にお仕置きされる事を恐れていたのを察知してやがったな!
俺は顔に手を当てて、下を俯き目を見開く。その目は今この場にいる全員に見せられないほど血走っている事だろう。
やられたァァ。 いつか絶対に仕返ししてやるコンチキショウ。ま、まあ逢いたいと思ってたのは本当だけどな。しかし俺が一銭たりとも逃すものかとやったあれでそんな事になっていたとは。
‥‥ん? ちょっと待て、それってかなりヤバくないか? ゼンツ先生が冒険者ギルドと駐屯所を回ってるって事は冒険者と騎士、警備隊を呼びに行ってるって訳だろ? つまり、ここに時間も経たないうちに冒険者、騎士、警備隊で編成された部隊が来ると‥‥。
「え!? 何それ! なんでそんなおかしな事になってんの!? なんで! 」
クワっと顔を上げ、クロエに視線を向ける俺。ここに至って事の重大さにやっと気づいたのだ。クソジイイの手紙というインパクトの大きい物に隠れていたさらに大きな問題に。
そんなパニックに陥っている俺の頭をクロエがバシンッと叩く。
「それは貴方があんなもの浮かべているからでしょうが! なんであんな事やっているのよ! バカじゃないの!? 」
「い、いやだって。せっかくのお金取られたくなかったし〜仕方ないじゃん。それにあの方が地面に引き摺ることによって出来る死体の傷を防げるし、一石二鳥だと思って‥‥」
クロエに叩かれた痛くもない頭を摩りながら俺はソッポを向いて口笛を吹くように言い訳をする。
あのまま死体を置いたままにしてたら他の魔物に齧られて、試食コーナーみたいにわらわらと群がられてたかもしれないし、地面引きずって持って行ったら死体に傷がついて値段が下がったかも知れないからな。毛皮とか、あと、あとは〜思いつかない、な。こんなときはこれを使おう。etc‥‥。
俺がバカな事を考えていると、クロエはガシッと俺の肩に掴み掛かってきた。
「誰に!? 誰に取られると思った! それに学園都市が空から魔物に襲われた事、貴方も覚えているでしょうが! あんなの見たら魔族の襲撃だと思うわよ! 」
鬼の形相でクロエは俺を至近距離で睨み、怒鳴りつけてくる。それを聞いた俺は確かにそれもそうだと思った。
学園都市が魔族に襲われたのは5ヶ月前。その時のトラウマは、程度はどうあれ全員の心に深く刻み込まれている事だろう。その中であの死体の山を見れば、新手の魔族と思うのは当たり前か。どうやら俺は目先のお金に釣られてそういった人の感情を考えきれてなかったらしい。アハハハ、はぁ。不甲斐ない事この上ないな。俺とした事が。
俺は睨みつけてきているクロエに真剣な顔を作って目を合わせ謝る。
「他の魔物に取られると思いました。す、すいませんでしだ。そこまで考えてなかったんでず。」
あ、睨みつけてきているクロエが怖くて涙声になってしまった。目にも少し涙が浮かんでいる。締まらね〜。うわ、俺カッコ悪!
クロエは泣きそうになっている俺を見て、グラグラと俺を揺らしながら怒鳴り声を上げた。溜まりに溜まった怒りをクロエはここぞとばかりに爆発させるつもりの様だ。
「泣くな〜! 私が虐めているみたいじゃない! 私達が決意したあれはなに!? ノーライフキングだと思って来てみたら貴方ってどういう事よ! 」
「ノーライフキングだと思ったらハーレムキング。キング違いだったわけだ。ククッ! プハハハハ!! 」
「黙りなさい、轟魔! 上手くないわよ! 」
ゲラゲラと笑い転げるジルコをクロエはキッと睨みつけてから、俺にその鋭く尖ったままの視線を移す。
な、何やってくれてんだ、ジルコォォォ!! そっちの事に関する怒りにも火がついちゃったじゃないか、馬鹿野郎! このまま行けば、死体の事だけですまされると思ってたのに! なんだ、なんか俺に恨みでもあんのか!
「覚悟出来てんでしょうねぇ? ルディィィ! 」
俺がゴロゴロと転げまわってるジルコに恨みがましく視線を向けていると、クロエは俺の首に向かって手刀を放って来た。それを俺はクロエの腕を掴む事によって受け止める。
「防ぐな! 」
クロエはグググっと手刀を押し込みながら、また黒いオーラを出して言ってきた。それを見た俺はこのままじゃお仕置きルートは確定だ、ならばここで賭けに出るしかない! と意気込み口を開く。
「いやだ! 今の俺に攻撃したらクロエの綺麗な手が傷ついてしまうじゃないか。」
キラキラっとエフェクトを出しながら、俺はクロエの目を見つめる。学園都市を出発してからずっとルディア教、貴族などなどを相手にしてきた俺のエフェクトの最大出力は5ヶ月前とは比べものにならなくなっている。今ではそうだな、100Wの明るさ位かな。たとえ小さなホコリでさえ見逃す事はないだろう。
それに、今の俺は聖具に包まれた状態。この状態の俺に素手で攻撃しようものならよくて痣、場合によっては骨にヒビが入る。非常に危険だ。俺はお仕置きから逃れられて、クロエは怪我から逃れられる。これぞ一石二鳥! さあ、落ちるがいいクロエよ! 我がフェイスの輝きに屈するのだ! フハハハハ!
「ルディ‥‥。そうね貴方に物理的なお仕置きは聞かないんだったわ。精神的なものじゃないと意味がないのよね。」
俺が心の中で高笑いを上げているとクロエはグググと押し込んできていた手刀の力を抜いき、俺の腕をガシッと逃がさない様に握り閉めてきた。え? 握り閉めてって‥‥。
俺は掴んできている手から視線を上げ、クロエの顔を見てみると至って平静な顔をしていた。それを見た俺は戦慄を覚える。これまでは、誰であれ俺のエフェクトを食らった人は毒気を抜かれ、喜んで主導権を差し出してきたというのに(ルディアの偏見です)ま、まさかこの様な事になろうとは‥‥。
クロエは、俺のキラキラスタンドが効かないというのか!? あ、ありえん。5ヶ月前までは効いていたはずだ‥‥。まさか、たった5ヶ月でここまでの急成長を遂げたとでも言うのか!? 信じん、俺は信じんないぞぉぉ!
意気込んでやった事が綺麗に空振りし、スルーされて最大値まで振り切れた羞恥心を誤魔化すために俺が1人で噛ませごっこをしているとレヴィが話しかけて来た。
(ふざけてていいの? この子、さっきさらっとえぐい事言ってたわよ? )
それに俺はごっこ遊びをやめ、答える。
確かにそうだな。精神的とか言ってたもんな。これは聞かないとまずいぞ。さっきのやり取りで肉体的なお仕置きは聞かないと思い出されてしまった。ああ、俺のバカ! でもクロエの手を守れたからいいさ!
(はいはい、とっとと聞きなさい。)
あーい。
「クロエさん、精神的なのとは一体どういうものなのでしょうか。お、教えてくれませんか? 」
未だに俺の腕を掴み徐々に込めている力を上げていっているクロエに俺は精神的なものとは一体どういうものかと問いかけた。少し言葉が詰まったのは仕方がないだろう。だって精神的なお仕置きだよ? どんなものがクロエの口から出てくるのか分かったものじゃない。だが、俺はここでくじけているわけにはいかない。
クロエの口から出てきた精神的なお仕置き内容によって、即座に対策を考えなければならないからだ。さあ、来るがいい!
俺がゴクリと喉を鳴らし、クロエの回答を待っているとクロエはニッコリと笑い口を開いた。
「ひ・み・つ♡ 」
あら可愛い。じゃなくって! え、教えてくれないの!? 今の教えてくれる雰囲気だったじゃん! 現に今もクロエは微笑んで‥‥るけどあれは黒い方の微笑みだね。はい。だが、俺は諦めないぞ。心を壊されない為にな!
俺は黒い微笑みを浮かべているクロエに向かって、キラキラと輝く微笑みを浮かべた。はたから見たら俺とクロエの光と闇がせめぎあっているように見える事だろう。
「そこをなんとか、教えてくれないかい? 」
「嫌よ、言ったら意味なくなるじゃない。」
クロエは俺のキラキラスマイルに押されたようにそっぽを向いて嫌と言った。そうですか、そうですよね〜。精神的なお仕置きってそういうものですもんね。教えたら意味ありませんもんね、はぁ〜。
俺はクロエに腕を掴まれたままがっくしと項垂れる。もう、やだ。これは神器が届いたとしても俺のお仕置きは逃れられそうにないな。できる事と言ったらできるだけ刑を軽く事をするくらいか。どうするか‥‥。
俺がグルグルと頭の中であらゆるシュチュエーションを想定し、どれが最適な行動かと考えていると、項垂れていた頭が何者かに強制的に上を向かされた。
その何者かは俺の目をジッと見つめてきている。てっこれはヴィオラちゃんじゃないか! え、なにこれどういう状況!?
「ねえ、ルディあの人達が誰なのかいい加減に教えて? じゃないとそれとるよ? 」
ヴィオラちゃんは瞬き1つせずに俺の股間を指差しながら問いかけた。あの人達とは使徒ズの事だろう。しかし、股間を指差してとるよ? と言わないでいただきたい。それは男にとて脅迫以外の何物でもないからな。というかどこでそんな事覚えたんだ? まあ、大体見当はつくが、今はどうでもいい。早く言わないと本当にもぎ取らせそうだ。
俺は早く言わないと本当にもぎ取りそうな雰囲気を醸し出しているヴィオラちゃんに冷や汗を流しながら勢いよく答える。
「簡単に言うと僕の私兵のようなものです! 神軍といいますです! はい! だから玉取らないで下さい! 」
「うん、分かった。う〜んお母さんから聞いた方法は効果てき面だね。なんでおちんちんを指差すのかわからないけど。」
ヴィオラちゃんは俺の答えを聞いて納得したのか、俺の顔から手を離して離れた。それを見た俺は玉取られなくてよかったとほっと息を吐いてから、やっぱりエルさんだったかと頷く。
やっぱり、エルさんだったか。あの人はヴィオラちゃんにいい事悪い事吹き込みやがって、全く。今度村に帰ったらきっちりと言っておかないとな。でないとまた変な事を吹き込むかもしれない。
「えい! あ、本当に硬いんですね。私のスタッフが曲がっちゃいました。」
俺がそうだなそうしようと心に決めていると、フランの掛け声と共にガツンという金属音が聞こえてきた。スタッフが折れたと言っている事から金属のスタッフで殴ったのだろう。なにを考えているのだろうか。そんな事したらまた使徒が暴走を‥‥。
俺は後ろを振り向き、手に持っているひん曲がったスタッフを眺めていたフランの肩に手を置く。
「フラン。な、何やってるのかな? そんなことをやったら‥‥」
あれ? そろそろアリエルとか、アイリス辺りが死ね! とか言って突っ込んで来てもいい頃なのにおかしいな? と思った俺はまずアリエル達がいる方向へと視線を向ける。するとそこにはなぜか、俺に背を向けて直立不動になっているアリエル達がいた。
「えー!? どうしてそっぽ向いてるの!? 」
「ふふ、私が説得してお仕置きの許可を取りました。あの人達分かりやすいですね。行動原理がはっきりしているから以外と簡単でしたよ。」
フランは俺の素っ頓狂な声にフフフと口元に手を当てながら笑って答えた。こ、この子やり手だ。まさかあの使徒達から俺のお仕置き許可を取るとは‥‥。一体どのような手品を使ったんだ!?
俺はフランに少なくない驚きを覚えながら、もう俺を守る者はいないのかとプルプル震えているとアリエルの大声が聞こえてきた。
「これはルディ様がさらに昇華するための神聖な儀式、我々如きが決して見ていいものではない! いいか!決して後ろを振り返ってはいけないぞ! 未だ心に汚れを持っている我々が目視した場合即目が焼き切れると思え! 」
「「「はっ! 」」」
アリエルがそう言った事に、子供達が頷いた。そうか、そう言い換えたか。やるじゃないかフラン。ああ、でもおれ本当に昇華してどっかにバイバイしないかな? 大丈夫だよね? そこまでしないよね? 信じてるぞ、みんな。
俺はフッ口元に笑みを浮かべながら、どうせアイリスも言いくるめられてるんだろうなと思いつつもアイリスを見てみると地面に血だまりを作って沈んでいた。
ア、アイリス? 嘘だろ‥‥。死んでるのか? アイリスゥゥゥ!!
「あ、あの子もちょっとルディの妄想を掻き立てるだけでノックアウトしたんで、無駄ですよ? それにメイドさんもとあるものと引き換えに見て見ぬふりをしてもらっていますから。」
俺がアイリスを見て心の中で悲鳴を上げていると、俺が血に沈んでいるアイリスを見ているのに気づいたフランがそう言ってきた。どうやらあの血だまりは鼻血らしい。
まあ、顔の周りに血だまりがある時点でなんとなくそうかな〜とは思っていたんだけど。しかしフランはすごいな、アイリスの攻略の仕方を心得てらっしゃる。しかもアリアも攻略しているときた。俺がクロエと色々やっているあの短時間で使徒ズ全員を陥落させるとは‥‥完敗だよ。
「ほら、ルディこの聖具脱いで下さい。さもないと限られた人しか知らされていない、パターンΣをやらなくてはいけなくなりますよ? このパターンΣはそれはそれはもう恐ろしいもので受けた人は必ず廃人になるとかならないとか‥‥。」
フランは負けたよという顔を浮かべていた俺を無視して、聖具をコツコツと叩きながら脱げと言ってきた。脱がないとその廃人確定のパターンΣをやるらしい。もちろん廃人になどなりたくない俺は勢いよく頷く。
「はい、ただいま! 」
「脱いだ!脱いだからパターンΣだけはやらないで! お願いします! フラン様! 仏様! 」
聖具召喚を解いた俺はクロエに手を掴まれたままながらも、両手を合わせて目を瞑り懇願した。しかし、返答がない。不安になった俺が少しずつ目を開けていくと、フランがニヤーっと笑みを浮かべているのが目に入った。それを見た俺はパチパチと瞬きをしてからダラダラと冷や汗を流し始める。
や、やられた〜パターンΣの恐怖に思わず我を忘れてしまった! チッキショォォ!
「ふふふ、そんなパターンΣなんてありませんよ〜 」
フランはそんな俺の反応を見て満足したのか最後にその衝撃的な言葉を残してからエルザちゃんの隣に歩いて行った。え、ないの? パターンΣ。‥‥騙された。
「よくやったわ。フラン。クロエ、はじめましょうか。」
俺が今日の俺ダメダメだな、はぁ〜っと思っているとエルザちゃんが不敵な笑みを浮かべてクロエへと話をかけた。クロエはエルザちゃんに1つ頷いてから指を鳴らす。
「ええ、パターンΔ オペレーションM 開始。」
クロエの合図と同時にみんなが俺の体に余すことなく引っ付いてきた。両腕に2人、両足に2人、胴体に1人といった具合だ。俺の体に引っ付いていない者も俺を周りを取り囲むように手をわしゃわしゃとしながら待機している。
それを見て嫌な予感がした俺は焦燥感を抱きながら、俺の胴体に抱っこの形で抱きついているリザへと目を向けてやめてくれと頼む。
「何をするんだ! リザやめてくれー! 」
「ごめんねルディアくん。でもルディアくんが悪いんだからね。あんなにも沢山の女の子を‥‥」
しかしリザは首を横に振り俺の願いを聞き届けてくれることはなかった。それを見た俺はああ、もうとばかりに体を動かすが全員離れようとしない。離そうと思えば無理やりにでも離す事が出来るが、それでは怪我をさせてしまう可能性が万が一にでもあるだろう。
それはだめだ。可能性がある時点でその行動はとれん! つまり俺は今現在、脱出不可能の肉の牢獄に閉じ込められた事になる。このためか、俺に聖具を解除させたのは。ツルツル滑って捕まり難い聖具じゃあこの作戦は取れないもんな! どんだけ考え込んでんだよ! 5ヶ月か!
俺が自分で言った事に自分で答えていると、俺を取り囲んでいた手をわしゃわしゃとしていた人の波を割ってクロエが現れた。
「ふふふ、これで貴方は無理やり解いて逃げることなんて出来なくなったわ。貴方の力で無理やり解こうものなら貴方に引っ付いている皆んなが木っ端微塵になってしまうでしょうからね〜。フフフ、ハハハ、アーッハッハッ! 」
クロエは悪役のような笑い声をあげてから、やれとばかりに俺に引っ付いているみんなに視線を向ける。すると俺に引っ付いていたみんなは俺の服をめくり上げた。それを見て俺はハッと気づく。
俺を取り囲んでいるわしゃわしゃ手をしている人達、俺の服をめくり上げた行為、これらを踏まえて考えられるものはとても残酷なものだ。
「ク、クロエまさか、これからやろうとしていることって!! 」
「そう、無限くすぐり地獄よ。それだけじゃないわ。フラン。」
クロエは俺のまさかという表情に頷いて再び指を鳴らす。すると俺のくすぐりが開始された。体のあちこちを満遍なく、わしゃわしゃと動いている手がなぞる。や、やばい笑いが堪えられそうにな、い。これだけでもかなりきついのにこれ以上になにをするって言うんだ。やめてくれ。俺を殺す気か。
俺が頬膨らまして笑うのを堪えているとクロエに言われたフランが語り始めた。
「はい、ある所に仲の良い双子の兄弟がおりました。その双子の兄弟は毎日仲良く遊んでおりましたが‥‥」
俺は頬を膨らましながらなにを言っているんだと思っていたが、その話を聞き進めていくうちに顔が青ざめていく。そう、怪談だ。いったいどこで俺がそういった類の事が苦手だと知ったのだろうか。くすぐりに、怪談だ。恐怖と、笑いのまさかのコラボレーション。どうやら俺は今日、誰も体感したことのない領域に足を踏み入れようとしているのかもしれない。
「それはお前だぁ! 」
「ひぃ! アハハハハハ! 」
フランがビシっと指差したのに合わせて俺は悲鳴をあげた。今まで必死に笑うのを堪えていたが、悲鳴をあげた時に口を開けてしまったので笑いが噴き出す。やばい死にそう。
「ある所に‥‥」
目に涙を浮かべて顔を青くしながら笑い続けるというおかしな事になっている俺など気にせず、クロエがおそらく怪談であろうものを話し始めたのを見て、俺は笑いながらも必死に止めに入る。
「ね、アハハ! ま、アハハハ! まだ続けるの!? アハハハ!! 」
「当たり前じゃない。次は私のとっておきを聞いて貰うわ。しっかりと聞きなさい。」
「では私はくすぐりに参加しますね。ホレホレ〜」
俺が腰に手を当てて当たり前じゃないと言ったクロエを見て笑いながら‥‥まじかよと思っていると、フランが両手で脇腹をくすぐって来た。
「や、やめて〜! アハハハハ!! 」
俺はその的確にくすぐったいポイントを突いてくるくすぐりにこれまで以上に笑い声を上げた。そんな俺を見てフランはさらにくすぐりの手を加速させていく。や、やばい。い、息がぁぁぁ! 誰か、たす、ヘルプミーー!!




