深紅の瞳
クソジジイは首を傾げている俺をみて言う決心をしたのか勢いよく頭をさげて謝ってきた。それにますます俺は疑問が深まる。
もしかして色々と詮索してきたことだろうか? いや何かしっくりこない。じゃあ一体何のことについてだ?
「実はお主の事を魔族ではないかと疑っておったのじゃが、わしの間違いだった。済まん! 」
グルグルと考えを巡らせていると、クソジジイの口から俺の疑問の答えが出てきた。成る程俺のことを魔族、ね。しかし、俺に気づかれてないんだから言わなければ良いものをわざわざ自分から言って謝ってくるとは。この人良いクソジジイ、いや学園長だ。
「不愉快‥‥不愉快です。」
頭を下げている学園長を尊敬の眼差しで見ていると俺の背後から怒り、殺意などありとあらゆる悪感情を詰め込んで煮詰めたような声が聞こえてきた。
それを聞いた俺は鳥肌を立たせながらもギギギと振り返る。するとそこには目を赤く光らせたアリアとアイリスがいた。
アイリスは元々のルビーのような眼を光らせ、アリアは綺麗な碧眼が真っ赤な眼に変わっててこれまた光っている。表現とかそういうのではなく真っ赤にそうまるで魔眼のようだ。魔眼とは少し毛色が違うがこうして目に現れている時点で何かのスキルだろう。何のスキルか分かるかレヴィ?
(見たことないわよ。こんなスキル‥‥という事は固有スキルになる訳だけどじゃあなんで2人とも同じスキルを発動しているの? おかしいわありえない‥‥)
レヴィでもわからないか。という事は本人たちに聞くしか知る術はなさそうだな。しかし何だこの得体の知れない圧力は? 感じたことないぞ。
俺がアリア達を見ながら冷や汗流していると、アリアが口を開いた。
「不敬な人だとは思っていましたがここまでとは‥‥死に値します。」
そう言って学園長に向かって手を突き出すアリア。するとその手を真紅に輝くガントレットが包んだ。
な、なな、何じゃありゃ〜!! なにあれあんなスキル、アリア持ってたか!? いやいや! え! え!?
「ルディを魔族だと? ぶっ殺す! 」
アリアの変身を見てパニックに陥った俺を更に追い打ちかける様にアイリスも手にレーヴァテインそっくりの真紅の剣を召喚した。
もう俺の処理限界を超えたので考えるのやめたとやけくそになり2人を見ていると2人が頭をさげたままの学園長に各々の武器を構え飛びかかろうとしているのが目に入った。
学園長は頭下げたままでそれに気づいていない。 いや、気づいているが頭を上げようとしてないのか。それにまた学園長に対する好感を上げた俺は2人を手で遮る。
「ま、まて俺のこれまでの行動を見ればそう思うのが正しい。学園長の立場を考慮すれば尚更。だからその物騒な物を仕舞うんだ。アリア、アイリス。」
「「はい、分かりました。」」
声を震わせながら言った俺の言葉にアリアとアイリスは素直に頷き武器を消し去った。それを横目に見た俺はホッと息を吐き、学園長に話しかける。
「学園長が謝る事はないのですが、それでは貴方が納得しないでしょう。ここは素直に受け取らせてもらいます。」
「ありがとう。 しかし魔族でないとするとどうやったらそういう風に育つのじゃ。後学のために教えてくれんかの? 」
下げていた頭を上げた学園長は一言ありがとうと言ってから聞いてきた。
学園長、何でアリアとアイリスの眼の変化に突っ込まないんだ? あんなにわかりやすく、って元に戻ってる!?
後ろに視線を向けると2人の眼は元通りになっていた。もう何なのいったい‥‥
「そうですね。 これ次第でしょうか。」
はぁ、と心の中でため息を吐いてから学園長に視線を戻し、人差し指と親指をくっつけて輪っかを作って答えた。
「やめとくとするかの。法外な金を要求されそうじゃし。わしは行くところがあるからここでお別れじゃ明日から学校じゃから早めに宿に帰るのじゃよ。」
ホッホッホと笑い去って行った学園長の背中を見て、なにをお気楽なこと言ってんだボケがやっぱりクソジジイだなと思った俺はアリアとアイリスを見てどうしたものかと悩むのだった。




