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召転のルディア  作者: NTIO
壊れゆく日常
18/220

強敵と書いて友と読む

こちらを舐め腐った顔で見てくるゴブリンに俺はショートソードを構える。

しかしどうしたものか、ラインハルトさんの言う通り奴は強い。

真正面からやり合っても勝てないだろう。

また、ムーンウォークで行くか?いやあんなアホらしい作戦が通用するのは高木くらいだ。

ゴブリンに効くかどうか怪しい。

じゃあ手持ちの武器でなんとかするしかない。しかし俺はまともに武器を扱えるのか?

そんなことを悶々と考えていると、ゴブリンが突っ込んできた。


「グギャ!」


俺に駆け寄ってきたゴブリンは右手のストレートを打ち込んできた。

それを俺は左足を引き半身になってなんとか躱す。俺の真横をシュッと風を切って通り過ぎていく拳。

俺とゴブリンはすれ違った形になった。

危なかった、あと少しで当たるところだった。

だが避けたぞ!油断せずにいればなんとかやれる!


「グギャギ!?」


今のは俺でも何て言ってるのかわかる。

大方、なに!?とでも言っているのだろう。

舐められたものだ。


「避けられないとでも思ったか!自惚れるなクソゴブリンめ!」


そう言い俺は、ゴブリンに突っ込んでいく。歩くのはやめだ。今はあいつを叩っ斬るだけだ!

ゴブリンをショートソードの間合いに捉えた俺はショートソードを掲げ振り下すためだけに力を込めて、振り下ろす!


「オリャアアアア!」


その振り下ろしをゴブリンは横に少し体勢を崩しながらステップで、避ける。

しかし俺はそれを逃さない。



「止めだ!」


俺はゴブリンに向け突きを繰り出す。それを見たゴブリンは目を見開いている。これで決まったと思ったが、次のゴブリンの表情を見てその確信は間違いだと気付く。


ゴブリンは驚愕の表情からまるで罠に掛かった獲物を見つめるかの様な表情になり、口元に笑みを浮かべていたのだ。その表情を見た俺は危ない!と感じ後ろにステップで躱す。さっきまで俺がいた場所にゴブリンがゴウッと腕を振り抜いてきた。クソ!服が少し切り裂かれている。また油断してしまった。


「ギュガギクシ(中々やるな)」


なぜかだんだんゴブリンの言葉がわかってきた。


「お前もな。」


「ギギッギーガ(本当に死なすのが惜しい男だ)」


「言ってくれる。ところでお前の名を教えてくれないか?俺は凄腕の戦士の名を聞かずにはいられない性分なんだ。」


「ギギ、ギュイ、ギチャウォ(酔狂な男だ、良いだろう教えてやる俺の名はゲイボルグ、お前を殺す男の名だお前の名は?)」


「ゲイボルグか、覚えた。おっと人に名を尋ねておいて名乗ってなかったとは飛んだ失態だ。俺の名は彩月、彩月龍太だ。」


ゲイボルグ、戦士にふさわしい名だ。


「ギリュギカギギッ(彩月龍太、良い名だ)」


名乗りを終えた俺とゲイボルグは再び構えをとった。しかしさっきから青山が死んだ目で見てくる。きっと漢の戦いに魅入っているのだろう。


「ギギギャ!(先手必勝!)」


ゲイボルグが地を這うようにこちらに突っ込んでくる。早い!何て早さだ!だがまだ目で追える!俺に迫ったゲイボルグは左手を抜手の構えを取り突きを繰り出してきた。それを俺はバックラーで外に逸らし、踏み込む!


「甘い!」


ショートソードを右斜め下から左斜め上に向け振り抜く。しかしゲイボルグは俺の斬撃を見切っていたらしく、浅く切り裂くだけに止まってしまった。だが、ゲイボルグは体勢を崩し動きは鈍くなっている。このチャンスを逃したら俺に勝機はない!ここで決める!俺は、切りおろし、突き、なぎ払い、ありとあらゆる剣技をゲイボルグに叩き込むが決定打に欠ける。ただゲイボルグの体に浅い傷をつけるだけだ。もっと!もっと早く!強く!ここで体力が尽きてもいい、持ってくれよ、俺の体!


「ウオオオオオオ!!!」


「グギャアアアアアア!!!」


俺とゲイボルグはお互いに防御無用とばかりに攻撃の応酬をしていく。一体いつからこうしていたのだろう?何時間?何分?長いようで短く感じるその応酬は遂に終わりの時を迎えた。


「オリャアアアア!!」


俺は今まで生きてきた中で見たことがないほどの最高の突きを繰り出す。その突きはとうとうゲイボルグの体を穿った。


「グハッ!」


ゲイボルグはその身にショートソードを突き刺したまま仰向けに倒れこむ。ゲイボルグの体から血が溢れ出し血溜まりを地面に作っていく。


「ギ、ギュギュギギ(と、とうとうやられちまったぜ)」


倒れたゲイボルグは独白するかのように語り出した。


「ギグゲギャグシ(お前とは仲間なら仲良くやっていけた気がするけどな、俺たちは敵として出会ってしまった。)」


「ゲイボルグ!」


俺はゲイボルグに駆け寄り体が血で濡れることを厭わず、ゲイボルグを抱きかかえる。


「グギャグミギッギ(だがまあこんな最後も悪くねえ、こうして最高の戦士に見届けてもらえるんだからな)」


「ギグゲギュ、ギ(生まれ変わったらダチになろうぜ龍、太)」


「ゲイボルグーー!!」


そうしてゲイボルグいや友は息絶えた。


「あんたたち何やってんの?」


しかし終始青山は冷めた視線を彩月とゲイボルグに向け送っていた。

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