表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召転のルディア  作者: NTIO
壊れゆく日常
187/220

さあ、始めようか最後の仕上げを②

太陽が沈み、夜の帳が降りたエイバの町並みを見渡してから、俺は一気に上空に飛び上がった。ヒュンヒュンと風を切りながら進み、エイバの都市全体を見渡せる場所で止まる。


そして俺はスキルを発動する。


「【聖具召喚lv.5】【観測眼】 」


スキルを唱えた俺を白金に輝く聖具が包み、目が金色に輝く。俺が召喚した聖具は昼間の頃とは違い、周りが闇に包まれていることで一層ピカピカだ。その聖具から発生した光はエイバ全体を淡く照らしている。


よし、次。


それを見た俺は1つ頷き、片手を上げた。すると上げた片手の上に小さな光球が現れ、どんどんと大きくなって行く。ついにはその光球は直径5メートル程になり、そこでピタリと成長は止まった。


これは、プラズマキャノンな訳だけど別に攻撃する為に生み出したんだじゃない。最後の仕上げの為の演出だ。まあ、これまでの行動の全てがそうだけどね。さてと、そろそろいい頃かな?


眼下に視線を向け、観衆がこちらを向いている事を確認した俺は腕を振り下ろす。プラズマキャノンは俺が腕を振り下ろしたのと同時にエイバを円形に包み込む様に薄く広がって展開して行く。ゆっくりと広がって行ったプラズマキャノンはエイバを包み終わった様で轟音を響かせた。


ズドォォォン!!


「キャァァァァ!! 」


「一体なんだこりゃあ!? 」


その轟音を聞いて今まで突然起きたことに固まっていた観衆達の一部は悲鳴を上げ、パニックに陥る寸前だ。パニックに陥りそうになっている人はルディア教じゃないな? よしよし、いいぞ。もっと心に隙間を作ってくれ。俺が入り込みやすい。


「やばくないか!? 」


「まさかこれは、魔族の襲撃!? 警備隊と冒険者はどうしたのよ! 」


「いや待て、神軍が跪いているぞ‥‥という事はルディア様!? 」


パニックに陥りかけている人達の内の1人が警備に当たっていた神軍を見て声を上げたのを聞いた俺は、上空から両手を広げ微笑み浮かべながらゆっくりとそれはもうゆっくりと降りていく。まるで俺が降臨している様に見せる為に。


「おお! やっぱりルディア様だ! ルディア様がご降臨なされたぞ! 」


「うぉぉぉぉ!! ルディア様ァァ!! 」


「ああ‥‥ルディア様‥‥私の生涯の恩人。」


「「「ルディア! ルディア! ルディア! 」」」


俺を見た観衆は反応は大きく2つに別れる。1つは俺に手を振り、歓声を上げて熱狂している人達。これは大体3割と言った所だろう。では残りの7割はとなると全員跪いている。うん、あれはルディア教だね。一目瞭然だ。しかし、ここに集まったのはルディア教が大多数だな。


今日エイバを回ってみて、分かったことだけどこのエイバのルディア教の割合は大体4割。今回のこれで残りの6割の人達を取り込みたかったんだが、それは欲張りだな。使徒になりやすいルディア教信者の中から使徒を生み出し、あわよくば3割集まったルディア教信者以外の人からも使徒を出すことだけで我慢しよう。


(十分欲張りよ。)


何言ってるんだ。まったく欲張ってないぞ。今日計画したものの6割しか達成できてないんだから欲張りな訳ないじゃないか。


俺は何を言っているんだまったくとばかりにため息を吐いてから、ピタリと空中で止まり手を振ることによって歓声を上げている人達を黙らせる。観衆が聞く体勢に入ったのを見た俺は透き通る様な声を心がけて言葉を発する。


「皆さん、お久しぶりです。ルディア・ゾディックです。3ヶ月ぶりといった所でしょうか? 前のエイバとは見違える程活気に溢れ、人々の顔に笑顔が戻ってきた様で私はとても嬉しいです。私が平和の為に皆さんに授けた力は上手く作用しているようだ。」


身振り手振りを交えて言った俺の言葉に3割のルディア教じゃない人達がざわざわとし始めた。それをルディア教の人達と兜を外して跪いていた神軍が血走った目で睨み、静かにしろ! と目で訴えているが手を出す様な事は無さそうだ。まあ、それは時間の問題なのでしっかりとタイミングを見極めないといけないが。


「力を授ける? まさか神軍とルディア教が言っていた事は本当だったのか。」


「私半身半疑だったんだけど、どうしましょう、罰せられたり‥‥。」


ルディア教信者以外の人達が俺が力を授けているのは本当と思い始めた所で俺は再び口を開く。俺は力なんてまったく授けてないんだけどね。


「私はこの地に戻ってきて驚きました。盗賊によって荒らされたこの土地が心配、しかしここに留まる事はできない。そこで少しでも手助けできる様にと力を授けたのですが、その力を授けた者達が神軍なるものを築いていたとは。」


「そしてその神軍は聞く所によるとエイバ近郊のみならず、他の都市の魔物や盗賊も狩っているそうではないですか。素晴らしい。とても素晴らしいです。私はその心意気に胸を打たれました。」


俺は胸を押させ、眉尻を下げる。俺の言葉を聞いた神軍の人達がもれなく全員涙を流しているを見て、全てを包み込みそうな優しさを孕んだ声で決して大きくない、されどどこまでも透き通っていくように言葉を発した。


「そこで私は思ったのです。その心意気に私が答えなくてどうすると。」


これを聞いた観衆達はルディア教信者かどうか関係なくざわざわとしだす。流石に信者達もこれには静かにしている事はできなかったみたいだ。


よし、全員が浮足だった。ここだな。


俺は観衆達には見えないように小さく口元に黒い笑みを浮かべる。使徒になるがいい。


「我! ルディア教が主ルディア・ゾディックは! ここにルディア教の名において金貨200枚をこのエイバの孤児院に寄付することを宣言する! 」


俺はバサッと両手を左右に広げて大声で宣言した。それを見た観衆達の内のかなりの人が一斉に目を赤く光らせたが‥‥ククク上手くいったか。金貨200枚は俺の王都で稼いだお金の殆どで、寄付なんてしたら手元に金貨十数枚しか残らないが、それだけでもかなりの大金だし簡単に稼げるアテも見つかったから別にいい。それで大量の使徒を生み出すことができるのならなぁ〜。


「き、金貨200枚だと!? 」


「う、嘘でしょ。人1人が出せる金額じゃないわ‥‥。」


俺がクククとほくそ笑んでいると、観衆達が驚きの声を上げる。まあ、金貨200枚なんて言ったらかなりの大金だからな。それをポンっと出すなんて言ったら驚くか。さて、観衆達の様子を見るにまだ使徒を生み出せそうな雰囲気だな。フィーバータイムが終わる前にどんどんいってみよう。


「私は今日このエイバの全ての孤児院を回ってきた。するとどうだろうか、全ての孤児院は財政難に苦しみ未来ある子供達がその影響を被っている。エイバは未だ完全に元に戻ったとは言えないだろう。しかし子供達が笑顔を浮かべている、これこそが大切なことではなかろうか。私はそう思う! そしてこれが私を信じ、ついて来てくれるルディア教信者達へ答えることとも。」


ルディア教の人達が泣き崩れてルディア様〜と言っているがが俺は構わず続ける。


「孤児院は私の寄付で少しの間は持ち直すだろうが、それは一時だけだ。だからどうか困っている事があったら助けてほしい、支えてほしい。勿論只でとは言わないつもりだ。」


「神軍がエイバの安全保証しよう。私が力を授けた者達だ。再びこのエイバが災難に襲われない事を約束しよう。」


「「「うぉぉぉぉぉぉ!! 」」」


歓声を上げている人や地面にうつ伏せになって泣きじゃくっている人などなどに手を振りながら、俺はどうしようと考える。


思わずノリで言っちゃったけどどうしよう、神軍に言ってなかった。ま、まあ大丈夫だよね? 今までもやって来ている様だし、それを俺がさもやらせます〜って感じに言っているだけだし。全員興奮しているから気づいてないからいっか。神軍には後で全員に何か送ろう。


そうと決めた俺は観衆達へ向け、一言礼を言ってから徐々に高度を上げて行く。


「ありがとうございます。私はまた旅立たなければいけませんが、皆様に幸福があらん事を‥‥。」


最後に幸福をあらんことをと言った俺は白金の線を引き大空に勢いよく飛び立った。それと同時に俺はエイバを包んでいたプラズマキャノンをキラキラと飛散させる。そのキラキラと光るプラズマの中に紛れて、俺は聖具召喚を解き夜の暗闇の中に紛れた。


大分飛んだところでここら辺でいいかな? と思った俺はとまり、観測眼で冒険者ギルド前を見てみる。すると‥‥。


「ルディア様ー! 行かないでくれー! 」


「おい、落ち着け! ルディア様は一旦天界に帰られたんだ! 」


「離せ! ルディア様ー! 」


「ルディア様‥‥ルディア様‥‥。」


俺が飛び立った空に向かって手を伸ばし泣きじゃくっている男を他の人達が止めたりしてたり、ただはらはらと涙を流している女性がいたりと結構カオスな事になっている。


(‥‥茶番にしか見えないわ。)


「そういうなレヴィ。人は何かに夢中になると周りが見えなくなるんだよ。」


「ふう、それにしても上手くいった様だな。数え切れない程の使徒が生まれたぞ。それに比べれば金貨200枚なんて安いもんだ。丁度、魔物がお金に変わる事も分かったしな。俺からしたら外にお金が足を生やして歩いている様なものだぜ。フハハハハハ!! 」


(悪の大王め。)


俺が高笑いを上げているとレヴィがそう言ってきたので高笑いをやめて腰に両手を当てた。


「うるさい悪の大王の魔剣。さてっと、戻るとするか。」


俺は人に見つからない様にこっそりと空を飛んで行き、アリア達がいる屋根の上に降り立つ。するとそこにはアリア達の他にイレイザーとアリエルを含めた神軍5名がいた。この顔ぶれを見るに神軍の中で偉い方に位置する人達だろう。


「坊っちゃまお疲れ様です。素敵でした。」


「ルディお疲れ〜」


「ルディア様、お疲れ様でした。」


「「「お疲れ様でした! 」」」


「ありがとう。」


俺はみんなにお礼を言ってからアリエルに目を向ける。


「アリエル。」


「はっ! 」


「アリエルに頼みたい事があるんだけどいいかな? 」


「なんなりと。」


アリエルはカチャリと腕に手を当てて頭を下げた。俺はそれを見てカツカツと歩み寄り、しゃがみ込んで考えていたことを伝える。


「アリエル、今日僕が孤児院を回って覚醒させた子供達だけど、その子供達で僕の親衛隊を作りたいと思うだ。その指導役になって一緒に学園都市に来てほしい。いいかな? 」


「? 勿論いいですが‥‥どうしてわざわざ? 」


目を見て言った俺にアリエルは頭に疑問符を浮かべながら答えた。あ、物凄い嫌な予感がする。


「わ、わざわざとは? 」


「え、私達神軍はルディア様について学園都市に行くからですよ? 」


さあ、何が来るんだと意気込んでいた俺に返ってきたのはまさかの神軍全員学園都市についてくるだった。それに俺は思わず叫び声を上げる。


「は、はぁぁぁ!? 」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ